実況!4割打者の新井さん
腹いせに眼鏡さんに意地悪しよう。
「……おかえり」
グラウンドでは2軍の対外試合が行われいる中、半ば泣きながら1人寂しくトレーニングを終えた俺はお腹をすかせて山吹さんの部屋を訪れる。
玄関では俺用で用意してくれたスリッパを履いて部屋に入ると、カレーの美味しそうな匂いが俺の食欲を掻き立てる。
「……さ、食べて」
俺がテーブルに着席すると、見計らっていたようにカレーとご飯をよそった大皿が俺の目の前に置かれる。
山吹さんが自分の分のカレーも用意し終えて、向かい側のテーブルに座ったのを見計らって、俺はスプーンを持ちながら手を合わせて、いただきますと声を発した。
スプーンにカレーをすくい、大きく口を開けてがっつく。
俺は山吹さんの視線を感じながらも、貪るように彼女の作った美味しいカレーをがむしゃらに食べていく。
「今日は試合だって聞いたけど、新井君はどうだったの?」
彼女は様子を伺いながら、不安げにそう訊ねる。
俺は彼女の考えることをなんとなく察しながらも、言葉を選びつつ、まだ試合には出させてもらえない状況を伝えた。
「そう………なんだ。いつになれば試合に出られるの?」
きっと彼女は、2軍戦とはいえ、試合に出場した話を聞きたかったのだろう。
銀色のスプーンでカレーをすくいながら、少し残念そうな表情を浮かべた。
しかし俺自身も、どうすれば試合に出れるのかよく分かっていない。
そもそも、1度として全体練習に参加させてもらえないのだから。
サングラスかけて、その辺に落ちてた誰かのユニフォームを着て、ランニングの最後尾にしれっと混ざってみても、すぐにバレるから。
すぐコーチが怒るから。
他の選手がちょっとサボったり、ヘラヘラしながら走っていても、全然怒らないのに、俺は1歩でもグラウンドに入ろうものなら、すぐに顔真っ赤にしたコーチが飛んでくるからね。
お前はロードワークだろう。お前は筋トレの時間だろう。早く昼飯食ってこいだの。
俺ばっかり構わないで、他の選手を見てあげて欲しいわよね!
「ねえ……。明日2軍の試合見に行ってもいい?」
付け合わせのらっきょうをガリゴリしていると、山吹さんは思い立ったような顔をした。
確かに宇都宮でやる2軍の試合は明日で最後だけど、俺は試合に出ないから、なんだか複雑だ。
しかし、彼女は……。
「いいの。あなたがいるチームが試合してるところ見てみたいし。あんまり生で野球って見たことないから」
まあ、確かに彼女は野球ものの小説を書こうとしてるし、俺の応援とかそういうのじゃないと分かるとちょっと悲しいなあ。
そういえば。こうして毎日ご飯をご馳走させてもらいながら、野球の話をこと細かに彼女に話しているけど、執筆の方はどうなんだろうかと、俺は気になってしまい、それを聞いてみた。
「書いてることは書いてるよ。でもまだまだだから、もっと野球のお話を聞かせて、新井くん」
へー、そうなんだー。じゃあ、ちょっと読ませてくれよー。
みたいな感じでニヤニヤしたら、彼女は慌てるように、ふるふるっと首を横に振った。
          
グラウンドでは2軍の対外試合が行われいる中、半ば泣きながら1人寂しくトレーニングを終えた俺はお腹をすかせて山吹さんの部屋を訪れる。
玄関では俺用で用意してくれたスリッパを履いて部屋に入ると、カレーの美味しそうな匂いが俺の食欲を掻き立てる。
「……さ、食べて」
俺がテーブルに着席すると、見計らっていたようにカレーとご飯をよそった大皿が俺の目の前に置かれる。
山吹さんが自分の分のカレーも用意し終えて、向かい側のテーブルに座ったのを見計らって、俺はスプーンを持ちながら手を合わせて、いただきますと声を発した。
スプーンにカレーをすくい、大きく口を開けてがっつく。
俺は山吹さんの視線を感じながらも、貪るように彼女の作った美味しいカレーをがむしゃらに食べていく。
「今日は試合だって聞いたけど、新井君はどうだったの?」
彼女は様子を伺いながら、不安げにそう訊ねる。
俺は彼女の考えることをなんとなく察しながらも、言葉を選びつつ、まだ試合には出させてもらえない状況を伝えた。
「そう………なんだ。いつになれば試合に出られるの?」
きっと彼女は、2軍戦とはいえ、試合に出場した話を聞きたかったのだろう。
銀色のスプーンでカレーをすくいながら、少し残念そうな表情を浮かべた。
しかし俺自身も、どうすれば試合に出れるのかよく分かっていない。
そもそも、1度として全体練習に参加させてもらえないのだから。
サングラスかけて、その辺に落ちてた誰かのユニフォームを着て、ランニングの最後尾にしれっと混ざってみても、すぐにバレるから。
すぐコーチが怒るから。
他の選手がちょっとサボったり、ヘラヘラしながら走っていても、全然怒らないのに、俺は1歩でもグラウンドに入ろうものなら、すぐに顔真っ赤にしたコーチが飛んでくるからね。
お前はロードワークだろう。お前は筋トレの時間だろう。早く昼飯食ってこいだの。
俺ばっかり構わないで、他の選手を見てあげて欲しいわよね!
「ねえ……。明日2軍の試合見に行ってもいい?」
付け合わせのらっきょうをガリゴリしていると、山吹さんは思い立ったような顔をした。
確かに宇都宮でやる2軍の試合は明日で最後だけど、俺は試合に出ないから、なんだか複雑だ。
しかし、彼女は……。
「いいの。あなたがいるチームが試合してるところ見てみたいし。あんまり生で野球って見たことないから」
まあ、確かに彼女は野球ものの小説を書こうとしてるし、俺の応援とかそういうのじゃないと分かるとちょっと悲しいなあ。
そういえば。こうして毎日ご飯をご馳走させてもらいながら、野球の話をこと細かに彼女に話しているけど、執筆の方はどうなんだろうかと、俺は気になってしまい、それを聞いてみた。
「書いてることは書いてるよ。でもまだまだだから、もっと野球のお話を聞かせて、新井くん」
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みたいな感じでニヤニヤしたら、彼女は慌てるように、ふるふるっと首を横に振った。
          
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