実況!4割打者の新井さん
人生が変わるとき5
俺はその男に案内され、パチンコ屋の駐車場の端。お客さんの邪魔にならないようにという配慮だろうか。非常に止めにくい奥の駐車スペースまで行き、そこに止めてあった白色の車に乗り込んだ。
「いやあ、パチンコ屋さんなんて来たのは、大学以来だなあ。野球を引退した後、友達に連れられてねえ。君はパチンコ、かなり詳しいみたいだね」
「ええ、まあ。毎日のように打ってますから」
「そうか。ところで近くにファミレスか喫茶店はあるかな?」
「えーっと、駐車場を左に出て少し行ったところに、赤い看板のファミレスが……」
もらった名刺をどうしていいか分からず、手汗を滲ませながら握り締めて、俺はその方向を指差しながらそう答えた。
「なるほど。それじゃ、そこまで行こうか」
スーツの男。中込さんは北関東ビクトリーズのスカウト部。その人が来たということは………そういうことだよな?
俺は頭の中で、何度も自問自答していた。
それと同時に、名刺に書かれていた中込という名前に覚えがあることも思い出す。
確か3年前くらいに、横浜ベイエトワールズというチームで戦力外通告を受けた、左サイドスローの投手が中込という名前だったはず。
年末にトライアウトを受ける戦力外選手に密着する番組に出ていたはずだ。
「いやあ、思ったよりも今日は暖かいね。コートなんていらなかったよ」
確か、こんな顔だったな。新球団のスカウトマンになっていたのか。
トライアウトにいたコーチもそうだったけど、結構色んな球団から人材を集めているんだな。
まだ口には出さなかったが、そんなことを考えながら、ファミレスに着くまで俺は大人しくしていた。
そして10分足らず。ファミレスの駐車場に車を止め、そのまま店内へ。まだ客もまばらな中、禁煙席の1番奥のテーブルに案内された。
「お腹はすいているかい? 好きなものを頼んでいいよ」
「マジすか!? やったぁ!」
その言葉だけを待っていましたぜ。
「すみません! おねーさん!」
「はーい!」
俺は呼び出しボタンには目もくれず、側にいた店員のお姉さんを直に呼びつけた。
「えっと、この和牛ステーキを2つと、こっちの天ぷら盛り合わせ定食と、このマルゲリータピザとチーズドリアと、あとのスペシャルイチゴパフェと、ババロアの抹茶アイス添えっていうのと………あと、ドリンクバーと」
さっき後輩に1万円渡してしまったから、それを取り返そうと、俺は美味そうなメニューを手当たり次第に注文。向かい側に座る中込さんは、ステーキを2つと言った瞬間から、こいつマジか………という表情をしていて、それが何故か少し気持ちよかった。
「とりあえず以上で………中込さんは?」
「僕もドリンクバーとビーフシチューオムライスだけで……」
「かしこまりました! しばらくお待ち下さいませ!!」
お姉さんはハンディターミナルをパタンと閉めて、腰のホルダーにしまうと、ニコニコ顔で軽く頭を下げて離れていった。
そんなタイミングで中込さんは切り出す。
「新井君、君はこの前のドラフトで北関東ビクトリーズがドラフト10位指名されたから今回はその挨拶に来たよ」
え?
あれ? 俺ってドラフトに引っ掛かっていたんですか!?
そんな顔をすると、中込さんは少し呆れた表情をしながら、カバンから1枚の用紙を取り出す。
そこには、北関東ビクトリーズの球団社長のよく分からん外人の名前と球団取締役の人と1軍監督である萩山というサインもある。
あとは、今回チミは10巡目に指名されてどうのこうのと書いてあるだけだ。
とりあえずスマホを取り出して、その用紙写メった。
「この指名通知にも書いてあるんだけど、あさっての午後2時にビクトリーズの球団本社に来て欲しいんだけど、大丈夫?」
あさってかぁ。その日は行きつけのパチ屋が新装オープンの日なんだよねえ。
また車で1時間掛けて宇都宮に行くのはめんどくさいなあ。
まあでもステーキ2枚頼んじゃったし、拒否するわけにもいかないからね。
仕方なく頷いておこう。
「そうかい? それじゃあ、その時間によろしく頼むよ。ここに電話してくれれば出入り口まで迎えに行くからね」
「お待たせ致しました! デラックス和牛ステーキでございます!」
わーい!奢りのステーキが来た!
「マルゲリータピザのサラミチーズトッピングになります!!」
わーい! 美味しそう!
「こちらが天ぷらの盛り合わせ定食でございます!」
わーい!食べ切れないよ!!
          
「いやあ、パチンコ屋さんなんて来たのは、大学以来だなあ。野球を引退した後、友達に連れられてねえ。君はパチンコ、かなり詳しいみたいだね」
「ええ、まあ。毎日のように打ってますから」
「そうか。ところで近くにファミレスか喫茶店はあるかな?」
「えーっと、駐車場を左に出て少し行ったところに、赤い看板のファミレスが……」
もらった名刺をどうしていいか分からず、手汗を滲ませながら握り締めて、俺はその方向を指差しながらそう答えた。
「なるほど。それじゃ、そこまで行こうか」
スーツの男。中込さんは北関東ビクトリーズのスカウト部。その人が来たということは………そういうことだよな?
俺は頭の中で、何度も自問自答していた。
それと同時に、名刺に書かれていた中込という名前に覚えがあることも思い出す。
確か3年前くらいに、横浜ベイエトワールズというチームで戦力外通告を受けた、左サイドスローの投手が中込という名前だったはず。
年末にトライアウトを受ける戦力外選手に密着する番組に出ていたはずだ。
「いやあ、思ったよりも今日は暖かいね。コートなんていらなかったよ」
確か、こんな顔だったな。新球団のスカウトマンになっていたのか。
トライアウトにいたコーチもそうだったけど、結構色んな球団から人材を集めているんだな。
まだ口には出さなかったが、そんなことを考えながら、ファミレスに着くまで俺は大人しくしていた。
そして10分足らず。ファミレスの駐車場に車を止め、そのまま店内へ。まだ客もまばらな中、禁煙席の1番奥のテーブルに案内された。
「お腹はすいているかい? 好きなものを頼んでいいよ」
「マジすか!? やったぁ!」
その言葉だけを待っていましたぜ。
「すみません! おねーさん!」
「はーい!」
俺は呼び出しボタンには目もくれず、側にいた店員のお姉さんを直に呼びつけた。
「えっと、この和牛ステーキを2つと、こっちの天ぷら盛り合わせ定食と、このマルゲリータピザとチーズドリアと、あとのスペシャルイチゴパフェと、ババロアの抹茶アイス添えっていうのと………あと、ドリンクバーと」
さっき後輩に1万円渡してしまったから、それを取り返そうと、俺は美味そうなメニューを手当たり次第に注文。向かい側に座る中込さんは、ステーキを2つと言った瞬間から、こいつマジか………という表情をしていて、それが何故か少し気持ちよかった。
「とりあえず以上で………中込さんは?」
「僕もドリンクバーとビーフシチューオムライスだけで……」
「かしこまりました! しばらくお待ち下さいませ!!」
お姉さんはハンディターミナルをパタンと閉めて、腰のホルダーにしまうと、ニコニコ顔で軽く頭を下げて離れていった。
そんなタイミングで中込さんは切り出す。
「新井君、君はこの前のドラフトで北関東ビクトリーズがドラフト10位指名されたから今回はその挨拶に来たよ」
え?
あれ? 俺ってドラフトに引っ掛かっていたんですか!?
そんな顔をすると、中込さんは少し呆れた表情をしながら、カバンから1枚の用紙を取り出す。
そこには、北関東ビクトリーズの球団社長のよく分からん外人の名前と球団取締役の人と1軍監督である萩山というサインもある。
あとは、今回チミは10巡目に指名されてどうのこうのと書いてあるだけだ。
とりあえずスマホを取り出して、その用紙写メった。
「この指名通知にも書いてあるんだけど、あさっての午後2時にビクトリーズの球団本社に来て欲しいんだけど、大丈夫?」
あさってかぁ。その日は行きつけのパチ屋が新装オープンの日なんだよねえ。
また車で1時間掛けて宇都宮に行くのはめんどくさいなあ。
まあでもステーキ2枚頼んじゃったし、拒否するわけにもいかないからね。
仕方なく頷いておこう。
「そうかい? それじゃあ、その時間によろしく頼むよ。ここに電話してくれれば出入り口まで迎えに行くからね」
「お待たせ致しました! デラックス和牛ステーキでございます!」
わーい!奢りのステーキが来た!
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わーい! 美味しそう!
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わーい!食べ切れないよ!!
          
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