草食系男子が肉食系女子に食べられるまで

Joker0808

第17章 帰宅と登校12

「……やりすぎです、大丈夫ですか? 雄介さん」

「あ、ありがとう凛ちゃん……」

雄介から優子と織姫を引きはがしたのは、意外にも凛だった。
凛は酒を飲んでいない様子で、いつも通りの落ち着いた様子で雄介に語りかけてくる。

「トイレから戻ったらなんですか、この異様な雰囲気は……」

「いや、俺も今さっき戻ってきて……」

「そこの野獣に捕まったわけですね……」

「う、うん」

床に寝転がる織姫と優子を指さして凛は言う。
確かに色んな意味で野獣のような感じだったなと、雄介は思いながら、顔を赤くして答える。
凛はそんな雄介の様子が面白くなく頬を膨らませて雄介に皮肉っぽく言う。

「もしかしてお邪魔でしたか?」

「え! そんな事ないよ、助かったよ」

「どうでしょうね? 顔真っ赤ですし……」

雄介は織姫に言われて、自分の頬を触る。
顔の熱が自分でもわかるほどに熱くなっているのを雄介は確認し、凛の言葉を必死に否定する。

「こ、これは違うよ! ただ単に恥ずかしかっただけというか……」

「……そうですか」

凛はプイっとそっぽを向き、不機嫌になってしまう。
雄介は何とか凛の誤解を解こうと、言葉を考えるが良い言葉が浮かんでこない。
そんな時、凛が雄介に向かってボソッとつぶやく。

「……私は、入り込む隙間もありませんか……」

「え?」

雄介は凛の言葉の意味が一瞬分からず考え込む。しかし、言葉の意味は直ぐに分かった。
凛の様子を見ていれば、凛が自分に対してどんな感情を抱いているのか、雄介は分かり始めていた。
凛は他の3人に比べてそこまであからさまに態度には出さないかったが、今日の様子や以前雄介の病室にお見舞いに来た時の様子から、雄介は何となくそうなんじゃないかと思っていた。

「凛ちゃん……その答えは申し訳ないけど、今の俺にはわからない……」

「……」

凛は雄介の言葉を静かに聞いていた。

「前の自分が、凛ちゃんも含めた四人にどんな感情を持っていたのか、今の俺にはわからない……それに、俺自身がそこまで他人に好かれるような人間だったのかもわからないんだ……」

「……そうですよね……」

「でも、これだけは分かるよ」

「え……」

「俺が……自分がこの場に居る皆の事をどれだけ大切にしていたか……その中には順位なんてないよ。だから、俺にとって凛ちゃんも大事な人の一人なんだ」

言われた凛は、思わず顔を赤らめて俯く。
やっぱりこの人は記憶を無くしても何も変わらない、凛はそう思いながら笑みをこぼし、雄介の顔を見て笑顔で言う。

「私、雄介さんが好きでよかったです!」

「……そ、そっか…」

雄介は、そんな笑顔の凛に対し顔を赤くして答える。
直球で言われてしまうと弱い雄介は、凛から目を逸らす。
凛はそんな雄介の顔を覗き込むようにして見続ける。

「フフ、ドキッとしました?」

小悪魔のような表情を浮かべながら、凛は悪戯っぽく言う。
こういうところは兄弟そろって似ていると、雄介は思いながら、凛の問いに答える。

「…正直、少し……」

「じゃあ、私にもまだ……チャンスありますね!」

凛はそう言うと、雄介の腕にしがみ付き引っ張って行く。

「ど、どうしたの? どこか行くの?」

「はい、ここはお酒臭いですし、皆寝ちゃってますし、雄介さんの部屋でお話したいです」

「それは良いけど……なんで俺の部屋?」

「落ち着いて離せる場所が雄介さんの部屋しかないですし、それに……」

「それに?」

なぜか頬を赤らめだす凛、雄介はなぜかさっきまでの良い話の雰囲気から、徐々に嫌な予感に変わっていくのを感じていた。
凛の雄介を掴む力が強くなっていく。

「雄介さんのお部屋なら……ベッドで何をやっても平気ですから~」

そう言う凛の顔は真っ赤に赤く染まり、少しお酒臭かった。
そこで雄介は気が付いた。凛もまたお酒を口にしており、しかも酔いがここに来て回り始めたのだと……。

「り、凛ちゃんストップ! やめよう! ここに居よう!」

凛の様子に気が付いた雄介は、足を止め凛から離れようとするが、凛は雄介を離さない。
顔を真っ赤にさせながら、ものすごい力で、雄介の腕を引っ張っている。

「嫌です! ぐずぐずしてたら雄介さんの貞操までもっていかれかねません……ここは私が先手を打って……」

「女の子がそう言う事を言っちゃダメ! 慎、君も何か……」

何か言ってくれ、そう言おうと慎を見た瞬間、雄介は言葉を失った。

「アハハハハ! 山本が椅子になった! イケメンの椅子だぁ~、あははは!」

慎は四つん這いになり、完全に沙月の椅子になっていた。
屈辱そうな顔で涙を堪え、慎は歯を食いしばり、雄介に視線を送る。
雄介はその視線の意味を察し、助けなどを頼める状況ではない事を察する。
とは言っても、雄介も色々とピンチな事に変わりはない、雄介は頼れる相手が居なくなった以上、自分で何とかしようと凛を説得し始める。

「凛ちゃん、そんなお酒の力でそんな事をしても後で絶対後悔するよ!」

「大丈夫れすよ~、私は後悔なんてしません、それに……」

凛は更に顔を赤くし、恥ずかしそうに雄介に言葉を続けた。

「もう子供の名前も考えてます!」

「駄目だこの子! 助けて慎!!」

必死に頼む雄介に対し、慎から「むしろこっちを助けろ!」と叫びにも似た声が聞こえてくる。

「雄介~、なにしてるの?」

「う~ん、私も雄介にくっ付きます~」

「ユウ君~、お姉ちゃんと子供作ろ~」

そんな事をしている間に、寝て居たはずの優子、織姫、里奈が目を覚まし、雄介と凛の元にゆっくり近づいてくる。
まるでゾンビ映画のゾンビのように迫ってくる三人に、雄介は恐怖冴え感じていた。

「ま、待ってくれ! 皆冷静に……」

「雄介さんは私とこれからベッドインなんです~、邪魔しないでください!」

「何言ってるの凛ちゃん!」

凛の言葉に、一気に三人は反応し雄介に迫ってくる。

「ベッドイン~? それは私がするの!」

「またベッドですか~? 雄介と一緒に寝るのは気持ちいかもしれませんね~」

「ユウ君、お姉ちゃんとベッドで……ウフフ」

一気に迫ってくる女性陣4人に、雄介は最早恐怖鹿感じず、悲痛な叫びをあげる。

「ぎゃああああああ!!!!」

この騒ぎは夜まで続き、その後は皆酔いから冷めたが、酒を飲んだ全員記憶が無く、雄介と慎は絶対にこのメンバーに酒を飲ませてはならないと痛感した。

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