実況!4割打者の新井さん
プロテスト、終わる2
「はい! じゃあ、今日はお疲れっすー!頂きまーす!」
「いただきやーっす!」
「オツカレー!」
トライアウトのあった球場から車で国道と市街地を走り15分ほど。宇都宮駅近くのトンカツ屋に車を止めた。
ロースカツ定食が800円。ダブルなら1200円というくらいの価格帯のチェーン店。
各々ボリュームのあるトンカツを好きに注文し、口いっぱいに頬張りながら今日のプロテストの話で盛り上がる。
「そーいや、ロンパオ! てめえ、最後の打席で俺にぶつけやがって。ケガでもしたらどうするつもりだったんだよ!」
柴崎が詰め寄ると、彼は首を横に振って俺に助けを求めてきた。どうやらロンパオちゃんは台湾人らしく、日本のプロ野球に挑戦するために来日したばかり。
ご飯粒を飛ばしながらまくし立てるように怒っても通じることはなさそうだ。
しかし、なんとなく柴崎に怒られているのは分かるみたいで、苦笑いしながら俺に助けを求めてきた。
とりあえず、ロンパオは内角を攻めて打者に恐怖心を持たせる事で力を発揮出来る投手だからと、コントロールミスしてデッドボールになるのは仕方ないと、なんだか理由になっているんだか分からない道理で柴崎をなだめる。
「腹立つわ、マジで。もう1本打ってアピールしたかったのによ!どーせ、前の打席でスリーベース打たれたの根に持ってるだけだろ。お姉さん、お姉さん!ご飯お代わり!」
「はーい!!」
柴崎だって、1回2回と対戦すれば相手がどんな投手か分からないわけもないだろう。
確かにもう1本打って、ヒット3本となれば野手で最も目立った存在でプロテストを終えていたのは間違いない。
それでも、1番いいピッチングをしていたこのもっちゃり台湾人からスリーベースを打っただけでも十分なアピールだと思うが。守備で足の速さや肩の強さ、落下点までの到達スピードとかも群を抜いていたし。
まあそんな反省会のようなことをしながら、大判のロースカツを2枚ペロリと平らげた俺達だった。
「新井さん、ごちそーさまです!!」
「ゴッサッーサヘス!!アライサン!」
昨日、パチンコで10万勝ったし、ここは俺が奢ってやるよと伝票を持って立ち上がると、柴崎が席から立ち上がり俺に深々と頭を下げた。
店内に響き渡るくらいの大声で柴崎が何度も頭を下げる。
それを見たロンパオも水の入っていないグラスをひっくり返しながら立ち上がり、片言でごちそうさまと言っている。
まあ、俺もロンパオからヒット打ったしね。今日は気分がいいからよ。一応1番年上またいだしな。
5000円程度の支払いなんて屁でもないってやつさ。
支払いを済ませ、丸くなったお腹を擦りながら外に出ると、既に辺りは暗くなっていて、夜空には1番星が出ていた。
「俺、ここから電車で帰りますんで失礼します! 今日はご馳走さんでした!」
柴崎は電車で2駅行ったところに住んでいるという事で、荷物を持って駅の方へと向かっていった。
「オレモカエル。アライサン。ゴッサッサ」
ロンパオもペコリとお辞儀をしながら駅に向かう。
近くに住んでいるのか、また別のチームのテストを受けに行くのかは知らないけど、今日みたいなピッチングが出来るなら、日本でプレーする事も可能かもしれない。
俺と柴崎以外には打たれてなかったしね。
まだ若そうだし。
俺は遠ざかる2人の背中を見るなんてことはすることないなと、鼻歌混じりに白の軽自動車に乗り込み、宇都宮から那須方面に向かう国道4号線をひた走った。
そしておよそ1時間後。那須塩原市内の自宅に到着。
外の寒さに身震いしながら、急いで車から荷物を下ろし、アパートの階段を駆け上がる。
カギの掛かっていない冷たいドアノブを開けて、逃げ込むように部屋に入る。
風の吹く外よりは幾分かましではあるけど、誰のいないワンルームの部屋も色んな意味で凍えるように寒い。
部屋の灯りを点け、エアコンのスイッチを入れ、とりあえずテレビも点ける。
いつもと変わらない光景ではあるけど、今日は比べようもないくらい気分がいい。
普段はめったに飲まないビールも、帰り際のコンビニで2本も買ってしまった。
あとは冷蔵庫のウインナーに切れ目を入れてフライパンで焼いてやればと、俺は独り言を呟きながら服を脱ぎ、熱いシャワーを浴びる。
風呂を上がり、パンツも履かずに火照った体に冷たいビールを流し込む。
美味いと思える程度でいいから酒が好きだったらよかったんだけど、飲もうと思う気分になっただけいつもの俺とは違う。
トンカツは食ったけど、早くも小腹がすいてきていた俺は、ウインナーを油の敷いたフライパンの上に乗せる。
次第にパチパチし始め、裸の上半身に油が飛ぶけど全然気にしないもんね。
軽く水ぶくれが出来たけど、全然へっちゃらだもんね。
それにしても、右手に残るヒットを打った感触が残っている。木製バットで放ったナイスな流し打ちのヒットの感触。
ケース打撃でもっちゃり男から打ったある意味人生最高のヒット。
その心地よい感触。
その感触だけで3杯は飯を食えますよ。
さて。明日はバイトだからウインナーとアイスを食べたら今日は早く寝ようかしらね。
「いただきやーっす!」
「オツカレー!」
トライアウトのあった球場から車で国道と市街地を走り15分ほど。宇都宮駅近くのトンカツ屋に車を止めた。
ロースカツ定食が800円。ダブルなら1200円というくらいの価格帯のチェーン店。
各々ボリュームのあるトンカツを好きに注文し、口いっぱいに頬張りながら今日のプロテストの話で盛り上がる。
「そーいや、ロンパオ! てめえ、最後の打席で俺にぶつけやがって。ケガでもしたらどうするつもりだったんだよ!」
柴崎が詰め寄ると、彼は首を横に振って俺に助けを求めてきた。どうやらロンパオちゃんは台湾人らしく、日本のプロ野球に挑戦するために来日したばかり。
ご飯粒を飛ばしながらまくし立てるように怒っても通じることはなさそうだ。
しかし、なんとなく柴崎に怒られているのは分かるみたいで、苦笑いしながら俺に助けを求めてきた。
とりあえず、ロンパオは内角を攻めて打者に恐怖心を持たせる事で力を発揮出来る投手だからと、コントロールミスしてデッドボールになるのは仕方ないと、なんだか理由になっているんだか分からない道理で柴崎をなだめる。
「腹立つわ、マジで。もう1本打ってアピールしたかったのによ!どーせ、前の打席でスリーベース打たれたの根に持ってるだけだろ。お姉さん、お姉さん!ご飯お代わり!」
「はーい!!」
柴崎だって、1回2回と対戦すれば相手がどんな投手か分からないわけもないだろう。
確かにもう1本打って、ヒット3本となれば野手で最も目立った存在でプロテストを終えていたのは間違いない。
それでも、1番いいピッチングをしていたこのもっちゃり台湾人からスリーベースを打っただけでも十分なアピールだと思うが。守備で足の速さや肩の強さ、落下点までの到達スピードとかも群を抜いていたし。
まあそんな反省会のようなことをしながら、大判のロースカツを2枚ペロリと平らげた俺達だった。
「新井さん、ごちそーさまです!!」
「ゴッサッーサヘス!!アライサン!」
昨日、パチンコで10万勝ったし、ここは俺が奢ってやるよと伝票を持って立ち上がると、柴崎が席から立ち上がり俺に深々と頭を下げた。
店内に響き渡るくらいの大声で柴崎が何度も頭を下げる。
それを見たロンパオも水の入っていないグラスをひっくり返しながら立ち上がり、片言でごちそうさまと言っている。
まあ、俺もロンパオからヒット打ったしね。今日は気分がいいからよ。一応1番年上またいだしな。
5000円程度の支払いなんて屁でもないってやつさ。
支払いを済ませ、丸くなったお腹を擦りながら外に出ると、既に辺りは暗くなっていて、夜空には1番星が出ていた。
「俺、ここから電車で帰りますんで失礼します! 今日はご馳走さんでした!」
柴崎は電車で2駅行ったところに住んでいるという事で、荷物を持って駅の方へと向かっていった。
「オレモカエル。アライサン。ゴッサッサ」
ロンパオもペコリとお辞儀をしながら駅に向かう。
近くに住んでいるのか、また別のチームのテストを受けに行くのかは知らないけど、今日みたいなピッチングが出来るなら、日本でプレーする事も可能かもしれない。
俺と柴崎以外には打たれてなかったしね。
まだ若そうだし。
俺は遠ざかる2人の背中を見るなんてことはすることないなと、鼻歌混じりに白の軽自動車に乗り込み、宇都宮から那須方面に向かう国道4号線をひた走った。
そしておよそ1時間後。那須塩原市内の自宅に到着。
外の寒さに身震いしながら、急いで車から荷物を下ろし、アパートの階段を駆け上がる。
カギの掛かっていない冷たいドアノブを開けて、逃げ込むように部屋に入る。
風の吹く外よりは幾分かましではあるけど、誰のいないワンルームの部屋も色んな意味で凍えるように寒い。
部屋の灯りを点け、エアコンのスイッチを入れ、とりあえずテレビも点ける。
いつもと変わらない光景ではあるけど、今日は比べようもないくらい気分がいい。
普段はめったに飲まないビールも、帰り際のコンビニで2本も買ってしまった。
あとは冷蔵庫のウインナーに切れ目を入れてフライパンで焼いてやればと、俺は独り言を呟きながら服を脱ぎ、熱いシャワーを浴びる。
風呂を上がり、パンツも履かずに火照った体に冷たいビールを流し込む。
美味いと思える程度でいいから酒が好きだったらよかったんだけど、飲もうと思う気分になっただけいつもの俺とは違う。
トンカツは食ったけど、早くも小腹がすいてきていた俺は、ウインナーを油の敷いたフライパンの上に乗せる。
次第にパチパチし始め、裸の上半身に油が飛ぶけど全然気にしないもんね。
軽く水ぶくれが出来たけど、全然へっちゃらだもんね。
それにしても、右手に残るヒットを打った感触が残っている。木製バットで放ったナイスな流し打ちのヒットの感触。
ケース打撃でもっちゃり男から打ったある意味人生最高のヒット。
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