好き同士ってめんどくさい

Joker0808

第51話




彩が連れ去られた。
アーネは俺に待機しているように言ったが、俺は落ち着いてなんて居られなかった。
彩が攫われたのにジッとなんてしてられない!
しかし、部屋のドアには昨晩アーネが掛けた魔法が掛けられており、部屋の外に出る事が出来なくなっていた。

「クソッ!! 一体どうしたら……」

アーネやユートを信用していない訳ではないが、やはり不安だ。
居ても経ってもいられないとはこの事だ。
俺は何をするでも無く、部屋の中をウロウロする。

「あぁぁ!! クソッ!! なんで俺は待機なんだよ!」

一人、部屋の中でそう叫んだところで状況は変わらない。
こうしている間も彩が何をされるか分からない。
なんとか部屋を抜け出さなければ……。

「窓は……無理だよなぁ、開かないし……ここ二階だし……」

うーむどうしたものだろうか……これではトイレに行きたい時はどうすれば……って違う!!
早く抜け出して彩を助けに行かなければ!!

「仕方ない……かくなるうえは……ドアを破壊するか……」

「それはやめてもらえる? 修理が大変だから」

「あ! アーネ! ユートから連絡は!?」

「なんとかするって連絡があったわ……でも……レイミーの足取りが掴めないから……少し時間が掛かるかもね……」

「そ、そうか……やっぱり俺も!!」

「悠人君が行ったところで何も出来ないでしょ?」

「それは……そうだが……」

でも、だからといって何もしないでジッとなんてしていられない!

「でも! それでも俺は!!」

「ダメよ、下手をしたら命に関わるわ……それに貴方は魔法も使えないし……戦いだって……」

「格闘技は結構やってきたぞ!」

「それでもダメです! 貴方は実践経験がありませんし……」

「ジッとなんてしてられねーんだよ!!」

「でも……悠人にもしもの事があったら……」

アーネが悩んでいると、アーネの背後に魔方陣が浮かび上がる。

「アーネ! 状況は!?」

「ユート! もう戻ってきたの?」

魔方陣から現れたのはユートだった、鎧を着込み、右手には剣を持っている。
アーネはユートに状況を説明する。

「……なるほど……レイミーが……」

「えぇ……なぜ彩を攫ったのか……」

「戦場にもレイミーの姿は無かった……だが、戦場で有力な情報を手に入れてきた」

「ど、どんな情報だ!?」

俺はユートの言葉に身を乗り出して尋ねる。

「反乱軍の一人が行っていた、レイミーは別任務で北の山のふもとにある反乱軍の隠れ家に居るらしい」

「だったら、早くそこに!!」

「分かってるよ、幸い戦況は圧倒的に軍が優勢だし、ゼリウスにまかせてあるからね……」

「ユート、気を付けてね」

「あぁ、じゃあ行ってくる」

「待ってくれ! 俺も!!」

俺はユートにそう言う。
ユートについて行けば、アーネを助けられる。
でも……アーネが反対するか……いや、それでも俺は!

「悠人……」

「……頼む」

俺はユートに頼んだ。
ユートは俺の目を見つめる。

「……よし、行こう」

「え? ユート! それは危険よ!」

「だろうね……でも僕も悠人と同じ立場なら……同じ事を言っていただろうね……だから分かるんだ、彼の気持ちが……」

「でも……」

「大丈夫さ……僕は僕を信じてる」

ユートはアーネを説得し、俺に武器と鎧を貸してくれた。

「これを着てくれ、何があるか分からないからね……」

「鎧か随分重いんだな」

「魔法を掛けて軽くするから大丈夫だよ」

準備をえた俺とユートは、レイミーがいるであろう北の山のふもとに向かう。
山までは転移魔法という魔法で一瞬で移動し、そこからは徒歩で隠れ家を探す。

「どこだ? どこにあるんだ……」

「悠人、あまり焦らない方が良い、ここはもう敵地だ!」

「好き同士ってめんどくさい」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「恋愛」の人気作品

コメント

コメントを書く