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好き同士ってめんどくさい

Joker0808

第29話

「毎日大変そうだな」

「うん、仕事だから」

俺は彩と話しを始めた。
話しと言っても雑談のようなもので、言ってしまえばどうでも良い話しだ。
だが、こうやって彩とちゃんと話しをするのは何年ぶりだろうか……。

「……へぇ~じゃあ、あの先生ズラなの?」

「あぁ、今日良く見てたら、なんか生え際が不自然だった」

「私も明日見てみよ」

「後頭部が分かりやすいぞ」

本当にどうでもいい話だが、そんな会話がなんだか凄く楽しかった。
懐かしい感覚を覚えながら、俺は彩に言う。

「この前の写真集……良かったぞ」

「そ、そう? ど、どうせ水着のグラビアが載ってたからでしょ!?」

「いや……それ以外も……良かった……その……可愛かった」

「なっ……ば、馬鹿!」

「なんでだよ! 褒めてんだろ!」

彩は頬を赤く染め、俺に背を向ける。
あの写真集は良かった。
彩の可愛さが十分に引き出されていた。
三冊買って良かったと思えた品だったが、本人を目の前にすると、やはり本物が一番だと言うことを気づかされる。

「ど、どうせエッチな目で見てたくせに!」

「そ、それは……否定出来ない……」

「変態!」

「おいやめろ、女子からのその言葉は結構心に刺さる」

「だ、だって……本当の事でしょ!」

「褒めただけだろ……」

褒めたのに、なんで変態扱いされなければいけないんだ……まったく女心は分からない。

「ね、ねぇ……」

「ん? なんだ?」

「今度の私のライブ……来てくれるの?」

「あぁ……行くつもりでは居るんだが……」

そのライブのチケットは正直手に入れられるか分からない。
彩のライブは毎回競争率が激しい。
ファンクラブの会員でも中々手に入れる事が出来ない。
俺は毎回ネット予約が開始されて直ぐに、ホームページの予約画面を連打するが、それでもギリギリ取れるか取れないかだ。

「正直分からないな……お前のライブのチケット……人気だし」

「そっか……あ、あのさ……」

「なんだ?」

「チケット……あげようか?」

「え!? マジで!!」

俺は思わず声を上げてしまった。
転売すれば、約三倍の値が付くと言われるほどのチケットだ。
そんなプレミアチケットが貰えるならば、こちらとしては凄く嬉しい。
まぁ、絶対に売らないけど。

「友人席って取れるから、取って上げる」

「良いのかよ! サンキュー!!

あまりのうれしさに俺は思わず彩の手を握る。

「あ……」

「マジでありがとな!」

「う、うん……い、良いよ……」

俺は彩にお礼を言った後で気がついた。
思わず彩の手を握ってしまった。
最近は手を握るなんてまったく無かった。
しかも、俺たちはもう子供では無い。
高校生の男女が手を握るなんて、少し意味が変わってきてしまう。

「わ、悪い……」

俺はそう言って、彩の手から自分の手を離す。
すると、驚く事に今度は彩が俺の手を握ってきた。

「も、もう少しだけ……握ってて良いわよ……」

「お、おう……」

そういう彩の顔は真っ赤だった。
俺に顔を見られたくないのか、少しだけ俯き気味だったが、それでも分かる程に彩の顔は赤くなっていた。
「ねぇ……学校でも話したいよ……」

彩は顔を俯かせながら、ぼそっとそう言った。
俺だって彩とは同じ気持ちだ。
だけど……それで彩の仕事に支障をきたしては大変だ。
だから俺は……。

「お前さぁ……俺なんかと仲良くしてたら、イメージダウンだぞ……それにお前は友達多いだろ? 俺なんかと話さなくても……」

「そうじゃなくて……なんか、嫌なんだもん」

「何がだよ……」

「アンタが西井さんと話してるのが……」

俺は彩のその言葉に心を射貫かれるのを感じた。
え、何この子……。
それって、俺を独り占めにしたいってこと?
それってヤキモチ?
てか、メッチャ可愛いなおい!!
なんて事を考えながら、俺は平静を保ち、クールに彩に言う。

「無茶を言うなよ……西井は悪い奴じゃないし……完全無視って訳にはいかないだろ?」

「でも……なんかさ……モヤモヤするんだよね……」

そっかぁ……モヤモヤするんかぁ……可愛いなぁ……。
でも、西井を完全に無視する訳にもいかないし……。 彩って結構独占欲が強いんだな……。

「こうして夜は話せるじゃないか、それにまたSNSとかで写真が拡散とかされたら……」

一度、俺と彩が隣同士の幼馴染みだとSNSに流された事があった。
そのときは大変だった。
デビュー仕立ての彩のSNSはプチ炎上し、恨みを持ったファンが俺に襲いかかってきたり……。

「でも……またこうしてまた話せるようになったのに……」

「そうだけど……」

お互いに恥ずかしいところを相手に見られたからか、最近の俺たちは上手くいっている。
顔を合わせれば口喧嘩をしていたが、最近はそれが一切無い。

「あのさ……」

「ん?」

「私さ……やめようと思ってるんだ……アイドル」

「え!?」

俺は驚き声を上げた。
一体どうしたというのだ?
アイドルになってもうすぐ一年が過ぎ、人気も上々で調子が良いのに、なんでやめるなんて言うんだ?

「な、なんでやめるんだよ! これからだろ!」

「なんていうか……目標達成したから……もうアイドルやる意味ないし……」

目標? 目標とは一体何の事だろうか?
というか、わずか一年で大人気アイドルの地位を獲得したというのに、なんでこんな早くにやめてしまうのだろうか?
絶対にもったいないと思うが……。
俺がそんな事を思っていると、彩は俺の手を強く握って話しを始めた。

「目標も達成したし……そろそろ普通の学校生活を送りたいのよ……」

その気持ちは分かる。
仕事ばかりで全然友達とも遊べないだろうし、クラスメイトにはアイドルだからと少し距離を置かれているし……。

「そうか……」

正直残念だ、でもこれは俺が横からどうこう言える話しでは無い。
彩が決めたことなら、俺は彩がしたいようにすれば良いと思っている。
俺の心の中では、もうアイドルの彩を見ることが出来ない気持ちと、これで彩とコソコソ隠れずに付き合えるかもしれないと言う、二つの感情があり、凄く複雑な気持ちだった。

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