日本は異世界で平和に過ごしたいようです

こああい

第27話

横須賀基地
横須賀基地には、バナスタシア帝国訪問に用いられる護衛艦隊が集結していた。
今回行くのは、第2護衛隊群の第6護衛隊(と第1護衛隊所属の護衛艦いずも・護衛艦いかづち)である。司令部が横須賀にある第6護衛隊が今回白羽の矢が立ったというわけである。例のごとくいずもは洋上待機であるのでその護衛としていかづちも同行することとなったが、その他の第6護衛隊所属艦はすべてバナスタシア帝国の主要港まで随行する。(なお護衛艦きりしまはイージス艦ということや規模的に無理があるのでお留守番です)


例のごとく外務副大臣...ではなく棚里大臣補佐官が特命大使として赴くこととなった。棚里は不運なことにも地球にはなかった国家とのファーストコンタクトの時に必ずいる存在となってしまったようである。カワイソス。
なお、棚里は平時の外務大臣補佐官となった。担当は未知の諸外国との交渉ということとなっていたが、当の本人はあまり進んで受けたくはなかったようだ。




一方、北青原駐屯地はいつも通りの調査活動を進めていた。第60普通科連隊は平常どうり調査活動を行っているのだが、毎日実弾を多く使用していた。
これは、魔獣(通称である)の仕業でもあるのだが、隊員たちの発砲に対する抵抗感などは薄れていき、円滑に任務は進むようになっていた。
基本的には装軌の車両で編成されている場合は、90式のM2ブローニングで対処、それで撃破できなければ89式の35㎜、90式の120㎜と使用する弾の口径が上がっていく。装輪の車両隊の場合は、16式のM2、87式(偵察警戒車)の25㎜、16式の105㎜という使用順序である。
これは単に弾薬の節約や、乗員の負担軽減のためである。


エンジン音が車内に鳴り響く90式の中では、いつも通りの雑談が行われていた。
「砲手席は視界が砲方向にしかないから退屈だなぁ~車長席変わってくれよ」
「うるさいな。車長席もずっと立って偵察しないといけないからつらいんだよ」
「そうすか。それにしても揺れるな」
「仕方がないさ。舗装されているわけじゃないんだから。そもそも舗装されていたらキドセンとか87式投入するだろ」
「ま、そうだな。そういえば明日からは北海道に帰れるな」
「そうか。でもどうせ1週間ぐらい駐屯地で勤務したらまたこっちに来るんだろ?」
「ほんとにな。独身だから仕方がないけど扱いがひどいな」
「でもなんで北海道の部隊から人員を割くのかな?」
「まぁ一つはチャーター機の出費を抑えるためだろ。そんな頻繁にチャーター機を飛ばすわけにもいかないしな。二つ目はロシアとかが居なくなったからだろうな。攻撃を受けたときに備えて北海道の部隊は予算が多めなんだからな」
もちろん、隊員たちの休暇を確保するために、チャーター機を手配して本土に定期的に輸送を行っていた。
北青原駐屯地で休暇という悲しいことはない。
「確かに。ロシアが居なくなったからそんな人員保持するくらいなら調査に回すね」
「そうなんだよ。だからここに今俺たちが...ていうか前方に水たまりがねえか?」
そういって、車長は双眼鏡を構える。
「なんか黒っぽいな?『全車停止。前方に黒っぽい水たまり発見』」
89式装甲戦闘車から一部の乗員が下車する。そのまま、前方の水たまりの調査をする。
『サンプルを回収した。見解は原油の類のものだが、専門調査を要するものと断定』
「原油か。てか石油って自然と噴き出すものなのか?」
「知らんな。とりあえず、この地点を何かしらマーキングしないと」
「GPSって使えるのか?」
「確かみちびきが2基打ち上がった気がするが、まだ運用始まってないはず」
「とりあえず地図に書き込みたいが、上空から見たいよな」
「ヘリ1機呼びますかね」
その後、UH-1J(特域方面ヘリコプター隊第1飛行隊所属機)が現場にやってきて地図などにより座標記録、写真撮影やサンプルの輸送が行われた。結果は日本が管理する特域のほぼ中央に位置していた。この辺りは、大きな平原が広がっていて、面積は特域の20%ほどという広さである。
特域は平原が30%、森林が70%を占めていて、森林のうちの50%は山脈であったので、アクセス面では協議の必要があった。
なお、特域方面ヘリコプター隊は中部方面ヘリコプター隊の一部が移転してきた。おかげで中部方面航空隊は第1飛行隊のみの編成になってしまったのは内緒なのである。
特域方面飛行隊の編成はUH-1JとOH-1の特域方面ヘリコプター隊と、AH-1Sの第6対戦車ヘリコプター隊が各1個飛行隊である。第6対戦車ヘリコプター隊という名称だが、有事には第5対戦車隊と合同で作戦を遂行するため、正直扱いは微妙であった。
なお、中部方面ヘリコプター隊の第3飛行隊の1個分隊が転属され北青原駐屯地の配属となった。機種はCH-47JAが2機で輸送任務に対応する。


その後本土で調査した結果、件の物質は石油と断定された。しかし地球の中東で産出される石油とは成分が一部異なっているとの研究結果が発表された。
しかし使用する分には影響はないと実証結果が出たため、石油の産出のための事前調査などが開始された。噴出するということから周辺にはある程度の石油の埋蔵が認められたからである。
また、装輪車隊からも同様な報告が次々となされた。石油の噴出や、地表への鉄鉱石、金鉱石の露出が確認された。調査隊はカメラによる写真撮影を行っており、それが気象庁や日本地質学会に回されて判明した。すでに事前採掘も始まっている。
これらの事業は日本政府がコスト度外視で実施することとなっている。採算などを気にしていたら、日本そのものが存続の危機であったからだ。特に石油などは。





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