実況!4割打者の新井さん

わーたん

ギャルのおケツを追いかけて。

「あれ? やっぱりあんたじゃん! チョー、ウケるんだけど」



顔にかけていたタオルを外して体を起こしてみると、午前中ランニングの途中で立ち寄ったコーヒーショップ、シェルバーのテラス席で隣の席に座っていたギャルがなぜだかそこに立っていた。



そして俺のバテバテの辛そう表情を見て、ゲラゲラと笑い声を上げた。



「あんた、プロのヤキュー選手だったのね。今、キャンプ中なんじゃないの? どうしてグラウンドで練習しないで、1人で道路の上で転がってんの? チョーウケる」



チョー、ウケる。チョー、ウケる。うるせえなぁ。



誰なんだよ、ほっといてくれ。



「何しに来たのかって? そんなの仕事しにきたに決まってんじゃん。チョー、ウケる」



仕事? こんな2軍の練習場になんの仕事で来るんだよ。こんな野球とは無縁のギャル女なんかが。




「えー!? 何の仕事してるかって? 別にー、ベラベラ誰かに話すことじゃないしー。私のこと構っている暇があるなら、早く練習しろってカンジだしー。なにー、そのカオ。チョー、ウケる」



ギャルの女は1人ぺちゃくちゃぺちゃくちゃ喋り出し、最終的には呆れた俺の顔を見て笑いやがった。



その短いホットパンツから剥き出しにしてる太ももはけしからんと追いかけてやった。



「キャー!! チョー、変態じゃん! チョー、ウケる」



と言って逃げ出し、そのまま練習場の中にいなくなってしまった。



しかも、選手は入れないお偉いさんだけが通される応接室の方へと消えていってしまった。



どうして部外者なはずのギャルが普通に球場に入れんだよと疑問に思いながらも、俺は食堂でたらふくバナナを頬張った。



「……そうそう。ゆっくり上げてー………ゆっくりおろーす………オッケイ、オッケイ。…………ゆっくり上げてー。……おろーす……。はい、オッケイ! 新井君、5分休憩ね!!」



ふっしゅーっと、全身の空気が抜けるように脱力して俺はマットに突っ伏した。



午前中の上半身トレーニングに続いて、今度は太ももやふくらはぎの筋力トレーニング。



トレーニングチェアに座り、足の先に重りをつけた器具を上げたり下げたり。



うつ伏せになって、足首に付けたフットバーベルを上げたり下げたり。



あかん。死んでしまう。球団にひっそりと殺されてしまう。



俺は今日1日のメニューをこなしながら、そう感じていた。



わずか5分の休憩の間になんとかトレーニングコーチをロープで締め上げて逃げ出そうと企んだのだが、逆に関節技を決められてしまったのだ。



そして、1セット余計にトレーニングが追加されてしまった。

「実況!4割打者の新井さん」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「現代ドラマ」の人気作品

コメント

コメントを書く