日本は異世界で平和に過ごしたいようです

こああい

第38話

1か月後。


「先輩。対空レーダーに反応あります」
「ん?なんだこんな夜中に。敵かな?」


高射特科の当直がレーダーに敵を発見する。


「一応87と近SAMの警戒態勢と航空部隊の要請するか」
「そうすね。北青原の方に連絡入れます」
「了解。しかしねみぃな」


その後、87式自走高射機関砲と93式近距離地対空誘導弾は射撃体勢に移行した。


「4目標は現位置より25Kmほど。国境まであと5Km」
「奴らは越境するつもりなのか?」


高射特科隊本部は半数が起床して任務に就いていた。


「本当は威嚇行為とかじゃないのか?いつものロシア空軍だろ」
「いや~どうでしょうかね。そんな兆候なかったですから」
「う~ん。しっかし暗いな」
「日本の都会ってすげぇよな」
「北青原から通信です。空自より戦闘機2機が上がったそうです」
「あれ?北青原に空自の部隊ってまだ残ってた?」
「いや新たに新編された奴ですよ」
「ほへー。でも空自に戦闘機のストックって」
「ないはずですよねぇ。財務省とアメリカ許すまじ」






「レーダーに映ってるんですが、T-4とF-4EJってなってますね。まだ日本領ですけど」
「ファントムはわかるんだが、なぜにT-4?」
「T-4って武装あるんですか?」
「いや~なかったような。だってあれ練習機だぜ」
「ていうかF-4EJって退役したんじゃないですか」
「多分な。空自の人間じゃないから詳しいこと言えんが、もう40年くらい経ってるじゃないか?」


隊長は眠い目をこすりながら雑談を交わしていた。そこにレーダ員の報告が入る。


「4目標、急速接近!高度低下」
「おいおい。対空射撃用意」


隊長は表情を一変させ、戦闘を命じる。


「目標350ノット程度まで増速。国境を越えました」
「オルスター王国に連絡。条約に基づく領空侵犯における措置を発動する旨を伝えてくれ」
「近SAM、目標まで2Km付近になったら射撃しろ。外すなよ。87式は曳光弾にて同距離で射撃」
「早く戦闘機来いよ。この対空装備じゃ不安があるし」


「目標、そろそろ設定距離に到達。目視確認」
「対空射撃、目標レーダーの通り、87式撃ち方始め」


87式自走高射機関砲が大きな射撃音をまき散らしながら、目標に向かって鉛玉を吐き出す。


「撃ち方待て。2つの目標を撃墜。残り未だ飛行中」
「近SAM攻撃始め。87式も射撃継続」


高機動車の車体から、2本の誘導弾が飛んでいく。


「誘導弾1発命中。1目標撃墜失敗」
「隊長。周囲で爆撃が起こっています。退避した方が」
「仕方がない。総員、退避せよ。繰り返す、総員退避」


部隊が展開していた周辺に、爆弾らしきものが投下されたことを確認したため、隊長は隊員たちの安全を第一にするため、部隊の即時避難を命じた。


『残留部隊より司令部。現在敵航空戦力より攻撃を受けている』
『こちら司令部。空自の戦闘機が現在そちらに向かっている。被害状況を確認せよ』
『了解』


その後、空自の戦闘機2機によって敵飛行戦力の掃討が確認された。
こちら側の被害は、自衛官2名が重傷。93式近距離地対空誘導弾が1セット使用不能となった。自衛官はヘリによって搬送され、一命をとりとめた。


『こちらサイキック01、目標まであと30マイル』
『了解。現地部隊が攻撃を受けている。即時ミサイル攻撃開始』
『了解。FOX1』


F-4EJ改に搭載されていた、AIM-7Mが1本飛び出していく。


いくらか時間が過ぎる。


『ビンゴ。目標撃墜。レーダーに敵影なし』
『よくやった。今度飲みに行こうぜ。』
『楽しみにしてるぜ。Mission complete. RTB(Return To Base).』


2機の戦闘機(仮)は敵を撃墜し、基地へ帰っていった。交信がフリーダムすぎるのは気にしてはいけないのだ。


翌朝。
国境付近の上空にヘリが列をなして飛んでいた。
残留部隊の一人は「ワルキューレの騎行が聞こえるぞ」などと言っていた。


今回飛来したのはUH-1Jが4機とOH-1が1機、UH-60JAが2機。目的は撃墜した敵飛行勢力の評価と生存者救助のためであった。
ちなみに日本領から国境までは直線距離約240Kmとなっており、前2機種の航続距離的には大変厳しいものであった。
そのため飛来した部隊もヘリを降りざるを得なかったのだが、仕方がない。


その後、上空からの捜索によって全体が穴だらけになった生き物を発見した。全長はイルカほどで、全身には鉄で出来ていると思われる装甲や、対空火器と推測されるものも発見された。なお操縦手は死亡していた。


防衛省の判断では、撃墜したうちの損傷が軽微(=機関砲で撃墜)であるものを1体CH-47JAでつるし上げて回収することが決定された。よって、バナスタシア帝国との国境付近より日本とオルスター王国の国境付近の給油所を経由して北青原駐屯地まで向かうという航路で、大変乗員の負担がかかるものであった。(なお調査隊もこの航路を採用)





コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品