好き同士ってめんどくさい

Joker0808

第54話




「ここか……」

「なんかお屋敷みたいだな」

俺とユートは森の奥の方まで来ていた。
森の奥には、お屋敷があり、なんだか不気味な感じだった。
この中に彩は居るのだろうか?

「とりあえず中に入ってみようか」

「あ、あぁ……」

俺たちは息を殺し、静かに屋敷の中に入る。

「四人……いや五人だな……気配を感じる」

玄関ホールに入り、壁沿いを歩きながらユートはそんな事を呟く。
彩とレイミー以外にも後三人居るということか……。
「妙だな……」

「何が妙なんだ?」

「人数が少なすぎる……もっと警備に人が居ても良いと思ったが……」

「そうなのか?」

俺は敵が四人も居るだけで怖いけどな……だって、普通に考えて俺たちの倍の兵力だよ?
まぁ、兵力って良いのか分からないけど……。

「奥に行こう……彩ちゃんが居るかもしれない」

「あぁ……」

俺たちは静かに奥に進んで行く。
屋敷の中は異様な静けさだった。
細心の注意を払いながら、俺たちは一個一個部屋のドアを開けて彩を探して行く。

「居ないな……」

「そうだね、もう少し奥かもしれない」

「そうだな、早く行こう」

奥に行くにつれて物騒な物が増えていった。
剣に槍、斧に鉈など色々な種類の武器が保管してある部屋に、変な液体が多く保管された部屋など、様々な部屋があった。

「なんだこの部屋?」

「書庫のようだけど……並んであるのは魔術書だね」

「魔法書?」

次に来た部屋は壁一面が本に囲まれた部屋だった。 中は薄暗く、この部屋が一番不気味だった。

「あぁ、その名の通り魔法を封じ込めた書物だよ。読んだだけで魔法を取得出来たり、呪いをかけ方を記したものもあるらしいよ」

「へぇ……そうなのか」

俺はそんな事を呟きながら、近くにあった一冊を手に取ってページを開く。

「あ! 下手に触っちゃダメだよ!!」

「え……うわっ!!」

ページをめくった瞬間、急に本が光出した。

「ま、まぶし!!」

「は、早くページを閉じて!!」

「くっ!」

俺は言われた通り、魔法書のページを閉じる。
ページを閉じた瞬間、本から出ていた光は消えた。

「な、なんだったんだ?」

「あんまり軽率な事をしないでくれ! バレたら大変だ!」

「わ、悪い……気になって」

「まったくもう……」

確かに今のは俺が悪いな……ここは既に敵地、見つかって囲まれたら大変だ。

「ここにも彩は居そうにないな……」

「そうだね、次に行こ……ん?」

ユートは急に言葉を止め、一冊の本に視線を向けていた。

「どうした?」

「これって……もしかして!!」

「あ、馬鹿!!」

「え?」

ユートは急に一冊の本に飛びついた。
しかし、ユートが本を少し動かした瞬間、本が大きな音を出し始めた。

「ば、馬鹿!! 何やってんだ!」

「す、すまない……えっと……どうやったら直るのかな?」

「俺が知るか! 人に偉そうな事言っておいて自分はそれか!!」

音はどんどん大きくなっていく。
このままでは俺たちの存在がバレてしまう。

「もう燃やしちまえ!!」

「ダメだ! この本は持って帰る!」

「アホな事言ってんじゃねー!! ガキか!!」

「違うんだ! この本は……」

「そこで何をしている!」

ユートがそう言いかけた瞬間、部屋の扉が勢いよく開け放たれた。
槍を持った全身緑色の魔物……俺の予想だと……多分ゴブリンだろうな……。

「クソ! 見つかったか!」

「お前がアホなことしてるからだろ!」

「君も同じような事しらだろ!」

「注意した奴が同じ失敗してんじゃねーよ!!」

俺たちが口喧嘩をしていると、槍を持ったゴブリンは、持っていた槍をこちらに向かって投げつけてきた。
「貴様! まさか、英雄……ユート・ディリアスか!!」

「え? 誰?」

「あぁ、僕の本名」

「あぁ、そういうこと……なんか良い難いな……」

「今はそんな事どうでもいいだろ!」




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