日本は異世界で平和に過ごしたいようです
第43話
拘束されたバシナリウス八世と現場指揮官らは、即座に降伏をした。理由として、バシナリウス八世が激しく降伏することを所望したからである。
バシナリウス八世と現場指揮官らは、総合指揮所に着陸した2機のUH-60JAに乗り、オルスター王国の王都まで輸送された。
「なぜ我々を殺害しなかった?」
オルスター王国の王城にある会議室にて、バシナリウス八世と側近、日本の外交官、オルスター王国政府担当者が集って、講和条約を結ぶこととなった。
日本で開催しないのは、バシナリウス八世が中国語を発したのが原因である。日本政府は、バシナリウス八世を中国人であると判断したのである。理由はわからないにしろ、日本でやるにリスクが高いと思ったのである。
「貴方たちを殺害すると、反乱がおこる可能性がありますからね」
「そうか。でもなぜこの世界に日本軍がいるんだ?」
「一応日本軍ではなく自衛隊なのですが...我々日本は8か月前にこの世界に転移してきました」
「そんな短期間で王国と国交を。まあいい。講和条約だな」
「こちら側の要求としては賠償金として金20万Kgに相当する権利及び物品の請求ですね。それと別に、鉱山の採掘権の100年間譲渡と最恵国待遇、技術開示です」
「金20万というのは、我が国の国家予算10年分に値する価値だ。そんなもの払えるわけがない」
「そうですか。金20万Kgの支払いについては、各種権利でまかなうことや、今後の貴国の行動を鑑みて減額の措置が取られる可能性があります。そのためも減額交渉などをしていただいて構いませんが、もちろん交渉次第ですよ?」
外交官(もちろん棚里)はバナスタシア帝国の皇帝の発言を露骨に無視した。しかし、それを指摘できるほど担当者の肝は据わっていなかった。国益を考えると下手な行動は避けて当然なのだが。
「心得ている。寛大な措置、感謝する」
これに対して、バシナリウス八世は一応感謝した。今まで自らの行ってきた国策に比べると、日本の対応は大変優しいものであった。
「では、日本国としては以上です。あとの細かい調整はオルスター王国と行ってください。最後にあなたの本当のお名前は?」
「梓睿という。でも私は次男だったから黒孩子だ。だから戸籍も国籍もない。一応兄が基本的なことは教えてくれたが、初級中学以上のことはやっていない」
「ではどのように生計を?」
「中国からコカインとかを日本に密輸していたよ。でもある時中国海警に摘発されてな。見事にドカンといかれたよ。それで死んだってわけさ」
「一応日本の法律上、あなたは犯罪者ですが、転移してきたわけではないですしね」
こうして、講和条約締結に向けて、調整が開始された。これとともに、国境に展開していた自衛隊の撤収命令が下った。
バナスタシア帝国 国務行政室
国務行政室では皇帝不在の今、これからの帝国の方向を決めていた。そのため、残る高級官僚たちはこの華麗な室内につどっていた。
「くそ。皇帝陛下が降伏なさるとは...」
「我々は抗戦するぞ!」
軍務大臣が声を上げる。それに一部の官僚は追随する。
「ちょっと待て。あの皇帝陛下が降伏なさるとはよほどのことだ。他国の協力を仰ぐのは?」
「馬鹿か。我々の主権が侵されかねん」
「ではこのまま降伏するか?」
「くっ...仕方がない。トルマンに使者を出すしかないな。シーランドは関係があれだしな」
「よし。トルマン王国に使者を出そう。三大強国にすがるのは大変不本意だが」
「あと現在展開中の兵は撤退するように見せかけて、合戦準備は保持しておけ」
「了解」
北青原基地
第309飛行隊では今回の戦争でF-4EJ改の機体の寿命が来ていた。
F-4EJ改の修理部品は半数以上が消費され、もう飛ぶのもやっとな状態であった。
そのため、アラート任務には4機しかないF/T-4が就いた。しかし、後部座席を潰して電子機器を詰め込んだF/T-4は、真の戦闘機であるF-4に探知能力が劣る。
また、練習機であるためエンジン推力が低く、重武装出来なくなっていたりと不満は多かった。
なお、この戦争により、1機のF-4EJ改が機体の経年劣化により、部品取りとなった。
そして、数時間おきに北青原基地には飛行機が飛来していた。もちろん、旅客機ではなく、P-1およびP-3Cであった。哨戒機がこの空域に飛んでいるのはもちろん平時のアラート任務でもあるが、いまだに正式に講和条約を締結していないことや、反乱を起こされる可能性を捨てきれていなかったからだ。
地球での国家間の常識が通用していないことが、バナスタシア帝国訪問で分かったり、この世界の情勢が完全に掌握できていないための対応であるが、偵察衛星(日本名は情報収集衛星)を失ったことも大きく関係していた。
陸上自衛隊の隊員(通常勤務)が寝静まった時間帯でも、容赦なくP-1が騒音を上げながら着陸する。P-1は諸外国の哨戒機や戦闘機よりも騒音が抑えられているとはいえ、陸自の隊員たちには苦痛でしかなかった。また、普段の訓練でF-4EJ改やF/T-4も飛行する。
だいぶ工事は進んできたが、いまだに陸上自衛隊の宿舎は文字通りの滑走路の隣に設置されていたからである。あと半年もしないうちに正式な宿舎が設置されるため、表立って文句を言う陸自隊員はいなかったが。
バシナリウス八世と現場指揮官らは、総合指揮所に着陸した2機のUH-60JAに乗り、オルスター王国の王都まで輸送された。
「なぜ我々を殺害しなかった?」
オルスター王国の王城にある会議室にて、バシナリウス八世と側近、日本の外交官、オルスター王国政府担当者が集って、講和条約を結ぶこととなった。
日本で開催しないのは、バシナリウス八世が中国語を発したのが原因である。日本政府は、バシナリウス八世を中国人であると判断したのである。理由はわからないにしろ、日本でやるにリスクが高いと思ったのである。
「貴方たちを殺害すると、反乱がおこる可能性がありますからね」
「そうか。でもなぜこの世界に日本軍がいるんだ?」
「一応日本軍ではなく自衛隊なのですが...我々日本は8か月前にこの世界に転移してきました」
「そんな短期間で王国と国交を。まあいい。講和条約だな」
「こちら側の要求としては賠償金として金20万Kgに相当する権利及び物品の請求ですね。それと別に、鉱山の採掘権の100年間譲渡と最恵国待遇、技術開示です」
「金20万というのは、我が国の国家予算10年分に値する価値だ。そんなもの払えるわけがない」
「そうですか。金20万Kgの支払いについては、各種権利でまかなうことや、今後の貴国の行動を鑑みて減額の措置が取られる可能性があります。そのためも減額交渉などをしていただいて構いませんが、もちろん交渉次第ですよ?」
外交官(もちろん棚里)はバナスタシア帝国の皇帝の発言を露骨に無視した。しかし、それを指摘できるほど担当者の肝は据わっていなかった。国益を考えると下手な行動は避けて当然なのだが。
「心得ている。寛大な措置、感謝する」
これに対して、バシナリウス八世は一応感謝した。今まで自らの行ってきた国策に比べると、日本の対応は大変優しいものであった。
「では、日本国としては以上です。あとの細かい調整はオルスター王国と行ってください。最後にあなたの本当のお名前は?」
「梓睿という。でも私は次男だったから黒孩子だ。だから戸籍も国籍もない。一応兄が基本的なことは教えてくれたが、初級中学以上のことはやっていない」
「ではどのように生計を?」
「中国からコカインとかを日本に密輸していたよ。でもある時中国海警に摘発されてな。見事にドカンといかれたよ。それで死んだってわけさ」
「一応日本の法律上、あなたは犯罪者ですが、転移してきたわけではないですしね」
こうして、講和条約締結に向けて、調整が開始された。これとともに、国境に展開していた自衛隊の撤収命令が下った。
バナスタシア帝国 国務行政室
国務行政室では皇帝不在の今、これからの帝国の方向を決めていた。そのため、残る高級官僚たちはこの華麗な室内につどっていた。
「くそ。皇帝陛下が降伏なさるとは...」
「我々は抗戦するぞ!」
軍務大臣が声を上げる。それに一部の官僚は追随する。
「ちょっと待て。あの皇帝陛下が降伏なさるとはよほどのことだ。他国の協力を仰ぐのは?」
「馬鹿か。我々の主権が侵されかねん」
「ではこのまま降伏するか?」
「くっ...仕方がない。トルマンに使者を出すしかないな。シーランドは関係があれだしな」
「よし。トルマン王国に使者を出そう。三大強国にすがるのは大変不本意だが」
「あと現在展開中の兵は撤退するように見せかけて、合戦準備は保持しておけ」
「了解」
北青原基地
第309飛行隊では今回の戦争でF-4EJ改の機体の寿命が来ていた。
F-4EJ改の修理部品は半数以上が消費され、もう飛ぶのもやっとな状態であった。
そのため、アラート任務には4機しかないF/T-4が就いた。しかし、後部座席を潰して電子機器を詰め込んだF/T-4は、真の戦闘機であるF-4に探知能力が劣る。
また、練習機であるためエンジン推力が低く、重武装出来なくなっていたりと不満は多かった。
なお、この戦争により、1機のF-4EJ改が機体の経年劣化により、部品取りとなった。
そして、数時間おきに北青原基地には飛行機が飛来していた。もちろん、旅客機ではなく、P-1およびP-3Cであった。哨戒機がこの空域に飛んでいるのはもちろん平時のアラート任務でもあるが、いまだに正式に講和条約を締結していないことや、反乱を起こされる可能性を捨てきれていなかったからだ。
地球での国家間の常識が通用していないことが、バナスタシア帝国訪問で分かったり、この世界の情勢が完全に掌握できていないための対応であるが、偵察衛星(日本名は情報収集衛星)を失ったことも大きく関係していた。
陸上自衛隊の隊員(通常勤務)が寝静まった時間帯でも、容赦なくP-1が騒音を上げながら着陸する。P-1は諸外国の哨戒機や戦闘機よりも騒音が抑えられているとはいえ、陸自の隊員たちには苦痛でしかなかった。また、普段の訓練でF-4EJ改やF/T-4も飛行する。
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