第五十七話　銀の宿

「ここかな？」

「ここだね。」

そこには、窓やドアが外れたり屋根の一部が吹き飛んでいる宿があった。

「すいませーん。」

俺はドアがあったであろう位置から家の中を覗き込みながら言った。

ーーーガタン！！！ーーー

奥からすごい物音が聞こえてくる。

「あら！可愛らしいお嬢ちゃんじゃない！どうしたんだい？」

奥からでできたのは、エプロンをかけたいかにも優しそうなおばさんって感じの人だ。どうやらこの人がドルトの奥さんなのだろう。

「えーっと。私の名前はルイって言います。こっちは姉のマリです。復興の手伝いをするためにこの領都にきたところ、ドルトという方にここを紹介されました。」

「まあ！ドルトっていうのは私の夫ね。それにしても、えらい子達ねえ。二人で領都まできたの？」

「はい。領都で冒険者にでもなろうかとおもっいたところに、今回のことが起きたので。」

「それで、復興に？」

「はい。」

「えらいわねぇ。君たち何才？うちの子も見習って欲しいわ！」

「私が16才で、ルイが14才です。」

「そう！うちの娘はカナンって言ってね、15才よ。仲良くしてあげてね。今は、買い物に行ってくれてるからまた後でね。」

「はい！」

「それで、お手伝いのことなんだけど、あとは、ドアと窓を作るのと、客室のお掃除くらいしか残ってないの。うちはそれほど被害を受けなかったし、この1週間である程度の修理はできちゃったから。」

「うーん。マリ姉さんどうする？」

「じゃあ、全部やろっか。」

「まあ！ありがとう。そうだ、よかったら今日泊まって行かない？もちろんタダよ。」

「お願いします。」

「まあ！可愛いお客さんができて嬉しいわ〜。あ、それと、私の名前はアルダよ。よろしくね、お二人さん。」

「「よろしくお願いします。」」

早速、ドア作りを始めようか。どうせならオシャレなのにしたいな。

「ドアと窓の材料は庭にあるわ。自由に使って頂戴。」

「わかりました。」

そう言って、俺たちは庭に行く。

そこには、山積みにされた大量の木材と、釘や、金槌などの道具があった。

「これなんて使えそうじゃない？」

桜は良さそうな木材をいくつか取ってくる。

「こういうものづくりも楽しそうでいいな。」

「うん。私も好き。こういうの。」

それから、俺たちはドアを作るのに没頭した、、、。

「お二人さん。昼食食べるかい？」

「いただきます！」

「私も！」

正直、こちらの世界のご飯って魔の森で作った野生的な料理しかなかったから、楽しみだな。

「それにしても、もうドアが完成するなんてすごいねぇ。それにとても立派だよ。ありがとねぇ。」

「いえいえ、私たちも楽しかったですから。」

「そういえば、娘さん遅くないですか？」

「そうなのよ。とっくに帰ってきてもおかしくないのに、、。街がこんな状態で、治安が悪いから心配だわ。」

たしかにな。少し心配になった俺は、空間支配で何かトラブルに巻き込まれてそうな女の子を探す。

ん？なんだ？茶髪の女の子が3人の男達に囲まれてるぞ。

「もしかして、娘さんって茶髪ですか？」

「え、ええ。夫譲りの茶色だけど、、。」

「そうですか。ちょっと私探してきます！」

そう言って、すぐに家の外に出て、空間転移をする。

「ち、ちょっと！どこ行くの！」

「大丈夫ですよ。ルイああ見えて強いですから。」

「そ、そうかい、、。でも心配だわ、。」

はあ。この世界でもこういう奴はいるのか。

「お嬢ちゃん。ちょっとだけでいいからさ！」

「ね！遊ぼうよ！」

俺は3人の背後に立つ。

「はあ。ため息しか出ないよ。君たちには。」

俺がそういうと、3人が一斉にこっちを向く。

「なんだt

どうせ"なんだてめー"とか言いたかったんだろうけど。俺はそんなこと言い終わる前にぶん殴る。もちろん力は抑えたよ！本当はぶっ飛ぶところを空間支配で飛ばないようにすることで、3人の男達はその場でぶっ倒れた。

こうすることで、目立たずに処理できるってわけだ。

「さ、家に帰ろうか。」

目をぱちくりさせながら、カナンはこちらを凝視する。

流石に、まずったかな？14才の女の子ができる芸当ではないことは理解している。

「す、すごい！どうやったの今！？」

カナンは、すごい勢いで俺の両肩を掴みながらいう。

「え、えーっと。昔、お父さんに武術を教わったんだ。」

「へー。すごいね！私のお父さんなんか、太ってて全然戦えないのに！」

たしかにドルトとかいうおっさん結構お腹膨らんでたな。

「それはそうと、助けてくれてありがと！」

「どういたしまして。じゃあ、お母さんも心配してるだろし、銀の宿に帰ろうか。」

「ええ！なんで知ってるの！？私の家！」

「ちょっとね。今お世話になってるんだ。しばらくは住むことになると思うよ。よろしくね。」

「え！じゃあ、しばらくは一緒にいられるってこと！やったー！お友達になろ！」

明るくて元気ないい子だな。

「うん！私のお姉ちゃんとも仲良くしてね！」

「お姉ちゃんもいるんだ！いいなあ。私も姉妹が欲しかったなあ。」

こうして、カナンとの出会いを果たすのだった。