愛と呼べるかもしれない境界線の狂気
あなたみたいに
「あなたみたいに愛せたら良いのに。」
「何を?」
「私を。」
  彼女はこのところ、こうして呟く事が増えた。
  この間も、
「あなたみたいに愛せたら良いのに。」
「何を?」
「世界を。」
その前は、
「あなたみたいに愛せたら良いのに。」
「何を?」
「季節を。」
そうやって、何度も彼女は呟いた。
始まりは些細なことだった。僕が好きなロックバンドについて、いつものように我を忘れて熱く語った時、同じように彼女は呟いた。
「あなたみたいに愛せたら良いのに。」
「何を?」
「人を。」
「僕はそんなに君を愛しているかな?」
  まるでこのやり取りに興味があるかのように、僕は彼女に向かって会話を投げ掛けた。しかし、彼女は魂の脱け殻ようにぼうっと何もない壁を見つめながら、何かを考えているようだった。
  そんな日が続いて、僕は彼女と別れた。意外なことに、別れを切り出したのは彼女からだった。その時何故か僕は、彼女はやっと自分と自分を取り巻く世界を、愛せるようになったのだと感じた。
  それから何ヶ月か経って、ふいに僕は思い出す、彼女が何度も呟いた言葉を。
「あなたみたいに愛せたら良いのに。」
「僕はそんなに愛しているかな。」
  そして僕は、彼女も世界も、季節も人も、少しも愛していなかったことに気が付いた。
「何を?」
「私を。」
  彼女はこのところ、こうして呟く事が増えた。
  この間も、
「あなたみたいに愛せたら良いのに。」
「何を?」
「世界を。」
その前は、
「あなたみたいに愛せたら良いのに。」
「何を?」
「季節を。」
そうやって、何度も彼女は呟いた。
始まりは些細なことだった。僕が好きなロックバンドについて、いつものように我を忘れて熱く語った時、同じように彼女は呟いた。
「あなたみたいに愛せたら良いのに。」
「何を?」
「人を。」
「僕はそんなに君を愛しているかな?」
  まるでこのやり取りに興味があるかのように、僕は彼女に向かって会話を投げ掛けた。しかし、彼女は魂の脱け殻ようにぼうっと何もない壁を見つめながら、何かを考えているようだった。
  そんな日が続いて、僕は彼女と別れた。意外なことに、別れを切り出したのは彼女からだった。その時何故か僕は、彼女はやっと自分と自分を取り巻く世界を、愛せるようになったのだと感じた。
  それから何ヶ月か経って、ふいに僕は思い出す、彼女が何度も呟いた言葉を。
「あなたみたいに愛せたら良いのに。」
「僕はそんなに愛しているかな。」
  そして僕は、彼女も世界も、季節も人も、少しも愛していなかったことに気が付いた。
「愛と呼べるかもしれない境界線の狂気」を読んでいる人はこの作品も読んでいます
-
『 悲しい雨 』
-
3
-
-
どうしょうもない男に
-
2
-
-
話の世界の話
-
1
-
-
人間を知らない人間は人間を知る人間より人間たりうるのか
-
2
-
-
独りの蟲
-
4
-
-
今から十分以内に死んでください
-
7
-
-
【書籍化決定】前世で両親に愛されなかった俺、転生先で溺愛されましたが実家は没落貴族でした! ~ハズレと評されたスキル『超器用貧乏』で全てを覆し大賢者と呼ばれるまで~
-
38
-
-
本物は誰だ
-
3
-
-
魔王の息子と勇者になろう【凍結中】
-
6
-
-
脳髄夢遊録
-
3
-
-
双子の大神
-
3
-
-
遠い月まで
-
2
-
-
ろーともっ!
-
1
-
-
梨
-
14
-
-
ワールド・ワード・デスティネーション
-
4
-
-
俺が過保護な姉の前から姿を消すまでの話
-
10
-
-
#140文字小説
-
12
-
-
姉さん(神)に育てられ、異世界で無双することになりました
-
37
-
-
永遠の抱擁が始まる
-
16
-
コメント