日本は異世界で平和に過ごしたいようです

こああい

第24話

首相官邸
現在、首相官邸では定例の閣議が行われていた。
「バナスタシア帝国に抗議文を出すか?」
首相が提案する。外務副大臣らの襲撃や、輸送艦隊を狙っての攻撃に対して、彼は激しい憤りを覚えていた。
「どう出すんですか?直接接触したこともないのに」
外務大臣が冷静に反論する。
「オルスター王国経由で渡すか」
「でも聞いた話ではオルスター王国はバナスタシア帝国とあまり仲がよろしくないようだぞ」
「まぁ、とりあえずオルスター王国側に掛け合ってもらうということで」
「分かりました。外務省で処理しておきますね」
「んじゃ次に新たに獲得した土地に関して今、どうなっている?」
「はい、先日より経産省と防衛省が合同で土地開発の準備を行っています。第1種特別地域と呼応することになりました、この地域は第1段階として自衛隊の派遣をいたしました。通常ならば自衛隊の派遣は致さないところですが、ここが異なる惑星であり、バナスタシア帝国からの襲撃もあることから、自衛隊を派遣いたしました。
また、派遣した部隊から、火や氷の矢のようなもので攻撃してくる生物が確認できたとのことです」
防衛大臣は上がってきた資料を読み上げる。
「そんな生き物聞いたことがないな。ちなみに自衛隊に被害はなかったのか?」
「はい。搭乗していた車両の装甲は貫通しなかったようです。しかし、一部車両は撤退を余儀なくされたようです」
「分かった。引き続き調査を迅速に進めてくれ。それと、ある程度の予算増額をしてくれ」
「えっ...わかりました。財務省で予算拡大をいたしますが、昨今の情勢を鑑みるとそれほど予算拡大が出来ないのが本音でありますね」
財務大臣は冷や汗をかきながら答えた。
「仕方がないな。だからこそ新土地の開発を進めないといけん。実質日本領みたいなものだしな」
「はい。領有権以外の一切の権利を譲渡してきていますが、何か裏があると考えるべきでしょうな」
「確かに一般的に考えたら未開発とはいえ、自国の領土をそうやすやすと渡すとは考えられんな」
「それならばいっそ領土権も確保して日本国領とした方が良いのかね」
「それも視野に入れ検討することにしましょうか」
「んじゃ次に、人工衛星の打ち上げ計画に関してはどうなっている?」
「はい、内閣府では関係各所と協議を進めながら、打ち上げの早期実現を進めています」
「一番早くできそうなのは何だ?」
「準天頂衛星みちびきはもともと今年度中の打ち上げを予定していました。若干計画が遅延していたのも相まって、今月中には打ち上げを予定しております。幸い、地球とこの惑星は共通している点が多いことから、既存のシステムは変更することはないだろうとの研究結果も出ました」
「なるほど。早々にも打ち上げできるよう進めてくれ。人工衛星がないおかげで国民の混乱も大きいからな」
「承知しました」
「んじゃ次に外国人の扱いについてだ。惑星転移してからというものの在留している外国人の犯罪が増加しているらしいな」
首相は呆れ顔で尋ねる。惑星転移というのは日本が異世界に転移した時を指す言葉で、政府公式の語句として使用している。
「現在、国内の治安は全体的にみて悪化しとりますな。何せ情勢が不安定ですからな。割合といたしましてはベトナム国籍の犯罪は昨年の同時期に比べ件数的には変化しとりません。それに対して中国・韓国国籍の犯罪は数パーセントの増加になっとります。
また、左寄りの団体が反発を強めてます。昨日政府が発表した、オルスター王国との外交会談について政府が発表した後、自衛隊が派遣されてむっちゃ抗議運動しとりますね。公安の方でも監視お願いしときますね」
「了解しました」
「なぁ、各国の大使館はなんていっとる?」
「外務省には自国民を保護しようとして各大使館からの臨時政府の樹立の宣言に伴う、領土の要求をしています。アメリカ臨時政府の要求は安保上からも認めるにしても、その他政府の要求は一概には言えませんね」
難しい顔をしながら答える外務大臣に防衛大臣が答える。
「アメリカにも強気で行った方がいいでしょう。我が日本が地球に戻れるという保証もありませんし、後々のことを考えると、日本が優位に立つ必要があるでしょう。これについては総理はどう思います?」
「う~ん、ロシア政府は北方領土の問題の解決、韓国政府は竹島や徴用工問題の解決などと各国政府との問題が山積みの現在、問題の解決の上、領土を譲渡するということでどうだ?しかも、日本政府の管理も入るという」
つまり、お前が占有してる領土とかとっとと返せ。じゃないと領土なんか渡せないぞ☆という魂胆だ。
「しかし、これで行くとメディアからの批判は避けられないのでは?」
「でも最近、外国に対する国民感情は悪化していただろう。俺も特に隣国には腹が立っていた。これでホイホイ渡した方がまずい気がする」
「なるほど。では表現を変化させて外務省より発表致しますね」
「では防衛省からは第1種特別地域について発表致します」
「分かった。よろしく頼む」
定例閣議で日本のこれからの指針がまた一つ決まった。これがどう転ぶかは神のみぞ知る。

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