隣の部屋の裸族さん

Joker0808

第36話

俺と早乙女がそんな話しをしている間もクラスの男達は壁を越えようとあれこれ試行錯誤していた。

「クソッ! ここを越えた先に桃源郷があるのに!!」

「俺たちはただここでジッとしていることしか出来ないのか!!」

そうだよ、てか普通そうなんだよ。
いい加減ゆっくり湯に浸かって、今日の疲れでも取ったらどうなんだ?
俺がそんな事を考えていると、またしても女風呂の方から声が聞こえてきた。

「木川くーん!!」

え? 俺?
一体何だろうか、声の主は恐らく同じクラスの女子だろうが……。

「なんだー?」

「あのさぁー! 八島さんがボディーソープ忘れてんだってぇー! だから木川君の貸して上げてぇー!」

いや、なんで男湯の居る俺のをわざわざ借りるんだよ!
お前らが貸してやれば良いだろうが!
なんて事を思いつつも、俺は風呂から上がり自分の持ってきたボディーソープを女湯に投げる。

「ほらよっ!」

「ありがとうーだって-!」

たく、八島も八島だ。
あれほど忘れ物は無いかって言ったのに……。
そんな事を俺が思っていると、いつの間にか男子全員が俺の方を見ていた。

「ん? な、なんだよ?」

「お前……なんで八島さんからシャンプー貸してなんて言われるんだ?」

「そ、そんなの俺が知るか!」

多分、この前まで俺の部屋の風呂であいつが俺のボディーソープを使っていたからだろう。
なんかあいつ気に入ってたしなぁ……。
そう言えばあれ、たしかメンズ用だったな……だから俺にボディーソープを……って! そんな事したら、余計に関係が怪しまれるだろうが!!

「ふぅ~ん……知らないんだぁ……」

「あ、あぁ……知らねーよ」

ここはシラを切るしか無いな。
なんとかこの場を耐えてうやむやに出来れば!!
なんて事を俺が考えていると、女子風呂からまたしても声が聞こえてきた。

「ねぇねぇ八島さん、なんで男用のボディーソープなの? 私の貸したのに」

「ん……いつも使ってるから」

「あぁ、そうだったんだ! だから男子で仲の良い木川君にお願いしたんだ」

「ん……事前に聞いてた」

よし!
ナイスだ八島!
それなら別に怪しまれないぞ!
仲の良い男友達から、メンズ用のボディーソープを借りる……うん、まったく問題無い!
問題……無いのか?

「な、なぁ? そう言う訳だよ」

「なるほど、そう言うことか……」

「待てよ……と言うことは……お前の匂いは、自動的に八島さんの匂いと言うことか!?」

「は?」

クラスの男子達は何かアホな事に気がついたらしく、ジリジリと俺の方に近づいてくる。
「や、八島さんと同じ香り……」

「じょ、女子の香り……」

「女子高生の香り……」

「お、お前ら? な、なんか目が怖いんだが……」

こいつら、どんだけ女子に飢えてんだよ!!

「き、木川ぁ……ちょっとこっちに来いよぉ~」

「あ、洗いっこしようぜぇ~」

「するか!! 気色悪い!! お前らよく考えろ!! 結局は俺の匂いだぞ!!」

「そ、それでも……はぁはぁ……や、八島さんと同じ香り……」

「疑似体験は……出来るよなぁ?」

「ば、バカ! ち、近寄るなぁぁぁぁぁぁ!!」

「あ! 逃げたぞ!」

「追え! 追うんだぁぁぁ!!」

「はぁ……本当に男ってやーねー」

「だからお前が言うなぁぁぁぁぁぁ!!」

裸の男達に追いかけられました。





「はぁ……酷い目にあった……」

「なるほど、これが八島さんの香りかぁ~」

「いつまでやってるのよ、気色悪い」

俺と強、そして早乙女の三人は自分たちのテントに戻っていた。
後は各自自由行動になり、夜は22時に消灯になる。

「さて、22時までまだ時間もあるがどうする?」

「他のテントに遊びに行くか? まぁ、女子のテントには行けないが」

夜のテントの移動は自由だが、女子のテントに行くことだけは禁止されていた。
もちろんその逆もしかりだ。
まぁ、学校側としては何かあっては困るからなのだろう。

「そう言えば知ってる?」

「ん? なんだよ早乙女」

「毎年このクラス研修の一日目の夜に皆こっそり告白大会してるみたいよ~」

「告白大会? なんだそりゃ?」

「女子が男子を呼び出して、近くの湖で愛の告白をするのよ! そこで結ばれた二人は一年間幸せになれるんですって」

「期間限定かよ……」

「だから、男子は今頃皆ソワソワしてるのよ」

「ふーん、まぁ俺たちにそんな連絡来る訳……ってお前は何してるんだ? 強……」

「見て分からないか? 女子からのお誘いを待っているんだ」

居たよ、ソワソワしてる奴……。

「はぁ……お前なぁ……そんな連絡来るわけないだろ? 顔面良く見てからそう言うことは言え」

「どう言う意味だよ!! 俺にだって少しくらい希望が有るだろうが!!」

「無いな」

「無いわね」

「声を揃えて言うなぁぁぁぁ!!」

まったく、何を考えているのか……。
てか、同じクラスになってまだ日も浅いのに、そんなことがあるわけ……。

「ん? 琉唯? どうした?」

「……いや……何でも無い」

マジかよ……。
俺は咄嗟にスマホを隠した。
そのスマホにはメッセージが来ており、そのメッセージは高石からだった。
メッセージの内容は……。

【今から湖に来て】

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