今日からフリーになりまして

Joker0808

第3話




放課後、俺はまたしても図書室に来ていた。 もしかしたら、また彼女に会えるのでは無いかと思ったからだ。
しかし、その日の図書館に彼女は居なかった。

「はぁ……せめてクラスでもわかればなぁ……」

俺はそんな事を考えながら、帰り道を歩いていた。
すると、俺が前を見ていなかったせいもあり、向かいから来る人とぶつかってしまった。
「あ! すいません」

「いえ、大丈夫ですよ」

「あ……」

「あら? 貴方は昨日の……」

俺がぶつかってしまった人物。
それは、俺が会いたかった昨日の図書室に居た女性だった。

「ご、ごめんなさい! だ、大丈夫ですか?」

「えぇ、大丈夫よ。貴方も今帰り?」

「は、はい! えっと……」

「あぁ、自己紹介がまだだったわね、私は清瀬彩葉(きよせ いろは)よ」

「あ、そ…そうなんですか! 自分は春山湊斗って言います」

「そうなんだ……ところで、なんで敬語なの?」

「え? だって清瀬さんって年上じゃあ……」

「私、二年生だよ?」

「え!? 同い年!?」

マジか!!
大人っぽいから完全に年上だと思ってた……。

「春山君って確か噂になってるよね?」

「え? ど、どんな?」

どうせ藍原との事だろうが、俺は清瀬さんと長く話していたいので、尋ねてみる。

「えっと……確か藍原さんに遊ばれるだけ遊ばれて、捨てられたんだよね?」

「まって、その噂は知らない」

影で俺はどんな言われかたをしてるんだよ!!

「違うの?」

「全然違うよ! 振られたんじゃ無くて別れたし! 俺は遊ばれてないし!」

くそっ!
まぁ、付き合ってる時も『どうせ藍原が遊んでるだけだろ?』なんて言われていたが……。
ま、俺と藍原じゃそう思われても仕方ないのか……。

「え? そうなの?」

「そうだよ! まぁ……別れたのは本当でけど……」

「あらら……それは可愛そう……」

「あ、でも後悔しないで! 俺は清々してるんだ! あんな奴と別れられて!」

「何かあったの?」

「まぁ、色々あったんだけどね……」

俺は清瀬さんに、藍原と別れた理由を話し始めた。
清瀬さんは、俺の話をちゃんと聞いてくれた。
なんていい人なんだ……。

「そうなんだ……じゃあ喧嘩別れ?」

「まぁ、そうだね……」

「ふーん……ねぇ、私もう少し春山君と話したいんけど……良い?」

「え? も、もちろん!! じゃあどこか店入る?」

まさかの清瀬さんからのお誘いに、俺は思わず興奮してしまった。
もしかして、これは脈ありなのではないだろうか?





放課後、私はバスケット部の部長からの告白を断り、一人で下校している途中だった。
私はいつも学校近くの商店街を通って帰る。 この日もいつものように、その商店街を通って帰っていたのだが、私は今し方衝撃的な光景を目にしてしまった。
湊斗が誰か綺麗な女の子と笑顔でファミレスに入って行ったのだ。

「は? ちょっと! 何あれ?」

私は思わずそう呟いてしまった。
なんであの馬鹿とあんな可愛い子が一緒に居るの!?
一体何があったの!?
私は思わず物陰に隠れながら、二人が入っていったファミレスの中に入って行った。
別に二人の関係が気になるとかそう言うあれではない、断じて無い!





「な、なんで俺と話しを?」

「ん? これも何かの縁かと思って……あ、ドリンクバーで良い?」

「あ、あぁ……」

天然なのか?
そんな事をいわれたら少し期待してしまうぞ……。

「さて、何話そっか」

「いや、俺にそれを言われても……」

「あ、そっかそっか、誘ったの私だもんね、ごめんごめん」

やばいなぁ……すげー可愛いなぁ……。
清瀬さんの笑顔には癒やしの効果でもあるのだろうか?
俺は清瀬さんの顔を見ながら自然と自分の口元がニヤケルのを感じた。

「ねぇ、なんで別れたの?」

「い、いきなりその話題?」

「あ、ごめんね。話したくなかったら良いけど……なんか勝手に吹っ切れたのかと思っちゃって」

「まぁ、吹っ切れては居るんだけどね……まぁ、詳しく説明すると……俺とあいつは合わなかったんだよ……」

「へぇ……そうなんだ……合わないって具体的には?」

「メッチャ聞いてくるね……まぁ良いけど……」

俺は清瀬さんに藍原との事を話した。

「へぇ……そんな事を言われたんだぁ」

「そうだよ、酷いだろ? あいつはわがままだし、自分勝手だし……」

俺がそう清瀬さんに話しをしていると、俺の後ろの席から何やらドンという音が聞こえてきた。
なんだ?

「へぇ……じゃあ、今は彼女募集中なんだ」

「いや、別に募集中ってわけじゃ……」

本当はそうだけど、なんかそう言うとだらしない奴みたいだから言わないでおこう。

「じゃあ……私と友達から始めてみる?」

「え……」

その提案は俺が想像もしていない提案だった。





「湊斗の奴ぅ~……」

私は湊斗の後ろの席でこっそり話しを聞いていた。
湊斗のやつぅ~好き勝手言ってくれるじゃない!!
大体、全部私が悪いみたいに言わないでよ!
アンタだって悪かったことがあったでしょうが!!
私が腹を立てていると、湊斗の向かいの女子生徒が湊斗に尋ねる。

『へぇ~……じゃあ今は彼女募集中なんだ』

『いや、募集中って訳じゃ……』

まぁ、そうよね。
私と別れたばっかりで、他の女の子の彼女募集中なんて言うわけが無いわよね。
湊斗は変なところで格好つけるし。
てか、この子は一体何なの?
なんで湊斗とこんな仲良さげに話しをしてるのよ!
湊斗って私以外に親しい女友達なんて居なかったわよね……。
私がそんな事を思っていると、その女子生徒は思いも掛けない台詞を口にした。

『じゃあ……私と友達から始めてみる?』

『え……』

え………?
私は思わず、湊斗達の席の方を振り返ってしまった。
本当にこの子は何なの?
今のは当回しだったけど、告白みたいなものじゃない!!
なんで?
あの子は一体何があって湊斗にそんな事を言ったの!?
私は頭の中で色々な事を考えながら、コップの中のドリンクを飲み干す。

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