日本は異世界で平和に過ごしたいようです

こああい

第8話

巡視船こうや
巡視船こうやでは、船体被弾に伴う正当防衛射撃が実施されていた。しかし、3.8Kmも離れた目標に巡視船搭載の機関銃ではあまり効果がなかった。
しかし、相手側の攻撃は当たり続けている。先ほどもエンジン1基が被弾し、速力が低下している状態だ。
「船長、護衛艦よりヘリコプターが離艦したそうです。あと10分で到着とのこと」
「分かった。あと弾薬はどれくらい持つか?」
「このペースだと5分ぐらいで切れます!速力が低下しているので相手より航行速度が遅くなっていて、敵艦との距離が縮まっています。さらに、敵艦は矢のようなものを使用しています」
その時、艦橋の防弾ガラスが1枚割れた。防弾ガラスに繰り返し砲撃がされ、そのダメージに耐えきれなくなったのだろう。艦橋では大混乱が起きていた。なにせ防弾ガラスが砕け散ったのだから。
「総員、かがめ!攻撃が当たらないようにしろ」
この破片で乗員2人が負傷した。その2人を後ろに引きずりながら、船長も後ろに下がった。
敵艦から定期的に音が聞こえていた。しかし、そう長くは続かなかった。


突如、大きな音が周辺に響き渡る。
「なんだ?」
そう言って乗員が立ち上がろうとする。
「馬鹿か!しゃがんでろ」
船長が叱責する。交戦時に頭を出すなど自殺行為だ。すると、無線機より通話が聞こえてきた。


『こちら海上自衛隊護衛艦かが。護衛艦さみだれによる対艦攻撃を実施した。そちらには同じく護衛艦さみだれが向かっている。被害状況を報告せよ』
「こちら巡視船こうや。当船エンジンが2基被弾しています。そして保安官2名と自衛官1名が負傷している。」
『了解した。状況終了後ヘリにて本国に直接輸送する』


「大丈夫か、真内?」
「だ、だいじょぶ...」
うめいた声で答えるさまは明らかに大丈夫ではない。心臓部に矢が突き刺さっている。その矢を別の乗員が引き抜こうとする。
「やめろ!出血多量で死ぬぞ」
船長が制止する。矢は大抵抜けないようにがついているので、無理に引き抜こうとしてはいけないのだ。
しばらくしたら、SH-60Kがこうやの上空にやってきた。そのまま、沈没しかけている敵船の上空に飛び去っていく。




その後、護衛艦さみだれが現場海域にやってきた。しかし一筋縄ではいかなかった。




防衛省 
防衛省では護衛艦隊を派遣したことについての記者会見を行っていた。
「まず、報告事項から。1つ目は、昨日、オルスター王国との外交官交流のために第4護衛隊群第4護衛隊と海上保安庁の巡視船こうやによる警護を実施しました。これにより、無事にオルスター王国に到着し、会談を実施したとのことです。また外交官の警護として第37普通科連隊の隊員12名を派遣いたしました。
2つ目は、先日の飛行生物の領空侵犯に対しての処置として、全国の哨戒機を保有する部隊に対し、哨戒機による監視を強化せよとの指示を下しました。これは、全国に配備されているレーダーサイトでは飛行生物を探知できないからであります。
3つ目は、昨日、第1護衛隊群第5護衛隊所属の護衛艦ありあけの、遭難信号を哨戒中の航空機が受信しました。該船はソマリア沖の海賊対処部隊として派遣していた艦であります。護衛艦ありあけは哨戒機からの通信に応じ、1週間後ごろ、定係港に帰投するとのことです。関係各所の皆様には、ご安心いただきたいと思います」
-では質疑応答に移らさせていただきます
「朝夕放送の田中です。今回のオルスター王国との交流について、護衛艦隊の大規模派遣について、これからの交流でも同規模の派遣をお考えでしょうか。また、この派遣に関するオルスター王国への武力による威嚇になるのではないでしょうか」
「まず、護衛艦隊の派遣に関しては未知の脅威に対処するためであり、決して武力による威嚇ではないと考えております。また、今後の交流に関しても今回より若干小規模になれども護衛艦隊の派遣は考えております。なお、オルスター王国側からの艦隊派遣については承諾の意を...
「いったん記者会見を中止します。これより、内田統合幕僚長からの緊急会見を行います」
突如、防衛大臣による記者会見が取りやめられる。そして、防衛大臣が下がった後に内田統合幕僚長が登壇する。
「え~緊急事態ですので端的にお伝えいたします。1422、派遣艦隊である巡視船こうやが不審船より攻撃を受けました。これにより巡視船こうやが該船上空に威嚇射撃、そして該船船体に正当防衛射撃を実施しました」
内田統幕長が発した言葉に記者団に動揺が走る。記者の中には、走って会場から飛び出していく者もいた。
「また、これによる被害として巡視船こうやのエンジン1基が停止したのと、巡視船こうやに乗船していた自衛官1名が負傷したとのことです。護衛艦隊からは護衛艦さみだれが現場海域に急行したとのことです。以上です」
記者団よりフラッシュが浴びせられる。そのうちの記者の一人から質問が投げかけられる。
「巡視船こうやの被害及び該船への被害はどうなってますか!」
「被害状況および現場の状況に関しては、報告が上がっていませんのでお答えすることが出来ません」
そこに、統合幕僚監部報道官がやってくる。そして幕僚長に伝達する。
「なに?まずいだろ!...すみません、取り乱してしまいました。護衛艦さざなみより正当防衛および緊急避難に本件が該当するとの判断により、該船に対し艦砲射撃を実施したとのこと。なお該船後方に命中し、該船は停止したとのこと」


このことは各局が速報を出した。また続報によって世論が大きく変わることをまだ閣僚たちは知らなかった。

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