片思い片手間ヒーロー

Joker0808

第2話




純が怪人と戦う事になったのは、もう半年も前の事だった。
怪人出現の警報が流れ、純もシェルターに逃げていた時の話しだった。
逃げくれた純は、怪人に襲われ絶対絶命だった。
そんな時に、空から光の柱が下りてきて神が現れ、純を助けてこう言ったのがきっかけだった。

「君でいいや、命救ってあげるから、世界守って」

「なんでそんな重要そうな事を、寝ながらだるそうに言うんだよ!!」

これが、純と神様の初めての会話だった。
その後、純は神様の力によって、怪人と戦う為の力を手に入れた。

「で、俺はいつまで戦えば良いんだ?」

「う~ん、まぁこの世界が平和になるまで?」

「ざっくりしすぎだろ……」

「まぁ、装展すれば大抵の怪人には勝てるから安心してよ。それに、ちゃんと報酬も用意するし」

「安心出来るか! 俺は普通の一般人だぞ! それに、そう言う役目って神様の仕事じゃないの?!」

「あぁ、僕たち神って、あんまり人間世界に干渉出来ないんだよね、僕たちは君たちをあくまで見守るだけで、直接救っちゃ行けないんだよ」

「そう言っても、もっと人を選べよ! なんで一般の高校生に重大な任務を任せてんだよ!」

純はこのとき、神様に反発しまくった。
純は変わらない日常と言うものを愛しており、こんな非日常など求めて居なかったからだ。 しかも、純には大きな、目標もあった。

「そもそも、俺には!」

「あぁ、知ってる知ってる、好きな子が居るんでしょ?」

「!? な、なんで……」

「まぁ、一応神だし? こういうのって直ぐ調べられるんだよねぇ~」

神様は、右手に持った分厚い本をめくりながら顔をニヤニヤさせて純に話す。

「へぇ~、長い片思いだねぇ……もう脈とかそう言うレベルじゃないね~」

「うるせぇな! ほっとけよ!」

「相当なヘタレだね君……なら片手間で良いからさ」

「は?」

純は神様の言葉に驚き間抜けな声を出す。
世界の聞きを救うとか壮大な事を話しているのに、それを片手間で良いとはどういうことなのだろうか?

「だからさ、そこまで言うなら、君は恋を優先して良いよ? その片手間で怪人の相手をしてよ」

「良いのかよ! 言っちゃ何だが、世界の危機と俺の片思いを比べちまったら、世界の方が大事だろ!?」

「大丈夫大丈夫、結構そんな感じで大丈夫な感じになってるから」

「良いのかよ……」

「で、やるの? やらないの? やらないなら、君は死ぬけど?」

「え! 俺死ぬの?」

かなり重要な事をあっさり言う神様に、純は怒りさえも覚える。
そう言う重要な事は先に言えよ! なんて事を思いながら、純は神様の話しを聞く。

「まぁ、命助けるのって神様に取っては結構な重労働でさ、救うってなったら結構神パワーを使うんだよ」

「か、神パワー?」

「君、さっきの怪人の攻撃で、死んでるんだよ?」

「え! だからこんな半透明なの?!」

「うん、僕はその命をなんとかつないでるってわけ、君を生かすも殺すも僕の気分次第ってことだよ」

「神様ってそんな残酷なの!?」

「まぁ、要するに、君に最初から選択肢は無いってわけ」

「なら最初からそう言えよ!!」

「一応、確認しなきゃと思ってね、じゃとりあえずよろしく」

「……最悪だ……」

純は自分の置かれた状況に絶望する。
今まで愛していた平穏が消え、これからは非日常的な生活が始まると思うとため息が出てくる。

「じゃあ、報酬はその都度君にあげるよ、月末締めの10日払いで良いかな?」

「バイトか!!」

こんなやりとりの果てに純は世界を守るヒーローになった。





「はぁ……ここまで来れば大丈夫だろ」

純は黒い怪人を倒した後、神様と共に純は町中の路地に身を隠して神様と話しをしていた。
「今回は随分早かったね~、瞬殺瞬殺~」

「あぁ……いつまで続くんだ…こんな生活」

「まだ半年じゃないか? ほら頑張れ~」

「お前は本当にむかつくな……」

その場にしゃがみ込み、純は戦いで消耗した体力を回復する。

「あ、そういえば今回の報酬を渡さないとね、はい」

「ん、どうも」

神様は純の右手に光るコインを二枚置く。
このコインが純の報酬であり、怪人を倒すたびにもらえる報酬だ。
純金で出来ている訳でもないし、価値のある物でもない、しかしこのコインには秘密があった。

「半年だし、随分貯まったんじゃない?」

「あぁ大体200枚位か?」

「おぉ、そろそろ何かに使う気になったかい?」

「使わねーよ、別に困ってねーし」

「何だよ~、片思いを応援するつもりでこの報酬システムにしたのに~」

「仕方ねーだろ、使う意味が見あたらないんだよ」

このコイン50枚で、神様になんでも願いを叶えてもらえるという権利をもらうことが出来る。
しかし、なんでもと言ってもモラルに反しない事と、人の感情や気持ちを操作するような願いは受付られ無いようになっている。

「たとえばさ~あの子とお近づきになりたい! とか願えば、僕がきっかけを作ってあげることだって出来るんだよ? なんでそれをしないかなぁ~君は」

「そういうのはなんか違う気がすんだよ、それに……きっかけくらい、自分でなんとか……」

「そうは言うけど、さっきのゲームセンターでも結局は声は掛けられないし~」

「あぁ! もう良いだろ! IDも倒したし、俺は帰る」

純はそう言って、家路に付こうと大通りに出る。
IDの出現で、街は混乱していたらしく、今も警察や自衛隊による警戒が行われていた。
シェルターからは、避難していた人たちが出て来ており、自体は収束に向かっていた。
周りの様子を確認しながら、純はあの場にいた姫嶋のことを考えていた。
ちゃんと避難しただろうか?
怪我はしていないだろうか?
自分の正体がバレては居ないだろうか?
不安を上げればキリが無かった。

「ただいまぁ~」

純は家に帰宅した。
とは言っても、純以外には誰も住んでは居ない。
純の両親は、仕事の関係で家にあまり帰る事が無い、そのためほぼ一人暮らしのような感じで、純は5LDKのマンションに一人で生活をしていた。

「はぁ……なんか空しいな」

「まぁ、お帰りを言ってくれる家族が居ないのは寂しいよねぇ~」

「お前はいつもまで居るんだよ!」

「今日は暇だからね、人間の世界のテレビを見ていこうと思って」

「さっさと帰れ!」

「まぁまぁ、良いじゃないか。それに一人は寂しいだろ?」

神様は突然現れ、突然消える事がほとんどだった。
ようが終われば、天界に帰って行くし、用があれば純の元にやってくる。
いつもならIDを倒した後に報酬を渡して居なくなるのだが、今回は違うようだった。

「いいから帰れぇぇ!!」

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