今日からフリーになりまして

Joker0808

第27話

「ただいまぁー」

「あら、おかえり。今日は違う女の子の匂いね」

「だからなんでわかるんだよ!」

「女はね、歳を重ねる事に勘の鋭さが増していくのよ」

あぁ、だから父さんがキャバクラに行った日がわかるのか……それにしても恐ろしいなぁ、女の勘。

「それよりも、アンタ覚えてる? 小さい頃一緒に遊んでたいろはちゃん」

「え? いろはちゃん? なんかどっかで聞いたことがあるような名前だな……」

「ほら、アンタがまだ小さい頃、隣に済んでたいろはちゃんよ! 良く二人で遊んでたじゃない」

「あぁ……あの女の子? ぼやっと覚えてるだけだけど……」

「あの子の親転勤が多かったらしいんだけど、去年からあの子だけこの街に戻って来てるらしいのよ」

「え? そうなの?」

「なんか、行きたい学校がこっちの学校だったんだんだって、今日偶然お母様と道ばたでバッタリ会って、その話しを聞いたの」

「へー、なんでその話しを俺に?」

「アンタ、あの子と仲良かったから、会いに行ってきたら?」

「は? 何言ってんだよ……いきなり行っても驚かれるだけだろ……それに何年経ってるんだからあっちが忘れてるだろ」

「それはどうかしらね……もしかしたら、覚えてるかもしれないわよぉ~」

「俺が5歳位の時だぞ? 俺だって言われるまで忘れてたし、あっちだって忘れてるって……」

俺はそう言って自分の部屋に戻った。
鞄を置いてスマホを操作していると、俺はとあることに気がついた。

「そう言えば……清瀬さんの下の名前もいろはだよな?」

俺はスマホの連絡先のアプリを見ながら気がついた。
清瀬さんのフルネームは清瀬彩葉。
まさか……なんて事を一瞬思ったが、それはないだろう。
俺が知っているいろはは、泣き虫だったし正直そんなに可愛かったイメージは無い。

「偶然だよなぁ……」

無いな……それに偶然同じ学校に進学してる訳もないしな……。

「さて、風呂にでも入ってくるか……」

俺はスマホを置いて風呂場に向かった。





「ふ~んふふん~」

私は春山君と別れた後、私は直ぐに一人暮らしの自分の部屋に帰ってきた。
私は鞄を置き、ベッドに寝っ転がってスマホを弄っていた。
私は少し上機嫌だった。
気になっている人と一緒に映画に行く約束をしたからだ。

「さて、何を着て行こうかなぁ~」

今から何を着ていくか悩んでしまう。
私は部屋のクローゼットを開けて服を選び始めた。

「う~ん、これはなんか子供っぽい気が……あら? 何かしらこれ……」

クローゼットの中から服を選んでいると、クローゼットの奥から見知らぬ段ボールを見つけた。
中を開けて見ると、そこには引っ越しの時に持ってきて放って置いた荷物が入っていた。
「あぁ……引っ越しの時にとりあえずここに仕舞っておいたんだ……」

私は何となく段ボールの中が気になり、中身を出して確認し始めた。

「うーん……どうでも良い物ばっかりね……ん? あ……これ……」

私は段ボールの中から一冊のアルバムを発見した。
アルバムをめくると、そこには私がまだ5歳の時の写真が入っていた。

「懐かしいなぁ……」

中には当時の私の色々な写真が挟まっていた。
プールに行ったときの写真や遊園地に行ったときの写真。
そして……とある男の子と一緒に写っている写真……。

「……すっかり忘れてるんだもなぁ……」

私はそんな事を言いながら、その男の子が写っている写真を指で撫でる。

「やっぱり気がつかないのかな?」

その男の子とは高校に入学して再会した。 でも、その男の子は私の事なんてすっかり忘れていた。
しかも、彼女までいた。
ずっと大好きだった男の子と同じ高校なのは嬉しかった。
でも……彼女が居るとわかって、私は直ぐに身を引いた。
彼が彼女と仲良くしているのを見たくなかったから。

「……去年は何も出来なかったけど……もう私は遠慮なんかしない……」

彼が最近彼女と別れたと言う噂を聞いたのはつい最近だった。
私はチャンスだと思った。
だから、私はこのチャンスを絶対物にすると決めた。

「ミナ君……私……ずっと好きだったんだよ……」

私は一人でそう呟きながら、写真に写る幼い日の春山君を見つめる。





「何よ話しって」

「いや、別に大した事じゃないんだけど……」

私、白戸芽生は栗原君と別れた後、由羽に呼び出されて喫茶店に来ていた。
相談があるって言われて呼び出されたけど、相談って何かしら?
私は注文したアイスティーを飲みながら、由羽に尋ねる。

「ねぇ……私ってさ……湊斗に対してどうだった? 付き合ってた頃……」

「酷かった」

「即答!?」

「いや、だってアンタ結構理不尽な事で春山君の事怒ってたじゃない」

「そ、そうかしら?」

「そうよ、私何回もアンタに言ったけど?」

「そ、そうだったかしら?」

「アンタが忘れてるだけよ」

私がそう言うと由羽は反論するでも無く、一つため息を吐いて、寂しそうな表情で俯き始めた。
今日の由羽はどうしたのだろう?
いつもなら反論して来るのに……。

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