草食系男子が肉食系女子に食べられるまで

Joker0808

第19章 クラスメイトと雄介 6

「騒がしいと思って来てみれば……岩崎、またお前か」

「な、なんだよ…北条、別に俺は本当の事を言ってるだけだぜ……」

「なら、何もこんな大勢の人の前で言わなくてもいいよなぁ~」

北条は岩崎と呼ばれた、茶髪の男子生徒の肩を強く掴む。
その気迫に、周りの生徒も思わず後ずさる。

(この人も俺の知り合いなのだろうか?)

雄介はそんなことを考えながら、北条と岩崎の会話を黙って聞く。

「岩崎、また俺と雄介に痛い目にあわされたいのか?」

「な、なに言ってんだ……今村は今は記憶が……」

「記憶なんてなくても、こいつの根っこは変わってない。俺にはわかる……痛い目にあいたくなかったらさっさと行け! 目障りだ」

そういって北条は岩崎から手を離す。
雄介は北条の言葉が気になった。
一体自分と北条はどういう関係だったのか、記憶をなくす前は友人だったのかなど、聞きたいことがいっぱいあった。

「ちっ……別に俺は間違ったことは言ってないからな……」

捨て台詞を吐き、岩崎は他の生徒と共にその場を立ち去った。

「まったく…あいつも懲りない男だ……」

「助かったよ北条、ありがとな」

「気にするな山本。あいつもただ雄介に仕返しがしたいだけだろう……」

北条は慎を見た後に、視線を雄介の方に向ける。
そこで雄介は改めてしっかりと北条の顔を見る。
しかし、やはり思い出せない……。

「久しぶりだな……と言っても覚えていないのか……」

「えっと、ごめん……君が誰なのかもわからないんだ……。でも助けてくれてありがとう」

「フ……気にするな、お前と俺の仲だ……」

どこか遠い目をしながら話す北条。
一体この男と、自分はどのような関係なのか、雄介は不思議に思う。

「少し遅れたが、退院おめでとう。俺は北条真人(ホウジョウマサト)だ」

「うん、よろしく北条君」

「……君付けはやめろ……なんだか気持ち悪い……」

「みんなから言われるよ、昔の僕はこんな性格じゃないのかな?」

「確かに性格は大きく違う……だが、お前はお前だ」

笑みを浮かべながら北条は雄介に言う。
雄介はそんな北条の言葉を聞き、この人も良い人なんだと感じる。

「それより北条……柔道部の顧問が……」

「ん?……あ………」

北条の後ろには、いつの間にかやってきた柔道部の顧問の先生が柔道着姿で、仁王立ちしていた。

「北条……筋トレはどうした?」

「先生……実は友人が……」

「またか! お前の友人はどれだけトラブルにあえば気が済む! 戻ってきたんだ! しっかり練習に出ろ! お前は全国にも通用する力を持っているんだぞ!」

「いや……俺は別に全国とかは……」

「いいから行くぞ! 今から先生と乱取りだ!」

そういって柔道部の顧問の先生は、北条を連れてかえっていった。
もっと聞きたいことがいっぱいあった雄介だったが、それが叶わず残念に思う。

「あいつも相変わらずだな……」

「最初は今村の事を敵視してたのにな」

慎と堀内が笑いながら言う。
雄介は昇降口に向かう道すがら、二人に北条と自分の事を尋ねてみた。

「あぁ、最初あいつとお前は敵同士っていうか、なんていうか……とにかく仲が良い感じじゃなかったんだよ」

「そうなんだ……でもさっき会った感じだと、結構親しい感じだったけど…」

「それが、俺もよく知らないんだが、北条が急にお前の事を気に入り始めてな」

「へ―、それも思い出せると良いな……」

雄介はふとそんなことを言う、するとほかの5人が悲し気な目で雄介を見る。

「雄介、さっきの事もだけど、あんまり気にすんなよ?」

「そうだよ、雄介は被害者なんだし!」

本人以上に雄介の事を心配している5人は雄介を励ますように言葉をかける。
しかし、雄介は先ほどの事もなにも気にはならなかった。
あからさまに自分を陥れようとする岩崎にはさすがにイライラしたが、それ以外に雄介は何も気にはならなかった。

「大丈夫だよ。それより早くいこうよ」

「あ、あぁ……」

雄介の事を心配する5人だったが、雄介の何も気にしていない様子が逆に心配になってしまう。
雄介たちはそのままバッティングセンターに向かった。

「いっくぜー! ホームラ~ン!」

「当たってないわよ~」

「あれ?」

雄介たちはバッティングセンターでバッティングを楽しんでいた。
今は堀内がバッターボックスに立ち、向かってくボールにバットを振っていた。

「おかしいな? おっちゃーん、このバット壊れてるよ~」

「壊れてんのはあんたの頭よ……はぁ、貸してみなさい、私がやってみる」

「いや無理無理、俺だって当たんねーんだぜ?」

堀内からバットを受け取り、入れ替わりでバッターボックスに立つ堀内。
どうせ当たらないだろう、堀内はそう思っていた。
そう思っていた堀内の予想は大きく裏切られ、パコーンといい音がする。

「ね、当たるでしょ?」

「え、嘘ぉぉ!! なんで!?」

「まぁ、センスの問題ね」

「クッソォ! 俺もう一回やる!」

そういって堀内はまたしてもバッターボックスに立つ。
雄介と慎はそんな二人の様子をベンチから眺めていた。

「楽しそうだね…」

「あぁ、そうだな。しかし、江波はやるもんだな…あっちはかすりもしてないのに……」

そういう慎が見ているのは、このバッティングセンターで一番速度の遅いバッターボックスに立つ優子の姿だった。
先ほどから見ていた雄介と慎だが、一回も当たったところを見ていない。
優子がバッターボックスに立って、すでに30分が経過しようとしているのに、かすりもしていない。

「えい! ……あれ?」

「優子、目をつぶってたら当たらないわ」

「そう言われてもぉ~」

沙月からアドバイスされるも上手くいかない様子の優子。
そんな様子を見ながら苦笑いするする雄介と慎。
二人はすでに一通り打ち終わり、ベンチで休憩中だった。

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