今日からフリーになりまして

Joker0808

第41話

「で! 返事はどうするの?」

「え……あぁ……えっと……どうしようかな」

「付き合っちゃえば良いじゃ~ん!」

「そ、そうだね……」

僕は白戸さんと話しながら、適当に返事を返す。
なんだか、こんな反応をされると……正直どうでも良くなってきた……。

「僕が誰かと付き合ったら……もうこうして白戸さんとは帰れないね……」

「え……」

なんとなくそんな言葉を僕は口にした。
はぁ……脈無しかな……。
僕がそう思っていると電車がやってきた。

「あ、電車来たね」

「……え? あ、そ……そうね……」

「どうかした?」

「べ、別に何でもないよ!」

白戸さんはそう言いながら、僕の後に続いて電車に乗る。
さて……この手紙の返事をどう断るか……いや、僕こそ新しい恋に一歩踏み出すべきなのかな?
僕はそんな事を考えながら、自宅に帰宅した。





「じゃあ、またね」

「うん、バイバイ」

私、白戸芽生は同級生の栗原君と駅で別れ、自宅に向かって歩いていた。
私は電車に乗っている最中、電車に乗る前に栗原君が言った言葉が引っかかり、その事についてずっと考えていた。

「……まぁそうよね……一緒に帰る訳には行かないわよね……」

先程栗原君がラブレターを貰っている事を目の当たりにし、少しからかう感じであんな事を言ったけど、実際そうよね。
彼女が居るのに他の女と一緒に下校する訳にはいかないわよね?

「……そしたら一人か……」

私はそう考えると少し寂しく思えてきてしまった。
下校する時、最近はずっと栗原君と一緒だった。
栗原君は顔立ちも良いし、性格も優しいから女子にモテる。
だから、最初は『付き合ってるの?』なんて何回も聞かれたり、一部の女子から良く思われて無かったけど、今はそんなことは無い。
「あれ? なんで私……寂しいなんて思ってるんだろ?」

別に一緒に帰る相手なんて、他の女子の友達でも良いはずなのに……。
きっとあれね……私の周りが最近告白されたりしたりが多いからよね?
なんか置いていかれた感じするもんなぁ~。
「はぁ~私も彼氏とか作った方良いのかな?」

まぁ、そんな事言っても相手が居ないし……。
なんて事を私が考えると、私の頭の中にふと栗原君の顔が浮かぶ。
いやいや、なんで栗原君の顔が浮かぶのよ!
全然そんなんじゃないから!
栗原君とは……ただの友達だし!

「いやなんで私一人でこんな焦ってるのよ……」

はぁ……疲れてるのかな?
とりあえず早く家に帰ってベッドに横になろう。
明日からゴールデンウイークだし……。





ゴールデンウイーク初日。
天気は最高に良かった。
雲一つ内青い空が広がっていた。
俺は朝早くに起きて朝食を食べ、出かける準備をしていた。

「よし、これで良いか……」

「女ね」

「うぉっ! ビックリしたぁ……だから音も無く俺の部屋を覗かないでくれよ!」

俺が鏡の前で自分の服装をチェックしていると、母さんがドアの隙間からこちらを見てそう言った。
なんでどっかの家政婦みたいな覗き方をしてくるんだよ……。

「何? あんた今日はデート?」

「ま、まぁ……」

「ふぅ~ん……じゃあ、これ持って行きなさい」

「え? 何これ?」

そう言って母さんが渡してきたのは、茶色い紙袋だった。
俺は中身が気になり中を覗く、そして母さんに叫んだ。

「いるかっ!!」

「何を言ってるの! 間違いは起きてからじゃ遅いのよ! 責めてちゃんと準備をしていかないと!」

「だからって親からこんな物貰いたくねーよ!! 色々気まずいわ!!」

「大丈夫よ、もう母さん達は使わないから」

「そう言う事じゃねーんだよ!! しかもなんで朝から親のそんな事情を聞かされなきゃいけねーんだ!!」

「お父さんは若い頃も全然誘ってくれなかったわ、仕方なく母さんが襲ってたけど」

「いい! 話さんで良い!! 聞きたく無い!」

「まぁ、なんでも良いけど、子供は作るなって言いたいのよ、まだ高校生なんだから」

「心配しなくても、そんな事にはなんねーって、じゃあ俺もう行くから」

「はいはい、気を付けて行ってらっしゃい」

俺は母さんに見送られて自宅を後にした。
なんだか少し緊張してきたな……清瀬さんと学校以外で会うの初めてだし……。
自宅から映画館までは電車で20分くらい、少し早めに出てきたので時間遅れること無く、待ち合わせ場所の映画館に到着した。

「うわっ……結構人居るな……」

ゴールデンウイーク初日とあってか、朝から映画館の中は混雑していた。

「清瀬さんはまだ来てないか?」

約束の場所に行ったが、清瀬さんはまだ居なかった。
俺はスマホを弄りながら清瀬さんが来るのを待った。
少しして俺の視線は急に暗くなった。

「え? な、なに?」

「だ~れだ?」

そう尋ねてきた声に俺は聞き覚えがあった。 俺は笑みを浮かべながら、その人の質問に答える。

「清瀬さん?」

「おぉ~当たったねぇ~」

そう言って清瀬さんは俺の背後から俺の正面に出てきた。

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