日本は異世界で平和に過ごしたいようです

こああい

第35話

現地残留部隊


「いや~うまいっすな」


陸上自衛隊のオルスター王国国境付近に展開していた部隊は、現地民との交流を深めていた。今、食事をとっているのは、現地残留部隊となぜかオルスター王国陸軍の兵士らであった。
残留部隊はもともと現地民、王国陸軍と交流を深めていたのだが、自衛隊の食事を見ていた彼らは自衛隊の食事をうらやましがった。
それもそのはずで、残留部隊には野外炊具によるあったかい食事が支給されていたからである。食料は週に2回、北青原駐屯地から空輸されて届き、冷蔵庫等に保管して調理していた。そのため、メニューもカレーや煮物、野菜炒めと日本人が一般的に食すものが提供されたいた。
しかし、オルスター王国陸軍の兵士らからすれば、「なんであったかいご飯を戦場で食えるんだ?」という心境である。対して自分たちは一切調理していない野菜や肉類、そして少量の酒である。
当然うらやましくなって、我慢しきれなくなった一人の兵士が自衛隊にちょっと分けてくれと頼んだのであった。


「あっいいっすよ。ちょうど若干作りすぎてたし」


という炊事要員からの返答により、その兵士に余りの豚汁が配られた。(豚汁が作られたのは食材が若干余っていたので全部ぶち込んでしまえという現場の適当さ。そのまま隊員に無理強いする予定というね)
その兵士が食すと、家で食べるよりおいしいその豚汁に感動したという。
それを機に王国陸軍の兵士らが次々とクレクレしてくるのである。
当初は各隊員に若干支給する量を減らしていた自衛隊も耐えきれなくなり、司令部へと連絡したのであった。
したらば、「あっじゃあ食材と調味料の送る量増やすからうまいことやってくれ」という返事であった。


それからは王国陸軍兵士らにも自衛隊は食事をふるまうこととなった。そのため野外炊具1号を新たに配備し、それに伴う人員も派遣した。
もちろん、費用はきっちりと外務省が王国政府から搾り取っていた。現地民に対しては食材分の費用を負担してもらうことで対応していた。


防衛省
現在防衛省では装備についての討論が交わされていた。


「では今後の装備運用について」
「えっと。陸自に関しては基本的に国産の兵器を使用しておりましたので、供給は問題ないかと。ただし素材の供給に若干の不安が。
あと、ヘリ部隊の機材は国産じゃないので国産化ないしは再生産をお願いしたいと思います」
「ヘリコプターに関しては防衛装備庁から各メーカーに打診しておきます」
「素材は特域でなんとかしてくれるだろう。海自は?」
「海幕からはミサイルと航空機についてですね。ミサイルは大半が米国からの輸入だったので数に限りが。ヘリなどの航空機もライセンス生産をしているとはいえ不安が残ります」
「う~んあまり好ましくはないが、ミサイル等の国産化に向けて開発を進めてくれ。米国との折り合いは本省側で行っておく」


渋い顔をしながら防衛大臣政務官はGOサインを出す。対艦ミサイルなどは現代の軍艦の要となるもので、撤廃するわけにはいかないだからだ。


「次に空幕から。といっても我が航空自衛隊は大半がライセンス生産ないしは輸入品で成り立っております。そのためか米国から輸入する修理用の部品も手に入らない状態です。現在は国産の部品及び在庫で耐えておりますが、いつ枯渇するかどうか」
「戦闘機などの航空機もか。まずいな」
「それについて防衛装備庁から。まず現在空自の主力戦闘機、F-15Jは退役寸前の機体がございます。F-15SJといわれる型なのですが、このF-15SJのブラックボックスの解析を秘密裏に行っておりました。当初は米国に探知されたら...と思っていましたが、転移したことで米国とのコネクションも途切れましたので、解析速度を早めることは可能です。また、主力の座からはとっくに引いておりますが、F-4EJの解析、これについては半年ほど前に終了しております」
「えっっ」


空幕長が驚きの表情を浮かべている。当然のことながら極秘裏に解析していたのだから、このことを知っているのは防衛装備庁のごくわずかの人間だけである。


「それはつまるところ、主力戦闘機の完全国産生産が出来るということですかね」
「そうなりますね。今まではブラックボックスは輸入しておりましたから。しかし生産ライン等を考慮すると、次期戦闘機の開発と共に生産ないしは活用が良いと考えておりますが。次期戦闘機の計画も早めに実行したいですね。実用化に何年かかるかわからないので」
「分かりました。解析したことはしかるべきタイミングで米国には通知した方が良いのでしょうかね」
「そ、、、うですかね。あまりいい印象はもらえなさそうですが」
「分かりました。こちらも迅速に行ってください」


「あ、あと防衛装備庁の方から。先日より各装備研究所とオルスター王国の技術者より人員を結集して編成された、特別装備研究所の方で解析を進めておりました、バナスタシア帝国海軍が装備していた砲の研究がひと段階終わりましたことを報告させていただきます」
「研究結果は?」
「後日関係各所限定ではありますが、配布させていただく資料に詳しく記載させていただきますが、今回解析した砲は、35.2㎜の口径で砲の奥に魔石が埋め込まれていました。そこに弾倉で15発入っており、毎分600発程度の射撃を可能にしていたようです。
動作原理としては、弾倉から砲身に入った砲弾がそのまま底部まで落下し、底部と接触して魔石が反応し、爆発のような動作をします。それによってエネルギーが砲弾に伝わり、射撃されるとのこと。その際に弾倉にはストッパーがかかっています。つまりストッパーの開閉速度を調整することで砲の制御を行っていたようです。
また、砲身は地球では確認されていない物質が使用されており、非常に冷却効率に優れていました。そして魔石によってエネルギーを得ていますが、その魔石も低発熱であるため、連続射撃が行いやすい仕様でありました。しかし、艦内に残っていました弾倉は10個ほどであったため、弾幕を張るというような運用方法ではなかったと推測しております。また...」




この長ったらしい説明に、陸上・海上幕僚長は理解し、航空幕僚長は「お、おう」と半分理解したようなしていないかという微妙な表情を、防衛大臣政務官は完全に理解していなかった。


「で結局これから国産兵器を作るときに活用できそうなものはあるか?」
「まず、砲身に何かしらの魔法が付与されていたこと、これはオルスター王国の技術者が"反射"と言っておりましたが、この"反射"を使えば、火砲のさらなる高威力化、長射程化が望めます。
また、魔石を用いることによって火薬等との分離かつ、使いまわしが出来ます。つまり、弾丸部分だけで射撃ができる点ですかね。これに関しては魔石の供給が出来ない以上、どうしようもありませんが」
「そうですか。」
「あっでも魔石は陸自の特域駐屯部隊が発見したという報告があったと思います。陸幕で確認いたしますが」
「ほう。ぜひあるのであれば防衛装備庁に回して欲しいですね」
「政府の上に回しておきましょう」
「では次に自衛隊の部隊の運用についてですね」


こうして、防衛装備庁での討論は続いた。この後防衛装備庁大先生が革新的なものを開発するのだが、ずいぶんと後の話にはなるだろう。

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