実況!4割打者の新井さん
わりとナイーブ新井さん。
よし。素振りだ。下の公園で素振りをしよう。
俺はそう思い立った。
それを告げると彼女は……。
「私も着いて行っていい?」
そう口を開くと同時に、ハンガーにかけてあった上着を彼女は羽織りはじめる。
嘘だろ? 着いてくるなんて思わなかったぜ。
俺はそう思って、少し唖然としてしまったが、彼女は既に玄関にしゃがみ込んで靴を履いていたので、もう既に遅かった。
俺も自室に戻って、バットを持って、彼女の元へ戻り、一緒に階段を下りて、公園へと入った。
マンションの下の公園は、子供が5、6人でサッカーでもして遊べるくらいの広さがあり、夜に素振りをするくらいはなんともない。
街灯が照らす入り口近くで俺はバットを使ってストレッチを始める。
「私、ここで見てるね」
襟元を立てたベージュ色の可愛らしいコートを羽織った山吹さんがすぐ側のベンチに腰を下ろした。
少し前のめりに座り、暗い中で目をこらすように、じーっと俺の姿を見つめている。
俺が素振りをする仕草の1つ1つを見逃してなるものかといった様子で、小さめの可愛らしい唇を少し尖らせながら。
まじまじとした視線を俺に向けている。
山吹さんから、すごいプレッシャーを感じるとともに、なんだかふざけてみたくなった俺は、素振りをするフリをして、バントの構えをしてみたのだ。
こう深呼吸して息を吐きながらバットを構え、足を上げて………バント。
もう1回足を上げて………バント。
なんかちょっとしっくり来ないなあと首を傾げながらバットを構え直してまたバント。
という渾身のボケをかましたのだが。
「……………」
山吹さんは夜のにわとりの如く、じーっとしたまま動かない。
本当なら…………。
なにそれー! とか、ちゃんとやってよー! とか。
キャッキャッしながらのツッコミを期待していたのに、彼女は全くをもって何の言葉も発しない。
もしかして寝てるのかな? と、近付いてみたら………。
「どうしたの? どこか痛くしちゃった?」
などと言って、上目遣いで俺を誘惑してくる。
俺は今の一連の出来事の説明を彼女に求めるのは諦めて、俺は真面目にバットを振りはじめた。
ブンッ! ブンッ!
夜の公園で俺のバットを振る音だけが聞こえている。
今日のハードトレのせいで足がガクガクだが、今日初めて握ったバットに、体全体が喜んでいるような感覚があった。
「なんか、思ってたよりも凄くないね」
山吹さんにいいところを見せようと気合いを入れてバットを振っていたが、彼女の評価は残酷なものだった。
彼女の凄くないねの一言を聞いて、息を切らせて愕然とする俺に追い打ちをかける。
「プロ野球選手が素振りをしたら、もっと風を切るようなすごい音がすると思ったんだけど………」
彼女の一言一言から、先ほどまでとは違うがっかりした感情が俺のところまで伝わってきた。
「………大丈夫? そんな状態であなた、プロ野球でやっていけるの?生半可な気持ちでいるなら、やめちゃえば? ふざけてばかりだと、他の迷惑だし」
ズキューン!!
今の山吹さんの言葉が、俺の心の芯を食った。
頭がぐわんぐわんして、視界がぼやける。
「私、部屋に戻るから。また明日ね」
山吹さんはそう言い残して、スタスタと公園から出て行ってしまった。
          
俺はそう思い立った。
それを告げると彼女は……。
「私も着いて行っていい?」
そう口を開くと同時に、ハンガーにかけてあった上着を彼女は羽織りはじめる。
嘘だろ? 着いてくるなんて思わなかったぜ。
俺はそう思って、少し唖然としてしまったが、彼女は既に玄関にしゃがみ込んで靴を履いていたので、もう既に遅かった。
俺も自室に戻って、バットを持って、彼女の元へ戻り、一緒に階段を下りて、公園へと入った。
マンションの下の公園は、子供が5、6人でサッカーでもして遊べるくらいの広さがあり、夜に素振りをするくらいはなんともない。
街灯が照らす入り口近くで俺はバットを使ってストレッチを始める。
「私、ここで見てるね」
襟元を立てたベージュ色の可愛らしいコートを羽織った山吹さんがすぐ側のベンチに腰を下ろした。
少し前のめりに座り、暗い中で目をこらすように、じーっと俺の姿を見つめている。
俺が素振りをする仕草の1つ1つを見逃してなるものかといった様子で、小さめの可愛らしい唇を少し尖らせながら。
まじまじとした視線を俺に向けている。
山吹さんから、すごいプレッシャーを感じるとともに、なんだかふざけてみたくなった俺は、素振りをするフリをして、バントの構えをしてみたのだ。
こう深呼吸して息を吐きながらバットを構え、足を上げて………バント。
もう1回足を上げて………バント。
なんかちょっとしっくり来ないなあと首を傾げながらバットを構え直してまたバント。
という渾身のボケをかましたのだが。
「……………」
山吹さんは夜のにわとりの如く、じーっとしたまま動かない。
本当なら…………。
なにそれー! とか、ちゃんとやってよー! とか。
キャッキャッしながらのツッコミを期待していたのに、彼女は全くをもって何の言葉も発しない。
もしかして寝てるのかな? と、近付いてみたら………。
「どうしたの? どこか痛くしちゃった?」
などと言って、上目遣いで俺を誘惑してくる。
俺は今の一連の出来事の説明を彼女に求めるのは諦めて、俺は真面目にバットを振りはじめた。
ブンッ! ブンッ!
夜の公園で俺のバットを振る音だけが聞こえている。
今日のハードトレのせいで足がガクガクだが、今日初めて握ったバットに、体全体が喜んでいるような感覚があった。
「なんか、思ってたよりも凄くないね」
山吹さんにいいところを見せようと気合いを入れてバットを振っていたが、彼女の評価は残酷なものだった。
彼女の凄くないねの一言を聞いて、息を切らせて愕然とする俺に追い打ちをかける。
「プロ野球選手が素振りをしたら、もっと風を切るようなすごい音がすると思ったんだけど………」
彼女の一言一言から、先ほどまでとは違うがっかりした感情が俺のところまで伝わってきた。
「………大丈夫? そんな状態であなた、プロ野球でやっていけるの?生半可な気持ちでいるなら、やめちゃえば? ふざけてばかりだと、他の迷惑だし」
ズキューン!!
今の山吹さんの言葉が、俺の心の芯を食った。
頭がぐわんぐわんして、視界がぼやける。
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山吹さんはそう言い残して、スタスタと公園から出て行ってしまった。
          
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