今日からフリーになりまして

Joker0808

第1話

「わかれましょう」

放課後の誰も居ない教室で俺の彼女が俺に向かってそう言う。

「あぁ、そうだな」

俺はそんな彼女に向かってそう返す。
彼女、藍原由羽(あいはら ゆう)と付き合ったのは丁度一年ほど前の事だ。
中学三年から良く話しをするようになり、高校に入ってから勇気を出して告白したのを覚えている。

「じゃあね、湊斗(みなと)」

彼女は俺、春山湊斗(はるやま みなと)の名前を言って、その場を去っていった。
別れ話……それは二人の恋の終わりを意味する。
本当なら寂しいはずなのだろうが俺は清々していた。

「はぁ~………これで自由だぁぁぁぁぁ!!」

思わず叫んでしまった。
いや、俺もさ最初は藍原の事を可愛いと思ったよ?
髪の毛ふわふわだし、目はクリッとして大きいし、それに胸もデカいし。
でも、性格が最悪!
わがままだし、すぐに膨れるし、しかも俺の事殴ってくるし!
良く一年耐えたと俺は自分で自分を褒めたくなるよ……。
しかし、これで俺も晴れて自由の身だ!
次の彼女は性格が良い子にするんだ!
落ち着きがあって、大人しい……そんな彼女を作るんだ!!

「俺の学園生活は! これからじゃぁぁぁぁ!!!」

「おーい、一人で青春してるとこ申し訳ないが、そろそろ教室締めるぞー」

「あ、先生すみません……」

今日、高校二年の四月。
俺は彼女と別れてフリーになりました。





「え? 別れたのか?」

「おう! いやぁ~清々したね。あの暴力女と別れられたんだ……今度はもっと大人しい子と付き合う」

藍原と別れた次の日。
俺は一番仲の良い友人の栗原直晄(くりはら なおあき)に藍原と別れた事を報告した。 直晄は中学時代からの友人で、昔から仲が良い。
藍原と付き合う前も、直晄に色々相談をしていた。

「そっか……お似合いだったのに……」

「どこがだよ! あいつなんて胸が大きくて顔は良いだけの性格ブスなんだよ! 見た目に騙されたよまったく……」

「でも、湊斗と藍原さん中学の時は凄く仲良かったじゃないか……」

「それはまだ、あいつが俺の前でも猫を被っていたからだ! さて……と言うわけで女子を紹介してくれ」

「なんでそうなる……」

「だってお前モテるじゃん!」

「モテないよ」

この男、自分ではそう言っているが、かなりモテる。
ずっと一緒に居たからわかるが、こいつは年間で10回も告白されるし、バレンタインデーには、大量のチョコを貰う。

「ちなみに大人しくて、清楚な子を希望する!」

「そんな子知らないよ……はぁ……なんか未練とかも無さそうだね……」

「当たり前だ、俺はずっと別れたかったしな」

「はぁ……なんか悲しいなぁ……あんなに頑張って告白したのに……」

「告白したのは俺だけどな」

「二人で頑張ったじゃないか! あ、そんな事言ってたら来たよ……元カノ」

そう言って直晄は教室のドアの方に視線を向ける。
藍原が登校してきたようだ。
藍原は女子の友達に笑顔で挨拶をしている。
「多分、あっちも全然気になんてしてねーよ」

「そうかなぁ……じゃあ、僕ちょっと聞いてこようかな?」

「馬鹿、やめろ! 俺達はもう終わったんだよ! 変な詮索するな」

「はぁ……付き合った当初は初々しくて良かったのに……毎日イチャイチャしてさぁ……」

「イチャイチャなんてしてねーよ……てか、俺は藍原の手すら握らず終わっちまった……」

「てか、名前で呼ぶことも無く終わったね」

「まぁな……」

確かに付き合い初めは良かった。
藍原みたいな美少女が彼女だなんて、一生分の運を使ってしまったと思った。
毎日電話して、連絡も取り合って……。

「なんか、離婚する夫婦の気持ちがわかる
気がするわ」

「そう、それはよかったわね」

「あぁ、確かにあんな暴力女と一緒だと……どうした?」

「後ろ! 後ろ!」

直晄に言われた通り後ろを振り向くと、そこには明らかに機嫌の悪い藍原が立っていた。
「あ……」

「私も清々したわよ……アンタみたいな不細工と別れられて」

「だ、誰が不細工だ!!」

「不細工でしょうが! 360度どっからどう見ても!! はぁ……なんで私こんな不細工と一年も付き合ってたのかしら……」

「うるせぇ! 俺だってなんでお前みたいな暴力女に告白したのか……戻れるなら一年前に戻りたいわ!」

「何ですって!!」

「なんだよ!!」

俺と藍原が喧嘩をしていると、やれやれと言った表情で直晄が間に入る。

「二人とも、まずは落ち着いて……みんな見てるから」

「「あ……」」

気がつくと、教室の皆が俺と藍原を見ていた。
やべぇ……恥ずかしい……注目されるのって苦手なんだよなぁ……。

「え? 何? 藍原さんと春山って別れたの?」

「マジかよ!? あの夫婦喧嘩がもう見れなくなるのは寂しいな……」

「でも、藍原さんがフリーになったのは朗報だぞ! よし、今日の放課後にでもアタックに……」

「待て、俺が先だ!」

「いや、俺が」

「いえ、私よ!」

「「「え?」」」

なんだかクラスメイトはクラスメイトで盛り上がっているようだ。
てか、なんだ夫婦喧嘩って!
俺たちは夫婦じゃねぇ!!
誰がこんな暴力的な奴貰うか!

「ふん……まぁ良いわ……これからは私にあんまり干渉しないでね」

「お前こそ!」

クラスの生徒全員に見られながら、俺と藍原の喧嘩は幕を閉じた。





放課後、俺は世界史の課題を行う為に学校の図書館にやってきていた。

「はぁ……だるいなぁ……」

直晄は早々に課題を終わしたらしく、そのままバイト先に行ってしまった。
俺は一人ボッチで図書室に向かい、パソコンを使って調べ物を始める。

「はぁ……なんで授業始まったばっかりで課題なんてだすかなぁ……」

俺はそんな事を考えながらパソコンを操作する。
この学校は設備だけはかなり整っている。
図書館は学校の敷地内にあり、独立した建物となっている。
中には学習スペースにパソコンスペースがある。
あんまり、人が居ないがテスト前になると人が多くなる。

「はぁ……ネットだと良くわからねーな……なんか本無いかな?」

俺はそう思って立ち上がり、本棚の方に向かう。

「えっと……どこだ?」

俺は目的の本を探して、本棚と本棚の間をさまよっていた。
俺がそうして本を探していると、ふと窓の近くで本を読んでいる女子生徒に目が行った。
「………」

綺麗な黒髪のストレート、綺麗な白い肌。 かなりの美少女だった。
清楚な感じの美少女で、読んでいる本に夢中になっているらしい。

「………ん?」

「あ……いや……」

やばい、目があってしまった。
俺は急に目が合ってしまい、どうしたら良いかわからずアタフタしていた。
するとその女子生徒は、笑顔で俺にこう言った。

「どうかしたかしら?」

「え……あ、いや……すいません……」

「謝ることなんてないわ、たまたま目があっただけですもの」

優しい笑顔、柔らかな口調。
なんて可愛らしいんだろう……。

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