実況!4割打者の新井さん
忘れぬあの日1
今までも、野球をやっている上で、何か変われるんじゃないかと思う時が何回かあった。
高校時代、春の県大会のベスト8をかけた戦いはもつにもつれた。
延長13回。試合の最終スコアは13ー12。
両チーム総力戦となった試合で、背番号10。3年生の投手としてブルペンに控えていた俺の出番は、最後までやってこなかった。
エースが3回までに5点を失う苦しい展開。その裏の攻撃で代打が出された。
よし。俺の出番はここだと思っていた。
ブルペンの投球にも力が入る。
ベンチ裏の投球練習場で、俺の投げるボールが控えキャッチャーのミットにバシバシと収まる。
味方の攻撃が終わった時、俺は自分自身に気合いを入れてブルペンを出た。
しかし、監督の口から俺の名前は出ない。
交代を告げられたのは、まだ軽くキャッチボールをし始めたばかりだった後輩2年生ピッチャーだった。
俺は少し火照った体がむなしく感じながら、慌ててマウンドに向かう後輩の背中を見つめることしかできなかった。
ようやくチェンジになり、顔を真っ赤にした後輩ピッチャーが戻ってきた時には、さらに5点を失い、序盤で更なる大量リードを許す展開となっていた。
力関係はほぼ互角と思っていた相手校との対戦で、序盤から7点ものリードを許す試合展開はあまりにも酷なこと。
しかも、突然の登板で大量失点。半ばパニック状態のピッチャーをうちの監督は交代させようとしない。
後輩ピッチャーに続投を命じたのだ。誰が見ても限界に来ていて代えた方がいい状態なのに。
俺がどうしてこの試合で使われなかったのか理解出来ていない。
試合は中盤からうちの高校が粘りを見せ、最終回までに3点差に詰め寄るも、序盤の大量失点があまりにも痛すぎた。
だから、あまりにも悔いが残る。
途中から俺が投げていれば。
イニングが終わる毎に更新されるスコアを見て、俺はずっとそればかりを考えていた。
勝てば10年ぶりの春の大会ベスト8。
それを逃したこの試合の敗戦で、俺の中でぷっつりと何かが切れたことだけはよく覚えている。
俺はいまだにその時のことをよく思い出す。
あの時、無理やりタイムをかけて、強引にマウンドに上がっていればチームは勝っていたんじゃないかと。
ふとした瞬間や、寝る前にも意識せずして、その時ベンチから見えていた光景が目に浮かぶのだ。
今みたいに、なにか嫌なことがあってストレスを感じた時に、同じく引きずっているその時の記憶が引き出されるのではないかと、自分で分析してみたりもした。
ともかく、今は傷付いた心を抱えながら、とぼとぼと部屋に戻るしか、くたくたな俺に出来ることはなかった。
「ねえ。これでよかったの?」
「オッケー、オッケー! バッチシ! ナイス演技だよ、みのり」
「すごい罪悪感なんだけど」
「いーの、いーの。ああいう奴はあのくらいしないと変わんないんだから」
「 でも、嫌われちゃったらどうしよう………」
「大丈夫、大丈夫!またお腹がすいたら、みのりの部屋にご飯食べにくるんだから。それより、最後のあいつの泣きそうな顔見た? チョー、ウケる」
「…………はあ。ごめんね、新井くん」
高校時代、春の県大会のベスト8をかけた戦いはもつにもつれた。
延長13回。試合の最終スコアは13ー12。
両チーム総力戦となった試合で、背番号10。3年生の投手としてブルペンに控えていた俺の出番は、最後までやってこなかった。
エースが3回までに5点を失う苦しい展開。その裏の攻撃で代打が出された。
よし。俺の出番はここだと思っていた。
ブルペンの投球にも力が入る。
ベンチ裏の投球練習場で、俺の投げるボールが控えキャッチャーのミットにバシバシと収まる。
味方の攻撃が終わった時、俺は自分自身に気合いを入れてブルペンを出た。
しかし、監督の口から俺の名前は出ない。
交代を告げられたのは、まだ軽くキャッチボールをし始めたばかりだった後輩2年生ピッチャーだった。
俺は少し火照った体がむなしく感じながら、慌ててマウンドに向かう後輩の背中を見つめることしかできなかった。
ようやくチェンジになり、顔を真っ赤にした後輩ピッチャーが戻ってきた時には、さらに5点を失い、序盤で更なる大量リードを許す展開となっていた。
力関係はほぼ互角と思っていた相手校との対戦で、序盤から7点ものリードを許す試合展開はあまりにも酷なこと。
しかも、突然の登板で大量失点。半ばパニック状態のピッチャーをうちの監督は交代させようとしない。
後輩ピッチャーに続投を命じたのだ。誰が見ても限界に来ていて代えた方がいい状態なのに。
俺がどうしてこの試合で使われなかったのか理解出来ていない。
試合は中盤からうちの高校が粘りを見せ、最終回までに3点差に詰め寄るも、序盤の大量失点があまりにも痛すぎた。
だから、あまりにも悔いが残る。
途中から俺が投げていれば。
イニングが終わる毎に更新されるスコアを見て、俺はずっとそればかりを考えていた。
勝てば10年ぶりの春の大会ベスト8。
それを逃したこの試合の敗戦で、俺の中でぷっつりと何かが切れたことだけはよく覚えている。
俺はいまだにその時のことをよく思い出す。
あの時、無理やりタイムをかけて、強引にマウンドに上がっていればチームは勝っていたんじゃないかと。
ふとした瞬間や、寝る前にも意識せずして、その時ベンチから見えていた光景が目に浮かぶのだ。
今みたいに、なにか嫌なことがあってストレスを感じた時に、同じく引きずっているその時の記憶が引き出されるのではないかと、自分で分析してみたりもした。
ともかく、今は傷付いた心を抱えながら、とぼとぼと部屋に戻るしか、くたくたな俺に出来ることはなかった。
「ねえ。これでよかったの?」
「オッケー、オッケー! バッチシ! ナイス演技だよ、みのり」
「すごい罪悪感なんだけど」
「いーの、いーの。ああいう奴はあのくらいしないと変わんないんだから」
「 でも、嫌われちゃったらどうしよう………」
「大丈夫、大丈夫!またお腹がすいたら、みのりの部屋にご飯食べにくるんだから。それより、最後のあいつの泣きそうな顔見た? チョー、ウケる」
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