日本は異世界で平和に過ごしたいようです

こああい

第36話

防衛装備庁
「まず陸自の部隊運用だな」


統合幕僚長が告げる。今、会議に参加しているのは、防衛大臣政務官、統合幕僚長、陸・海・空幕僚長、防衛装備庁長官である。(あとそれに伴う補佐官)


「陸上自衛隊は先日、第21師団を編成いたしまして、特域方面の警備にあたっております。基本的には北海道にある第2・5・7・11師団より人員を抽出して発足させたため、旅団規模の人員となっています。
このため、現在政府の方で計画が進んでいる特域開発計画ですが、特域内における魔獣掃討等の任務運用について人員不足及び装備不足が懸念されております。
現在装備に関して言えば、なけなしの装備を北海道や富士から集めて運用しておりますが、北海道はロシア等の仮想敵国に対して保持しておきたいですし、富士のやつは新人教育に用いるやつなので早めに戻したいですね。なので新規装備または既存装備の増備をお願いしたいですね。
人員に関してはとりあえずはなんとかなりそうですが、今後不足は予想されますね。これは自衛隊全体でも言えることですから、仕方がないのかもしれませんが。」
「う~ん、自衛官の不足は大問題ですね。いっそ特域を餌にして増やしますかね」


防衛大臣政務官がトンデモ発言をする。しかし自衛官の不足はここ数年での自衛隊の課題であった。少子高齢化に加えて、自衛隊自体の体質も問題であるからだ。


「海上自衛隊は奇跡的に全艦艇が日本に残っておりましたので、当分の間はローテで行けると思います。ただ、こちらもやはり隊員不足、艦艇の老朽化が見込まれます。特に最近重用しているはやぶさ型ミサイル艇などはそろそろ退役となっておりますが、あのサイズはこの世界では非常に便利であり、改修を行いたいとの声が海幕の中で上がっております」
「現在開発中のFFMでも現任務は対応可能ではないのか?」


防衛装備庁長官が疑問を呈す。


「いえ、あの小型サイズと高速性が良いのです。新しいFFMは130mほどあるでしょう。しかしこの世界の平均的な港湾施設はせいぜい100m程度までしか対応していません。海軍の主力軍港ならうちの艦も入港できるでしょうが」
「わかりました。一応近代化改修と寿命延長の案の議論を始めておきましょう」
「航空自衛隊ですが、現在導入中であったF-35が導入できないことから、現在運用中の機体を順次退役させていっているところを、一旦停止しております。
また、特域方面に対しての航空戦力も一定数確保しておきたいです。現在確認できるものでも、オルスター王国航空隊に500km/h程度を出せる飛行生物がありますので、さらなる脅威に備えることも必須事項と考えております。
そして、現在運用している早期警戒管制機も対生物の探知能力に欠けていると思われます。そのため、早期警戒管制機の新型開発も次期戦闘機と合わせてお願いしたいと思います。また火器は、爆弾と一部のミサイルの国産化をお願いしたい。
部隊運用に関しては既存部隊の転進で対応したいと思います」
「つまり、戦闘機及びAWACSの増備をしたいと」
「そういうことです」
「ちょっといいですかね。いくら防衛予算が増強されるとはいえ、限度があると思うのですが」


またもや防衛大臣政務官が口をはさむ。


「最悪現在確保している石油生産地を自衛隊の敷地にして、そこから石油を売却すれば何とかなると思うのですが」
「国民からの反発も考えられるのでは?」
「そこは"特域に存在する魔獣に対しての十分な防護力を持つ自衛隊がこの事業を行うのに適切"とか言っとけばいいのですよ。現に警察レベルでは対処しきれない魔獣もあるのですから。そして事業は一部民間に委託するということでいいのではないですか」


陸幕長からこれまた左の人が聞けば騒ぎそうな発言をする。一応明記しておくが、ここは防衛装備庁の会議室で周囲には誰にもいない構造かつ防音の構造であるから、こういった発言が出来るのである。


「とりあえず防衛装備庁は陸自向けに現有装備の再生産及び能力向上型の開発、海自向けにはやぶさ型の能力向上型生産ないし寿命延長及びミサイル・火砲の国産化。空自向けにはF-4ないしはF-15の再生産ないしは次期戦闘機の早期生産開始、早期警戒管制機の新規開発、AMRAAM相当のミサイルとJDAMの代用システム開発を行います」
「よろしくお願いします」
「では財務省に補正予算組んでもらうようにお願いしますか。あと防衛省・外務省に講和において賠償金を多めにとるように掛け合っておきますね」


防衛装備庁長官はこの場を締めることとした。防衛大臣政務官が悲壮な顔で会議場を出ていったことは触れないでおこう。


バナスタシア帝国軍 総合司令部


「では今から対オルスター王国及び日本の侵攻計画について始めたいと思います」
「まずは陸軍から頼む」


バシナリウス八世は目をとがらせながら聞く。


「陸軍は特定国家向け歩兵部隊・戦車部隊・飛竜部隊・大砲部隊などを移動させて事に当たる予定です」
「大丈夫なのか?あの部隊は抑止力となっている部隊であるはずだが」
「もちろん抑止力は残しておきたいため、今回移動させるのは全体の3分の2とします。また、陸軍先進研究所より試製ではありますが中型戦車2号型と大砲戦車3号型をそれぞれ6両ずつ向かわせます。本来はオルスター王国は戦車や戦車に対抗する武器を保持していないはずなのですが、ニホンが大型の戦車らしきものを運用していたため、それに対抗する形で向かわせます。
また、未知の広範囲攻撃に対しては魔導部隊による防御魔法を前線部隊に付与することで対応したいと思います。前回の攻撃では戦車の反射と硬化魔法を付与した装甲で守られた戦車兵と歩兵がいたため、対魔法兵器を使用していないと思われますため」
「なるほどな。分かった。でもそれじゃあなぜ戦車が撃破されたのだ?」
「それは敵の大砲が直撃したからでしょう。いくら反射・硬化を用いても貫通されるときはありますので」
「そうか。次、海軍」
「はい。海軍は先日主力艦隊である第6艦隊を喪失いたしました。原因はニホンの海軍によるものと考えられています。しかし、翼竜搭載型竜母が1隻付属していたのにかかわらず、生還した艦が1隻もありませんでした。そのため撃沈要因がいまだ不明であります。そのため、こちらも我が海軍主力の飛竜搭載型竜母1隻と、最新鋭戦艦2隻を投入いたします。
飛竜搭載型は翼竜搭載型に比べ、竜母自体のサイズがでかくなってしまいますが、その分飛竜の方が翼竜に比べて多くの対艦兵器を携行できます。
今回投入する対艦兵器は魔導誘導型対艦爆弾と、海上浮遊型爆弾です。
そして最新鋭の戦艦は我がバナスタシア帝国海軍において対シーランド共和国向けに生産している戦艦です。主砲は新開発した305mmの連装砲2基、そして陸軍より流用した194mm単装連装砲が10基、その他対空機銃なども搭載しております。また魚雷も投入することより、魚雷艇なども投入いたします。魚雷はまだ完全に試験が終了しておりませんがかまわず実戦投入いたします」
「ほう。魚雷か。魚雷は1度に数本投下して命中率を上げろ。目的は相手の航行を妨害することだ。決して破壊しなくてよい。動きを止めて飛竜部隊の爆弾で誘爆させよ」
「了解しました!」


バシナリウス八世は冷静沈着に指示を出していく。


「飛行隊はどうだ?」
「陸軍飛行隊は飛竜・翼竜に対地装備を配備しております。対地は魔石の直接投下による爆発にて敵歩兵部隊の殲滅を狙います」
「魔石を金属の玉に入れて爆発時にその金属が破裂するようにするのはどうかな?」
「流石です陛下。早速実験いたします」
「とりあえず、全軍に次ぐ。次の侵攻は2ヶ月後に実行せよ。そしてオルスター王国とニホンを殲滅せよ」
「「「はっ!」」」





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