いつも行く喫茶店

Joker0808

いつも行く喫茶店

いつも行く喫茶店。
そこには笑顔が可愛い店員さんがいる。

「いらっしゃ……あ! いつもありがとうございます!」

「お、おはよう」

「どうぞ、いつもの席空いてますよ!」

「あ、あぁ……ありがとう……」

俺は彼女に言われるがままに、いつも座っている窓際の一番奥の席に座る。

「ご注文はいつものですか?」

「あ、あぁ……お願いするよ」

「かしこまりました!」

彼女の名前は御竹沙恵理(みかけ さえり)さん。
整った顔立ちをしていて、すらっと長い脚が特徴のこの店の店員さんだ。
彼女が歩く度に揺れる彼女のポニーテールが綺麗で俺は好きだった。

「はい、いつものコーヒー砂糖二個と牛乳半分です」

「いつもありがとう」

「いえいえ、いつかブラックで飲めると良いですね」

「そうだね」

彼女と話すようになったのは、二年前からだ。
彼女は大学生1年生でバイトを始めたばかりだった。
たまたまの帰りに入ったこの店で俺は彼女にコーヒーをぶっかけられてしまった。
それが彼女と俺の出会いだった。
それからというもの、俺は何となく毎回仕事が終わった後にこの喫茶店に来るようになった。
それから二年、俺はこの喫茶店に通い、今ではこの店の常連だ。
そして今日、俺は彼女と会うのは最後になる。

「……御竹さん」

「はい? どうかしましたか?」

「……いや……なんでもないよ……仕事中にごめん」

「? どうしたんですか? 今日はなんか変ですよ?」

「ははは……そうかな? ご馳走様……じゃあ俺はもう行くよ」

「もうですか? いつもより速いんですね」

「うん……」

俺は彼女にコーヒーの代金を手渡し、喫茶店の扉に手を掛ける。

「……じゃあ、御竹さん……元気で……」

「え? あ、はい……」

俺はそう言って喫茶店を後にした。

「どうしたんだろ? 今日は早く帰っちゃったし」

「あれ? 御竹ちゃん、今日も渡せなかったの? 連絡先?」

「て、店長!!」

「あぁ、今日もダメだったかぁ~、片思いって大変だねぇ~」





「大尉、問題は無いか?」

「はっ! ありません!」

「……そうか……君と言う英雄を私は忘れない」

「……ありがとうございます。それでは……出撃します」

俺の名前は上柳滝一(かみやなぎ りゅういち)。
秘密組織BTSU所属の兵士だ。
俺は今から死にに行く。
俺にしか倒せない敵と心中しにいくのだ。
昔から俺はこの組織でこの世界の人たちを守って来た。
それが力を持った俺の使命だと思った。
この戦いで人類に脅威となる存在を退けることが出来る。
後悔はない。
俺はこの人類の為に戦うのだ。
しかし……なぜだろうか………俺の脳裏には彼女の……御竹さんの顔が写っていた。

「上柳大尉に敬礼!!」

その掛け声とともに、俺の両脇の戦友たちが敬礼をする。
泣く者、悔しそうに拳を握る者。
皆、俺の為に様々な事を思ってくれているんだと気づいた。
俺は戦友たちを後にし、最後の決戦用に用意されたアーマードスーツを身にまとう。

「上柳滝一……出撃します!」

俺は基地から出撃した。
最後の戦いをに向かうために……。





「はぁ……はぁ……」

「なぜだ……なぜそこまで人を守る! なぜ自分を生贄にした者たちを守る!!」

「……さぁな……ただ……俺の後ろには……あの人が……御竹さんが暮らす世界があるんだ……」

「くっ!! どこにそこまでの力が! もう力は残っていないはずだ!!」

「人間を甘く見るなよ……俺が諦めたら……御竹さんも死んじまうんだよぉぉぉぉぉ!!」

「き、貴様!! まさか相打ち狙いか!!」

「あばよ……お前を地獄に道連れだ!」

俺は敵に飛び掛かり、そのまま敵を拘束して自爆コードを打つ。
これであとは、俺がこの敵を道連れに死ねば作戦は成功だ。
……こんな時だというのに……なんで俺は御竹さんの顔を思い出してしまうのだろう。
なぜだろう……あの時、なぜ俺はあの人にこの気持ちを言わなかったのだろう……。
後悔してももう遅い……。

「さよなら……」

俺がそうつぶやいた後、大きな爆発が空中で起きた。





「え……」

「どうしたの? 御竹ちゃん?」

「いえ……なんか……呼ばれた気がして……」

「え? 何々? 心霊現象?」




数カ月後……。

「最近めっきり来なくなっちゃったね、御竹ちゃんの愛しい人」

「……そうですね……」

「あ……なんかごめんね……」

あれからあの人は来なくなった。
私はこの数カ月ずっと後悔していた。
なんであの日、私はあの人に思いを伝えなかったのだろうか……。
あの人は一体どこに行ってしまったのだろうか……。

「きっと、仕事が忙しいんだよ」

「そう……ですよね……」

あの人が居ない窓際のテーブルはなんだか寂しく感じた。

「……もう来ないのかな……」

私がそんな事を思っていると、入り口の扉が開く音が聞こえた。
私は手が離せず、入り口の方を見ずに言う。

「いらっしゃいませー」

「すいません、コーヒーを一つ」

「はい、かしこまりました」

「あと……砂糖を二つと牛乳をカップに半分入れて下さい」

「え……」

私はそう言われた瞬間、急いで入口の方を見た。

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