実況!4割打者の新井さん
運命の………?2
203号室前に到着した。
早速カギを差し込む。今まで住んでたアパートとは違い、スムーズに鍵穴が回ること。そんな単純なことに感動した。
やはりさらに辺境な地の安アパートとはちょいと違う。
玄関のドアを開けると、貸家特有の抗菌消毒スプレーの残り香のような特有の匂いが広がっている。
1LDKの部屋。玄関の横には靴箱と棚が設置されていて、靴を脱ぎ部屋に上がり廊下を進むと、左側には脱衣場と洗濯機置き場。その横に洗面台があり、風呂場は少し狭いが1人で使うには十分。
廊下を進んだその隣にはおトイレ。それなりに奥行きがあり、ウォシュレット付きのナイスなおトイレ。
廊下の突き当たりはダイニングとキッチン。もちろんテーブルや椅子なんかは置いていないのでキッチン周りは広くもしかしたらバットが振れるかもしれない。
球団が用意してくれたのか、コンパクトな冷蔵庫と電子レンジが置かれている。火元は2口のIHだ。
その奥。プラスチックガラスの引き戸の向こうはリビング。ここにテレビを置こう、パソコンを置こうと想像が広がる。
その隣には寝室があり、俺はとりあえず足元に荷物を置き、ベランダに続く窓を開ける。
その瞬間、ぶわっと風が吹き込み、グレーの備え付けカーテンが大きく揺れた。
そして、部屋いっぱいに太陽の光が差し込んでくる。
よーし、今日からプロ野球選手としての新しい生活だぞと、テンションの上がった俺は、若干腹が減ってきたことを感じながらも、球団から至急されたロゴ入りの木製バットを持つ。
そして、下の公園で軽く素振りでもしようと、俺はまた部屋を出た。
マンションの下の公園はなかなかの広さで、滑り台や鉄棒、砂場ジャングルジムと、一通りの遊具が揃っていた。
そんな公園には俺がただ1人。
俺はベンチの上にタオルと水の入ったペットボトルを置き、公園の真ん中でぎゅっと木製のバットを握る。
特別なバットではない。投手や若手の選手が濫用する一般的なバットだ。
重さも芯の位置も平均的で、腕力のないノーパワーな俺には妙にしっくり来た。
少しグリップが太い気になったけど、お金を払っているわけではないから文句は言えない。
俺はそんなことを思いながら、夕日をバックにしてバットを構え、素振りを開始した。
その最中。事件は起きた。
スポーツ番組とか、動画投稿サイトの映像とか。結構見たことあるよ。
野球の試合で打席に立ったバッターがフルスイングすると、そのままポーンとバットが客席やベンチに飛び込んでしまう光景を。
そしてその光景が今まさに、俺の目の前で起こってしまった。
いや。俺が起こしてしまった。
こうピッチャーがボールを投げてくるイメージをしながら、集中して素振りすること、100ちょっと。
だんだん体もあったまってきて、いよいよ素振りに熱が入ってきた頃。
バッティンググローブをせずに素振りをしていたからか、バット振り切った瞬間、ツルッとバットが滑った時にはもう遅かった。
ノーパワーの俺なのに、バットはきれいな放物線を描いて、2階まで飛んでいき、ベランダの窓を開け放っている俺の部屋の、横の部屋のベランダに着弾。
ガッシャーン!という、ガラスの割れる見事な音が辺りに響いた。
そしてその部屋の反対のベランダがゆっくりと開き、眼鏡を掛けた若い女性が俺のことをじっと見つめていた。
じっと。
何も言わずにただじっと見つめていた。
早速カギを差し込む。今まで住んでたアパートとは違い、スムーズに鍵穴が回ること。そんな単純なことに感動した。
やはりさらに辺境な地の安アパートとはちょいと違う。
玄関のドアを開けると、貸家特有の抗菌消毒スプレーの残り香のような特有の匂いが広がっている。
1LDKの部屋。玄関の横には靴箱と棚が設置されていて、靴を脱ぎ部屋に上がり廊下を進むと、左側には脱衣場と洗濯機置き場。その横に洗面台があり、風呂場は少し狭いが1人で使うには十分。
廊下を進んだその隣にはおトイレ。それなりに奥行きがあり、ウォシュレット付きのナイスなおトイレ。
廊下の突き当たりはダイニングとキッチン。もちろんテーブルや椅子なんかは置いていないのでキッチン周りは広くもしかしたらバットが振れるかもしれない。
球団が用意してくれたのか、コンパクトな冷蔵庫と電子レンジが置かれている。火元は2口のIHだ。
その奥。プラスチックガラスの引き戸の向こうはリビング。ここにテレビを置こう、パソコンを置こうと想像が広がる。
その隣には寝室があり、俺はとりあえず足元に荷物を置き、ベランダに続く窓を開ける。
その瞬間、ぶわっと風が吹き込み、グレーの備え付けカーテンが大きく揺れた。
そして、部屋いっぱいに太陽の光が差し込んでくる。
よーし、今日からプロ野球選手としての新しい生活だぞと、テンションの上がった俺は、若干腹が減ってきたことを感じながらも、球団から至急されたロゴ入りの木製バットを持つ。
そして、下の公園で軽く素振りでもしようと、俺はまた部屋を出た。
マンションの下の公園はなかなかの広さで、滑り台や鉄棒、砂場ジャングルジムと、一通りの遊具が揃っていた。
そんな公園には俺がただ1人。
俺はベンチの上にタオルと水の入ったペットボトルを置き、公園の真ん中でぎゅっと木製のバットを握る。
特別なバットではない。投手や若手の選手が濫用する一般的なバットだ。
重さも芯の位置も平均的で、腕力のないノーパワーな俺には妙にしっくり来た。
少しグリップが太い気になったけど、お金を払っているわけではないから文句は言えない。
俺はそんなことを思いながら、夕日をバックにしてバットを構え、素振りを開始した。
その最中。事件は起きた。
スポーツ番組とか、動画投稿サイトの映像とか。結構見たことあるよ。
野球の試合で打席に立ったバッターがフルスイングすると、そのままポーンとバットが客席やベンチに飛び込んでしまう光景を。
そしてその光景が今まさに、俺の目の前で起こってしまった。
いや。俺が起こしてしまった。
こうピッチャーがボールを投げてくるイメージをしながら、集中して素振りすること、100ちょっと。
だんだん体もあったまってきて、いよいよ素振りに熱が入ってきた頃。
バッティンググローブをせずに素振りをしていたからか、バット振り切った瞬間、ツルッとバットが滑った時にはもう遅かった。
ノーパワーの俺なのに、バットはきれいな放物線を描いて、2階まで飛んでいき、ベランダの窓を開け放っている俺の部屋の、横の部屋のベランダに着弾。
ガッシャーン!という、ガラスの割れる見事な音が辺りに響いた。
そしてその部屋の反対のベランダがゆっくりと開き、眼鏡を掛けた若い女性が俺のことをじっと見つめていた。
じっと。
何も言わずにただじっと見つめていた。
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