隣の部屋の裸族さん

Joker0808

第8話

ピンポーン。
そんな事を考えていると、部屋のインターホンが鳴った。
恐らく強か早乙女のどっちかだろう。

「はいよ、今開けるよ……」

俺は一人でそう呟きながら、玄関に向かう。
「はやかっ……って、八島!?」

玄関を開け、目の前に立っていたのは隣の部屋の八島だった。

「な、なんだ? 悪いがこれから俺は用事があるんだが……」

「……また奴が出た……」

「は? またって……もしかして……またゴキブリか?」

「………」

俺が尋ねると八島は無言うなずいた。
昨日の生き残りか……でも、これから二人が来るし……どうしたもんだろうか?

「殺虫スプレーやるから、自分でなんとか出来ないか?」

「無理」

「即答かよ……」

仕方ない、ちゃっちゃと片付けて帰ってくるしかないか……。
俺は急いで八島の部屋に向かい、ゴキブリを探し始める。

「どこに居るんだ?」

「ベッドの下……」

「そうか、じゃあお前はって! なんで脱いでんだよ!!」

「部屋で服を着るのは慣れない」

「だからって俺が居るときは脱ぐな!!」

俺が八島の方を振り返ると、八島は既に下着姿になっていた。
俺はそんな八島に背を向け、さっさとゴキブリを駆除して部屋に帰ろうと、ゴキブリを探し始める。

「暗くてよく見えないな……」

俺は屈んでベッドの下をのぞき込む。
昨日俺が掃除をしたと言うのに、ベッドの下は既に物が何個か転がっていた。

「はぁ……昨日片付けてやったってのに……」

俺はため息を吐きながら、ベッドの下の物を出して、殺虫スプレーを吹きつける。
これでゴキブリが死んだかは分からないが……。

「まぁ、とりあえずこれで大丈夫だと思うぞ」

「ん、ありがとう……」

「悪いがもう俺は時間が無いから、これで帰るぞ、それと昨日言い忘れたけど、クラスの奴らに俺らが隣の部屋同士だってことは内緒の方向で頼む」

「ん、分かった」

物分かりが良くて助かる。
俺はそんな事を思いながら、八島の玄関の戸を開け、自分の部屋に帰ろうとする。

「あら? 引っ越した部屋ってこっちじゃなかったの?」

「あれ? 聞き間違えたか?」

「なっ………」

外に出た瞬間、丁度俺の部屋のインターホンを鳴らそうとしていた強と早乙女に遭遇してしまった。
二人はこちらを見ながら俺にそう尋ねてくる。
落ち着け……まだ隣が八島だとバレた訳じゃない……ここは誤魔化せばなんとか……。

「あ、あぁ……隣にちょっと挨拶をな……」

「挨拶? この前隣人トラブルになったとか言わなかった?」

「そ、それは……あれだ! こっちの人じゃなくて、そっちの人だ!」

「あぁ、左の部屋の人の事か、お前も大変だなぁ~」

「わ、分かってくれたか」

危ない危ない……なんとかピンチは脱する事が出来たな……。
変に勘ぐられなくてよかった。
八島は今、部屋で全裸だし。
そんな八島の部屋に俺が出入りしてるとしれたら、絶対ややこしい事になる!

「ま、まぁなんでも良いから入れよ、お茶出すぞ」

「そうだな、よし! 入れろ」

「お前は偉そうだな強」

俺は家の鍵を開けて、二人を部屋の中に入れた。

「狭い部屋だが、まぁくつろいでくれ」

「あら、良い部屋ね」

「以外と広いな……あ、そうだそうだ……これ、引っ越し祝いな」

「マジか、本当に持ってきたのか?」

「あぁ、持ってきたぜ、ちゃんと引っ越し先で使えそうな……俺のおすすめエロゲーを!」

「なんでだよ……しかもなんだよこのタイトル。『隣の部屋のいけない関係』って……」

「おう、良く気がついたな! それは引っ越した先の隣人がドスケベな変態って話しで……」

「要らん」

そう言って、俺はゲームソフトをごみ箱に捨てる。

「あぁ! 折角持ってきてやったのに!」

「誰がエロゲー寄越せって言ったよ!」

「一人暮らしで抜き放題だと思って……」

「アホか!!」

「もう、強ちゃんったら……もっと役立つ物を渡しなさいよ」

「そう言う早乙女は何を持ってきたんだよ」

「私はこれよ」

そう言って早乙女は、俺に紙袋を渡してきた。
中を開けると、そこには二冊の本が入っており、一冊は料理本だった。

「おぉ、早乙女流石だな! 料理本は助かるよ」

「うふふ、お気に召して貰えてよかったわ」

流石は男らしさと女らしさを持つ早乙女だ。 気配りが出来ている。
ん? もう一冊はなんだ?

「もう一冊は何の本だ? これだけカバーが……」

「あぁ、それはね……」

俺は気になって本をめくってみた。

「うっ……こ、これは?」

「良いでしょ~? 私のおすすめなの~」

もう一冊の本には筋肉ムキムキの男達の写真が全ページに渡って掲載されている、写真集だった。

「こ、これを見て……俺にどうしろと?」

「まずは入門編よ! その後は中級でBL漫画、最終試験はホモビよ!」

「俺を何に目覚めさせる気だ!」

ヤバイ……なんか悪寒が……。
てか強! お前も引いてんじゃねぇ!!

「はぁ……お前らはまったく……」

俺はため息を吐きながら、本を机に置き二人のお茶を用意する。

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