実況!4割打者の新井さん

わーたん

プロテスト9

「センター!! センター!!」

そろそろ日が少しずつ傾き始めた空に白球が上がり、それをセンターの柴崎がフェンスいっぱいのところでキャッチした。

「オッケイ! ナイス返球!」

柴崎は足速いし、肩も強いな。センターのバックスクリーン前からワンバウンドで2塁上にストライク返球だ。

さっきのフリーバッティングだって、30スイングで7、8発スタンドに放り込んでいた。

あまり聞かない大学のユニフォームを着てるけど、きっとバリバリ4番張ってたような奴なんだろうな。

俺は腕組みをしながらまたそんな事を考える。

もう2周り目の下位打線だけど、1球もレフトに飛んで来ないよ。

「ヘイ!! もう1丁センターに打てセンターに!! レフトも声出せよ、コノヤロー!!」

一応俺のが5つは年上なんだぜ? 柴ちゃんよ。


「いいね! ショート、ナイスプレー!」

「よーし、こっちは点取りまくるぞ!」

ランナー2塁で最後のバッターの時にやっと俺のところに飛んできたと思ったら、ショートがダイビングキャッチしやがった。

最後の最後で、レーザービームを披露してやろうと思ったのに。

まあでも、難しい打球が飛んできて下手にエラーするよりはよっぽどましと自分に言い聞かせて、バットを手に取る。

敵チーム。マウンドに上がった左ピッチャーのタイミングを取る。

なんだか体格のいい、もっちゃりとしたピッチャーたま。

なんとかズと胸のところに書いてあるが、全く読めない。

独立リーグのピッチャーなのか、はたまた社会人なのかもよく分からない。

とりあえず、がっしりとした体型のゆったりとしたフォームで、今日見たピッチャー中では今日1速いストレートとカーブ系の変化球を投げている。



「よっしゃあ!!」

後攻組の1番打者は、センターの守りでいいプレーを連発していた柴崎。

フリーバッティングでも、何発ものサク超えを披露しており、あとは実践的なバッティングはどうだろうかというところ。

相手左腕に対して高く足を上げてタイミングを取る柴崎。

「ストライーク!!」

初球、アウトコースいっぱいに重たそうなストレートが決まる。

マウンド上の左腕はがさつに足場をならしながら、左手を丸めて息を吹き込み、指先を温める。

対する柴崎が1度ヘルメットを外して汗を拭う辺り、あまりボールが見えなかったのだろうと考えがつく。

俺も他の後攻組と一緒に素振りしながらタイミングを図るが、今ではあまりいない2段モーションに近いくらいに足を上げてからのタメを作るピッチャー。

打席では多少ボールが見えにくく、タイミングが取りづらいのかもしれない。

「ストライクツー!!」

2球目は縦に大きく割れるように曲がるカーブ。あっという間に柴崎は追い込まれた。

「スイングアウト!!」

そして、簡単に三振した。

最後は柴崎から見て1番遠いところ。アウトコースいっぱいに投げ込まれたストレート。1番打者である柴崎のバットが空を切った。

「ちっ………」


          

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