日本は異世界で平和に過ごしたいようです

こああい

第17話

王城
「では夜の会談をはじめましょう」
「よろしくお願いします」
一通りの文化交流を終えた使節団は続いて日本において物資の輸入交渉や、鉱物採掘権などを得ようとしていた。
実際、食糧に関しては何とかなっているものの、金属関係は原材料がないので生産が出来ていない。
また、石油などのエネルギーに関しても燃料の輸入が出来ないため、半年ほどで燃料が底を尽きてしまう。そのため、原子力発電所の運用を停止しているところの再稼働などでつなごうとしているがそれでも100%供給できる見込みはない。
「では我が日本から。我が国では圧倒的に物資が不足しています。そこで我が国からの要求は主に鉱物の採掘権を頂きたいと思います」
「鉱物の採掘権と仰っていますが、具体的にはどのような金属でしょう?」
「銅、鉛、亜鉛、鉄、錫、アルミニウム、リチウム、(以下略」
「あ、あの。前半部分は大方分かるのですが、後半部分に関してはちょっと知りませんが」
「大丈夫ですよ。鉱物の採掘権を頂ければ。もちろん相応の対価もお支払いいたします」
「ではその件に関しては明朝回答いたします。次に我が国の要求について。我が国は先述した通り、軍備や技術が劣っている国家であります。そのため、日本からは技術の提供をしていただきたいと思います。特に先ほど拝見させていただきましたが、"車"というものですか?あれはとても興味深く思いましたね」
「自動車に関しては輸出でしかご対応できないと思われます。我が国では現在外部への技術流出を防ぐための法律が国会で審議されております。後に可決されると思いますので、技術提供に関しては輸出という形でご対応せざるを得ません。そして、自動車に関しては規則を作っていただきたいと思っています。我が国では免許という制度がございますのでそれに倣っていただきたく思います」
「なるほど。自動車の技術提供に関しては残念ですが輸入でもかまいません。しかし、それを発展させることは構いませんね?」
「え~と。それは本国に確認いたします。私共の管轄ではございませんので」
「わかりました。では次にオルスター王国との連絡として、大使館の設置をしてもよろしいでしょうか」
「大使館とはなんでしょうか」
「大使館とは簡単に言えば大使が駐留する建物です。その建物を含む敷地は不可侵で法律はその国のものが適用されるというものです。いわば大使館は大使館を設置している国の領土となるわけです。もちろん我が日本にも設置していただいて構いません」
「そういう制度を初耳ですが、効率的ではあるでしょうね。こちらも併せて検討しておきます。」
「ありがとうございます。そしてこちらもまた我が国に存在しているのですが、安全保障条約をむすびませんか?これは簡単に言えば条約を結んでいる国が危機にさらされた場合、介入して適切に武力行使を行うというものです。オルスター王国は我が国にとって現在生命線ともいうべき国家です。なので失うべきではないと思っています。もちろんこの条約は対等であるべきとも考えています」
「それはもし我が国が攻撃された場合は日本が一緒に反撃していただけるのでしょうか」
「我が国にはご存じの通り交戦権がございません。そのため戦争を行うことが出来ません。その点は留意していただけるようお願いします。対応に関しては状況によりますが後方支援程度に収まるかと思われます。もちろん我が国が攻撃された場合は別ですが」
「ではその条約を締結できるよう調整します。こちら側としましては日本のような国と条約を結べるのは非常に心強いです。さきほど拝見させていただいた"護衛艦"なるものでしたっけ。あんな巨大な金属製の船舶が動くというのは日本の技術力にただただ感心いたしました」
「お褒めにいただきありがとうございます。では次に先日我が国に所属する船舶が襲撃された事案を受けて、襲撃した船舶の海からの引き上げを行いたいので、その可否を」
「ああ。先日は我が海軍が急行できず申し訳ございませんでした。その件に関してはどうぞやっていただいて構いません。もちろん周辺海域の漁船などには気を付けてくださいね」
「周辺海域の封鎖もこちらでやって構いませんか?」
「はい。構いません」
「ありがとうございます。では近頃実施いたします。こちらからは以上です」
「こちら側からも以上です。ではこれにて閉会ということで」
「ありがとうございました」






少し前
オルスター王国の人間を自衛艦隊に招待していた。未知の国家と条約を結ぶときにことを有利に進められないかと政府の思惑が入っていることは伏せておこう。あらかじめ確保しておいた敷地に輸送ヘリコプターMCH-101を停めて、王都からヘリで派遣艦隊のところまで飛んでいくという方法だ。
オルスター王国側には騒音のする乗り物を持ってきてよいかと聞いただけなので、快く了承してくれたが、若干引いていそうな様子だった。


ヘリコプターの機内で一生懸命説明しながらヘッドセットを配り終えたため、案内役が自己紹介を始める。
「今より、海上自衛隊の自衛艦を紹介いたします。私は増野三等海尉です。まず今から乗船いただく船は海上自衛隊最大の輸送艦"おおすみ"です。あのLCACの母船でもございます。基準排水量は8900tで最大1000人程度の輸送が出来ます。なお同型艦は3隻ございます」
「これは巨大な船舶ですな。しかも金属で出来ているのか」
「はい。海上自衛隊の保有する艦艇は一部を除きすべて金属製で出来ております。」
「そして今申し上げたのはエアクッション艇1号型、通称LCACです。水陸両用のホバークラフトで6隻を保有しています。今回の護衛任務の車両も運送いたしました」
「水上と陸上の両方を移動できるのか...これまた仕組みが気になる」
「では今から輸送艦おおすみに乗船いたします。揺れにご注意ください」
MCH-101輸送ヘリコプターに乗せられてきた一行は騒音で聞こえづらそうにしていたが、そんなことはお構いなく大声でしゃべり続ける増野三等海尉であった。
「では次に今回の派遣艦隊の旗艦である護衛艦"かが"をご紹介いたしましょう。先ほども乗っていただいたあの輸送ヘリコプターMCH-101に乗っていただきます。」
おおすみの甲板に案内された一行は、次にかがに案内されることになった。すでに頭の中が混乱していそうだったが気にしない。


MCH-101から降りた一行はかがの艦内でおもてなしを受ける。
「皆さん初めまして。私は護衛艦かが艦長木村 勝信きむら まさのぶ一等海佐であります。いまから我々の保有する自衛艦や装備についてご説明いたしましょう」
「まず現在乗船いただいているのは護衛艦かがであります。現在海上自衛隊が保有する自衛艦では最大規模を誇っております。なお同型艦として護衛艦いずもがございます。
今回の派遣艦隊でははやぶさ型ミサイル艇2隻、輸送艇1号型1隻、輸送艦おおすみ、護衛艦たかなみ、護衛艦てるづき、そしてこの護衛艦かがが投入されております」
「ヘリコプターでしたかな。そこから見えたのがご説明いただいた艦船ということですか」
「その通りでございます。残念ながらアトラン港まで行けるのは、はやぶさ型ミサイル艇、輸送艇1号型しかございませんので我々は洋上待機となっております。ぜひとも我々が接岸できるような施設を整備してほしいものですな」
「ははは。検討しておきます」
オルスター王国海軍の保有する艦艇はせいぜい100m級であるので、護衛艦かがが停泊できるような施設は整備されていなかったのである。そのせいか王国側の一行は若干顔をしかめていた。
「もしよければ我が国で対価の一環として整備いたしますよ。その方が効率的な輸送も望めますしね」
「ありがとうございます...」
「では護衛艦が保有する火力をご覧いただきましょう。残念ながら映像でしかご紹介できないのが申し訳ありませんが。
まず、ほぼ全艦艇に装備されている速射砲です。装備しているものに差異はありますが」
プロジェクターから映しだされる映像から、射撃の音が部屋中に鳴り響いていた。
「こんなものが全部についているのか...」
「はい。まぁ大型の護衛艦には付随する護衛艦がいますので装備されていませんが。ほかにも装備はございますが時間の都合上説明は割愛させていただきます。
次に、対空レーダー、ソナーについてご説明させていただきます・・・」


速射砲以外の武装を紹介しなかったのは理由があった。むやみやたらとこちら側の手の内を開示する必要はないからである。この情報が漏洩することも考え、有効射程やレーダーなどの探知距離などもすべて開示しなかった。

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