実況!4割打者の新井さん
キャンプをがんばる新井さん。
「まあまあ。落ち着け、新井。球団もお前のことを考えて、こういう練習メニューを組んでくれたんだ。別にいじわるじゃないさ」
名も分からんコーチはそんなことを言って、俺をなだめる。
「一応、俺はお前の監視役なんだ。お前が練習をサボると俺まで怒られんだから、ちゃんとやってくれよ。ロードワークのコースと注意書きは後ろに書いてあるからな。確認しておけよ。じゃあな真面目にやれよ」
名も分からんコーチはそれを伝えると、上着を来てグラウンドの方へと向かっていってしまった。
俺は仕方なく、用紙の裏側を確認して、ロッカーでユニフォームに着替える。
グラウンドでは、2軍の選手達が元気よく練習する声が聞こえ、かなり空しくなりながら、とりあえず20キロのロードワークへと出掛けた。
つまるところ、俺には根本的に野球選手としての体力や筋力が足りないということだろう。そりゃあそうだ。本気の野球という意味では8年以上のブランクがあるわけで、同じドラフトで指名された選手達とはちょっとどころじゃない差があるのは自分でもよく分かる。
いきなり他の選手と同じような練習メニューのこなし方が出来るとは思っていなかったけど、まさか完全に別メニュー。初っぱながロードワークとはね、
しかし、元々長距離走は得意な方だった。
幼い頃から運動はもちろん得意で、同級生に運動で負けたような記憶はなく、放課後や体育の時間になると、とにかく人の3倍は走り回っていた気がする。
小学生の頃は、学校が終わると早くテレビゲームをしたくて、ランドセルを背負ったまま、ひたすらダッシュで家まで帰っていた。
パートに出ている母より早く帰れば、リビングのテレビでゲームが出来る。
自分が早く帰ればそれだけ長い時間ゲームが出来るのだ。
だから毎日、学校が終われば一目散に家に向かって全速力で走って帰っていた。片道2、5キロとかそのくらいの距離を毎日。
そんな生活を送っていると、小学校の長距離走大会では、学年でダントツの1位。助っ人で出場した陸上部の大会でも、3000メートル走で県大会に出場出来る程だった。
キャプテンでエースだった中学時代も顧問の教えから練習メニューはとにかく走り込みばかりだった。
高校時代もレギュラーには慣れなかったから、バッティング練習では、外野の守備位置で走り回ってレギュラー選手が打ち返した打球を補給してヒットになった気にさせないという変な意地を張っていたりもしていた。
だから、20キロのロードワークと言われても、2時間もあるし大丈夫だろうと鷹をくくっていた。
ところがどっこい。
指定されたコースはアップダウンが激しく、やたら歩道橋や信号を渡らせられる。そこで結構時間が食う。
しかも、学校に近いルートだったりやオフィス街や商店街など、わざわざ人の多いところを走らされる。
しかも、ユニフォーム姿でだ。
街中をユニフォーム姿で走っていると、なんだか周りの視線が痛い。
街を歩いている人々が俺を見て、ケラケラケラケラ笑っていますよ。
なにかしらあれは。遅刻をした罰で走っているのかしら。ケラケラケラ。
そんな感じの視線が俺の背中を痛く突いてくる。
そんな辛さにもめげることなく、俺は半分となる10キロを走ったところで、間食を取りなさいと指定された、シェルバーというお店に着いた。
どうやら、若い女の子が通いそうな、宇都宮駅の真ん前にあるお洒落なコーヒーショップのようだ。
コーチから渡された資料によると、ランニングコースの中間地点になるこのお店で、栄養補給の軽食を取ることが指示されている。
指示に背いたら、ランニング10キロ追加と明記されている。
目の前が宇都宮駅のロータリーで、オープンカフェの席もあるようで、外からもガラス張りの店内の様子がよく見える。
店の中には、今時のおしゃれな服を着た若い女の子達が、たくさんいらっしゃって、束の間のブレイクタイムを楽しんでいるようだ。
この店に行かなきゃいけないのか。
10キロ走った後の汗だくな顔で、ユニフォーム姿で。
非常にお店に入りにくい。
どうしよう。このまま帰ろうかな。
しかし、球団にここでメシを食えって言われてるし。
でも……。いくらなんでも、ユニフォーム姿で、このシャレオツなお店に1人で突入するというのは。
「どうかしました?」
「………ん?」
振り返ると、シェルバーとローマ字で書かれたエプロンを着た女の子がいた。
「もしかして、プロ野球の人ですか?」
少し背が高く、キリッとした顔つきの黒髪ポニーテール。なかなか可愛らしい女の子だ。
そして何より、エプロンを着用していてもよく分かるくらい胸が大きい。
しかも、凄く形も良さそう。
ちょっとテンションが上がった。
名も分からんコーチはそんなことを言って、俺をなだめる。
「一応、俺はお前の監視役なんだ。お前が練習をサボると俺まで怒られんだから、ちゃんとやってくれよ。ロードワークのコースと注意書きは後ろに書いてあるからな。確認しておけよ。じゃあな真面目にやれよ」
名も分からんコーチはそれを伝えると、上着を来てグラウンドの方へと向かっていってしまった。
俺は仕方なく、用紙の裏側を確認して、ロッカーでユニフォームに着替える。
グラウンドでは、2軍の選手達が元気よく練習する声が聞こえ、かなり空しくなりながら、とりあえず20キロのロードワークへと出掛けた。
つまるところ、俺には根本的に野球選手としての体力や筋力が足りないということだろう。そりゃあそうだ。本気の野球という意味では8年以上のブランクがあるわけで、同じドラフトで指名された選手達とはちょっとどころじゃない差があるのは自分でもよく分かる。
いきなり他の選手と同じような練習メニューのこなし方が出来るとは思っていなかったけど、まさか完全に別メニュー。初っぱながロードワークとはね、
しかし、元々長距離走は得意な方だった。
幼い頃から運動はもちろん得意で、同級生に運動で負けたような記憶はなく、放課後や体育の時間になると、とにかく人の3倍は走り回っていた気がする。
小学生の頃は、学校が終わると早くテレビゲームをしたくて、ランドセルを背負ったまま、ひたすらダッシュで家まで帰っていた。
パートに出ている母より早く帰れば、リビングのテレビでゲームが出来る。
自分が早く帰ればそれだけ長い時間ゲームが出来るのだ。
だから毎日、学校が終われば一目散に家に向かって全速力で走って帰っていた。片道2、5キロとかそのくらいの距離を毎日。
そんな生活を送っていると、小学校の長距離走大会では、学年でダントツの1位。助っ人で出場した陸上部の大会でも、3000メートル走で県大会に出場出来る程だった。
キャプテンでエースだった中学時代も顧問の教えから練習メニューはとにかく走り込みばかりだった。
高校時代もレギュラーには慣れなかったから、バッティング練習では、外野の守備位置で走り回ってレギュラー選手が打ち返した打球を補給してヒットになった気にさせないという変な意地を張っていたりもしていた。
だから、20キロのロードワークと言われても、2時間もあるし大丈夫だろうと鷹をくくっていた。
ところがどっこい。
指定されたコースはアップダウンが激しく、やたら歩道橋や信号を渡らせられる。そこで結構時間が食う。
しかも、学校に近いルートだったりやオフィス街や商店街など、わざわざ人の多いところを走らされる。
しかも、ユニフォーム姿でだ。
街中をユニフォーム姿で走っていると、なんだか周りの視線が痛い。
街を歩いている人々が俺を見て、ケラケラケラケラ笑っていますよ。
なにかしらあれは。遅刻をした罰で走っているのかしら。ケラケラケラ。
そんな感じの視線が俺の背中を痛く突いてくる。
そんな辛さにもめげることなく、俺は半分となる10キロを走ったところで、間食を取りなさいと指定された、シェルバーというお店に着いた。
どうやら、若い女の子が通いそうな、宇都宮駅の真ん前にあるお洒落なコーヒーショップのようだ。
コーチから渡された資料によると、ランニングコースの中間地点になるこのお店で、栄養補給の軽食を取ることが指示されている。
指示に背いたら、ランニング10キロ追加と明記されている。
目の前が宇都宮駅のロータリーで、オープンカフェの席もあるようで、外からもガラス張りの店内の様子がよく見える。
店の中には、今時のおしゃれな服を着た若い女の子達が、たくさんいらっしゃって、束の間のブレイクタイムを楽しんでいるようだ。
この店に行かなきゃいけないのか。
10キロ走った後の汗だくな顔で、ユニフォーム姿で。
非常にお店に入りにくい。
どうしよう。このまま帰ろうかな。
しかし、球団にここでメシを食えって言われてるし。
でも……。いくらなんでも、ユニフォーム姿で、このシャレオツなお店に1人で突入するというのは。
「どうかしました?」
「………ん?」
振り返ると、シェルバーとローマ字で書かれたエプロンを着た女の子がいた。
「もしかして、プロ野球の人ですか?」
少し背が高く、キリッとした顔つきの黒髪ポニーテール。なかなか可愛らしい女の子だ。
そして何より、エプロンを着用していてもよく分かるくらい胸が大きい。
しかも、凄く形も良さそう。
ちょっとテンションが上がった。
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