モテるのは俺の友達

Joker0808

第5話




翌日、俺が登校すると門の前で最近良く見る一年生が仁王立ちしていた。
俺は何となく嫌な予感がしたので、彼女に気づかれないように気配を消して、彼女の前を通り過ぎようとする。

「あ、先輩やっときた」

「……」

「ちょっと! 無視しないでくださいよ!」

「あぁ、やっぱりバレた?」

「バレた? じゃないですよ! なんで無視するんですか!」

「別に無視したわけじゃない、お前と話をしたくなかっただけだ」

「先輩喧嘩売ってます?」

「あぁ、大安売りだ」

「じゃあ、私が全部買ってやりますよ。だからこっち向けおい」

「なんなんだよ……」

俺は初白に呼び止められ、仕方なく初白の方を向く。
あからさまに不機嫌そうな顔で初白は俺を見ていた。

「なんだよ、昨日は折角チャンスを作ってやったのに……」

「あんないきなりやられてもこっちにだって準備があるんです!」

「いや、お前のことだから、持ち前の慣れ慣れしさでどうにかなるかと……」

「好きな人の前だと緊張するのは当たり前じゃないですか!」

「にしても緊張しすぎだろ……まぁ、俺はどうでもいいけど。それより何か用か?」

「いえ、まぁ……昨日のお礼をと思いまして……ありがとうございました」

「……それで、本題は?」

「真木先輩からどうやったら連絡先を聞き出せるか、一緒に考えて下さい」

「うわぁ……やっぱりお礼ってのは建前かぁ……」

予想通りすぎて逆につまらないな……。

「なんで俺がそんなことしなくちゃいけないんだよ」

「だって、昨日は協力してくれたじゃないですか」

「昨日は気まぐれだ、今回は自分でどうにかしろ」

「なんでですか! 最後まで責任持ってくださいよ!!」

こいつは校門の前で誤解を招きそうなことを……。
見ろ、登校している生徒が全員俺を見ているじゃないか。
しかも、なんか軽蔑されてる気がするし……。

「言い方を考えろよ……連絡先なんて普通に聞けば良いだろ?」

「でも、真木先輩は女子に連絡先を教えないって有名ですよ」

「あぁ……そういえばそうだった気がする……」

確かに初白の言う通り、高弥は女子には自分の連絡先を教えることがなかった気がする。
中学時代にクラスの女子と交換して、大変な目にあったとか言っていた気がするが……。

「じゃあ、諦めろ」

「でも、ここで連絡先を知ることができたら、他のライバルに差をつけられるじゃないですか!」

「まぁ、連絡先を手に入れらたらの話だが……」

「……と言う訳で協力してください」

「いやだ」

「何でですか! もう私には何もしてくれないんですか!」

「だからお前は! 誤解を招きかねないことを言うな!!」

第三者が何も知らずに聞いたら、いろいろと誤解を招くんだろうな……。
ほら、登校中の女子生徒の視線が痛いし……。

「お願いします! なんでもしますから!」

やめろ!
これ以上お前は何も喋るな!
女子の視線が軽蔑の視線に変わってるんだよ!

「あぁ、もうわかったよ! ただし今回だけだぞ!」

「え、本当ですか!!」

「あぁ、だからもう余計なことを言うな……」

これ以上は俺の今後の学生生活に関わって来る……。

「じゃあ、先輩の連絡先教えてください! 作戦会議をしましょう!」

「はぁ……わかったよ」

俺は仕方なく、初白に連絡先を教えた。
ちなみに初白のメッセージアプリのアイコンは友達数名と撮ったプリクラだった。
なんか、女子高生って感じだな……。
対して俺のアイコンは去年の夏に買った限定アイスの写真。
なんでこれを設定したんだ?
俺は初白と連絡先を交換し、自分のクラスに向かった。

「おはよう」

「やぁ、おはよう。どうしたの? 今朝は遅いじゃないか」

「あぁ、いろいろあってな」

「もしかして、昨日の初白さんだっけ? その子と何かしてたの?」

「あぁ……まぁ……」

「え? そうなの?」

「自分で聞いたのに、なんでそんな驚くんだよ」

「いや、またなんか『アホか』とか言われるのかと思ったから」

「そこまで俺は辛らつじゃねーよ」

俺が高弥とそんな話をしていると、その初白から俺のスマホにさっそくメッセージが送られてきた。

【今日のお昼、屋上に来てください! 作戦会議しましょう!!】

「……面倒だな」

俺はそんなことを思いながら、スマホをポケットに戻した。





お昼休み、俺は高弥に今日は用事があるといって、一緒に昼食を食べるのを断った。
いつも一緒に食事をしているので、心なしか高弥は少し寂しそうな表情を浮かべていた気がする。
俺は初白に言われた通りに飯を持って屋上にやってきた。
屋上は生徒も入れるように常時解放されている。
しかし、屋上に来る生徒はあまりいない。
だからこそ、初白は屋上選んだのだろう。

「あ、先輩」

「おう」

屋上に行くと初白はフェンスにもたれ掛かって、俺を待っていた。
手には弁当を持っており、まだ食べていないのが分かった。

「さて、それでは作戦会議を始めます」

「勝手にどうぞ、もぐもぐ」

「先輩! 真面目にやって下さい! もぐもぐ」

「お前もな……」

まぁ、昼休みなんだし、そりゃあ飯を食うだろ。
なんてことを考えながら、俺は初白と飯を食い、食べ終わった段階で本題に移った。

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