最強暗殺者は落ちこぼれ学園生

葉音香桜

優等生と劣等生

  「よぉし、いくか!」
  そう言って、自分を鼓舞するレアン。
  レアンの部屋は寮の最下階にある。ハンナを含め、レアンの実力を知っている者は、最上階にしたかったようだが、「わざわざ下に行くのが面倒だから」と、無理を言ったのだ。

  寮のなかで、上下関係は決まってしまう。なぜなら、寮のどの階に住んでいるかで強いか決まってしまうからだ。
   最下階に済んでいる人はいわゆる、「劣等生」。
   最上階に住んでいる人はいわゆる、「優等生」。
   そう決まっている。
  ちなみに部屋の広さも変わってくる。上の階はとても広く、下の階はその半分しかないのだ。しかしレアンの部屋は他の落ちこぼれたちより少しだけ広い。だが、優等生たちの部屋には負けていた。

  だからハンナたちはレオンの部屋を最上階にしようとしていた。
 昨日の生徒たちはみんな最上階に住む「優等生」。
 そして彼らにとってレアンは落ちこぼれなのだ。
 レアンと同じ階に住む人たちもまた然り。「優等生」のいじめの対象なのだ。

  レアンはいつも早く登校する。唯一の親友と待ち合わせをしているからだ。
「おーい!レアン!」
 そう大きく手を振っているのは、レアンの親友のディラン・ラミレス。同じ落ちこぼれ仲間。
「おはよう」
「おはよ。聞いたぜ〜昨日タイラーたちにやられたんだって?」
「まぁ……」
「返り討ちにしたか?」 
「してないよ!」
  はあ、とため息をつく。
「でもお前は一番の魔術師だろ?タイラーくらい余裕だろ?『闇の暗殺者』さん?」
  そしてディランにはレアンの秘密がばれている。……というか弱みを握られている。
「あのさ、その、『闇の暗殺者』ってやめてくれない?……恥ずかしい……」
「いいじゃん!カッコいいじゃないか!この学園にいるほとんどの生徒はお前を目指しているんだぜ?」
「そんなことないって。……はぁ、なんでそんな不本意な異名がついたんだろう……」
「かっこいいじゃん!俺も欲しいなあ、異名……」
「頑張ればもらえるよ」
  するとディランは嬉しそうに笑って、「よし、頑張ろう!」といった。



  そして教室についた。レアンたちのクラスは高等部一年C組。まだ誰も登校していない。 

  そしてお互いの席につくとディランが言った。 
「よし!レアン!やるぞ!」
「わかった」 
  するとディランが立ち上がり、手先に魔力を集め始めた。
「……どうだ?」
「うーん……確かに一定量に魔力は出てる、でも魔力量は少ないかな……もう少し出せる?」
「お、おう!」
  そして魔力を出すが、安定はしていない。
「ディランの課題はやっぱり、魔力量の増加だね。魔力が増えると、どうしても魔力操作ができなくなっちゃう」
「……はあ、やっぱりか……」
  肩を落とすディランにレアンは言った。
「頑張れ、ディラン」
  するとクラスメイトがだんだん登校してきた。
「おはよー、やっぱり早いね、二人とも」
  そういったのは、フローラ・パウエル。美人で、長い薄茶の髪を持っている。そしてレアンやディランとは違い、最上階に住んでいるか優等生。
「おはよー、フローラ」
「おはよう、パウエルさん」 
  するとフローラはニコリと笑う。
「何してたの?」
「魔法の練習」
「へえ、いいなあ、明日から私も混ぜて!」 
  するとディランは言いよどんだ。ディランがレアンに教えてもらっているのは、レアンの実力を知っているからだ。ここでレアンの本当の実力がばれてしまうのは避けたい。
  ディランがお断りの返事をしようとすると、レアンがきっぱり言った。
「いいよ」
「は?」
  思わずそう言ってしまったが、フローラは気づかなかったようだ。
「ほんと?やった!」
「じゃあ、明日、七時半、寮前に」
「うん!」
  そして上機嫌に席につくフローラ。フローラは優等生の中でもまれな、「実力で人を見ない人」なのだ。
  ディアンはこっそり前の席のレアンに聞いた。
「いいのか?」
「ああ。バレなきゃいいんだから」
「俺の心配を棚に上げてお前は……」
  そう言うと同時に先生が来た。
  レアンはディランにごめん、と手を合わせた。

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