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魔導と迷宮~最強の冒険者は少女を育てるようです~

ノベルバユーザー465165

51話

 迷宮都市に帰りつき、一晩が明けた。ブラッドがシンシアたちの部屋へとちょうど階段を下りてくる二人の少女の姿が見えた。仮面の男の存在に気付いたのかシンシアは輝くような笑顔を浮かべた。


「お前たち早いな。もう少し休んでいても構わなかったんだぞ」


「お気遣いはありがたいですがそんなやわな鍛え方はされていませんので大丈夫ですよ」


「ん。この程度なんともない」


 シンシアの冗談めかした口調やノインのいつもと変わらぬ様子にブラッドも思わず笑みがこぼれる。


「そうか。それは悪かったな。それで俺を訪ねてきたということは何か用があるのだろう?」


 二人は顔を見合わせ通じ合ったように微かに口角を上げるとシンシアはブラッドを青い瞳で真っ直ぐ見据える。


「私たちと勝負してください」


 ブラッドは少女の目の奥にある煮えたぎる炎のようなものを感じ取り困惑するが、シンシアにも何か思うところがあるのだろうと自分を納得させいつも通りの平坦な口調で答える。


「いいぞ、付いてこい」


 そう言って目の前に黒い穴を出現させる。その空間を繋げる門の先にはいつも修行をしていた緑の生い茂る場所であった。


「さて、勝負とお前は言ったが唯戦えばいいのか?」


「はい、それで構いません。ですが、一対一の真剣勝負でお願いします。いつものように木の剣ではなく実践と同じように魔法も武器も何でもありで」


「なるほど、了解した。それじゃあお前にはこれをやった方がいいか……」


 そう言って黒い空間から黒い鞘に仕舞われた漆黒の剣を取り出すと持ちての方をシンシアに差し出す。


「この前の戦闘で壊れていただろう。その代わりだ。これを使うといい」


 少女はその剣を嬉しそうに受け取るとそのまま異次元袋の中にいれた。その行動に驚きブラッドの体が硬直する。


「先生、この剣はありがたく頂きます。ですが、今回の戦いでは使いません。あなたの力に頼らずに勝負したいので」


 そう言ったシンシアの表情は挑戦的な感情を孕んでおり、以前の彼女には感じられない意思をブラッドは感じた。その様子に思わず大きな笑い声が響く。その声は実に愉快そうで二人の少女はあっけにとられたような顔をしていた。


「いや、すまない。お前がそんなことを言い出すとは思わなくてな」


 ひとしきり笑い終えたブラッドは十分な距離を開けるためシンシアからゆっくりと離れていく。十数メートルほどの空間を確保すると少女の方に向き直る。


「さて、最初はどっちからだ。好きな時に始めていいぞ」


「私からやります」


 シンシアは一歩踏み出し宣言する。シンシアは帝国で得た陽光剣の柄に手を掛けるがブラッドは剣さえ持っておらず棒立ちのままだった。だが、その様子を見てもシンシアは一切緊張感を緩めない。寧ろ、意地でも本気にさせてやるという気迫さえ感じさせる。


「<浮遊する光球/フロートライト>」


 戦いの鐘を鳴らしたのは少女の魔法であった。彼女の体の周りには十数個の光の球が出現している。その魔法にブラッドは思わず感心した。一か月ほど前はまともに魔法さえ使えていなかったのに今では熟練とは言えぬ間でもそれなりの魔法を使えているのだから。だがその感慨に浸っている暇もなく無数の光の球はブラッドに襲い掛かってくる。ブラッドは素早く左方に跳ぶがそれを追尾するように光弾が曲がる。


 男は黒い空間から剣を取り出すと鋭い剣戟を繰り出し、光弾を弾き飛ばす。周りの木々や地面にぶつかった光弾は爆発し、小さなクレーターを作り出していた。ブラッドが光弾を処理している一瞬の隙にシンシアは一気に距離を詰め男の背面を取り、腰の剣を抜き一閃させる。だが、ブラッドは剣の形状を盾のように薄く引き伸ばし危なげなく受ける。シンシアはその対応も予測していたのか剣戟が防がれても冷静に次の一撃へとつなげていく。


「<貫く光撃/スティンガー>」


 薄く広がったブラッドの黒剣に圧縮された鋭い光線が突き刺さる。剣の状態を把握しているブラッドは壊れるのを嫌い、見事な体捌きと剣の腕で光線を受け流す。だが、その一瞬にシンシアはブラッドの懐潜り込んでいた。下段からの切り上げる斬撃がブラッドを襲う。男は思わず目を見開くがすぐさま反応し、元の大きさに戻した剣で迎撃する。


(このままじゃ防がれる!)


 この絶好の機会を逃せないと強く意識したとき、無意識に剣から光を噴射し加速させる。二人の剣戟が飛び交いブラッドの剣はシンシアの数センチ手前で止まっており、シンシアの剣の切っ先は空の方角を向いていた。ブラッドは思わず笑みを浮かべたが、数舜後縦に割れた白い仮面が地面に落ちた。隠れていた銀髪の青年の顔が少女の青い瞳に映ったことが戦いの勝敗を語っていた。





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