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魔導と迷宮~最強の冒険者は少女を育てるようです~

ノベルバユーザー465165

47話

 宝物庫を後にした三人はエミリーと合流し、行きと同様に馬車に乗り帝都を出ていく。わずかに揺れる馬車に背中を預けながらシンシアは帝国であった出来事を思い返していた。セレンと共に様々な依頼をこなしたことや強大な竜と戦ったことが頭を過る。数か月前ならばこんな波乱と興奮の日々を送ることは考えられなかっただろう。何もかも白い仮面で表情の読めない不思議な恩人のおかげだ。


(でも、先生は何で私にこんなに良くしてくれるんだろう。私にここまでする価値はないと思うけど……)


 シンシアは横に腰かけているブラッドにちらりと視線を向ける。その視線に気づいたのか仮面がこちらの方を向く。


「どうした?俺に何か用か?」


 突然声を掛けられ少女は動揺し意味もなく体を忙しなく動かす。


「あ、その……」


「言いたいことがあるなら遠慮なくいえ。今更俺がお前を如何こうすることないからな」


 その言葉に若干の安心感を得たシンシアは胸を撫でおろし、意を決して問いかける。


「先生は何で私をあのとき助けてくれたんですか?私には先生に見初められるものは何もなかったのに……どうして……」


 ブラッドは仮面で隠された表情をわずかに緩め答える。


「お前が自分自身をどう思っているかは知らんが少なくとも俺はお前に才能を感じた。将来攻略者になれるかもしれないと思わせる才能だ。そんなお前があんな矮小な事件で死ぬのは勿体ないと思った。それだけだ」


「でも、あの時の私は魔法もろくに使えないばかりか最後の最後で襲撃者に後れを取りました。知ってるんですよ、敵の首領を先生の手助けで倒したってこと。なのに才能なんて……」


 シンシアは悲壮感が漂う面持ちで呟く。その言葉を聞きブラッドは声を出して笑う。少女はその反応に戸惑い目を白黒させる。


「いや、なにお前がそんなにも傲慢だったとは知らなかったからな。つい笑ってしまった」


「傲慢ですか……」


「そう、傲慢だ」


 シンシアは納得のいかない表情でじっとブラッドを見つめる。


「お前は武装した敵と三対一で戦い勝利するのが当然だと思っているのか?それならば考えを改めた方がいい。普通は不可能なのだから。それにお前を襲ったやつらは素人じゃない。人を殺すことに特化したプロだ。経験も人数も負けていた相手にお前は短期間の訓練だけで接戦まで持ち込んだ。それを傲慢と言わずに何と言うんだ」


「………でも、ノインなら危なげなくあの人たちを退けられたのではないですか」


 それを聞きブラッドはわざとらしくため息をつく。


「まだ本質的なことを理解してないようだな」


 シンシアは口を引き結び沈黙を守り、目で不満を訴える。


「いいか、才能というのは適応能力のことだ。剣に、魔法に、様々な状況に順応する力だ。だからこそ、お前に才能があると言ったんだ。お前はわずかな期間で実力を驚異的に伸ばし、多人数の実力者との戦闘を切り抜け最終的には竜に傷までつけた。少なくとも俺はそんな化け物他にはいないと思っている。そもそもノインがどれほどの鍛錬を積んでいると思っている。十年だぞ。しかもその間優れた師のもとで学び、数々の修羅場も経験している。そんな奴にわずか数か月努力しただけの人間が比肩しているというのに才能がないというのはあまりにも比べられる側が哀れだとは思わないか?」


 シンシアはブラッドの言葉をぶつけられしばらくの間彫像のように動かなくなっていた。少女の胸中には予想よりも自分が認められていたことへの歓喜と自分の考えの浅さを指摘された情けなさが渦巻き、あまりの情報量に脳がついていけなくなっていたからだ。だが、少しずつ気持ちを整理し、冷静さを取り戻していく。シンシアが口を開こうとした時それよりも早く横から気だるそうな声が挟まれる。


「私は思わない。不平等こそ世の真理」


「聞いてたのか」


「ん、聞いてた。だからシアに一言物申す」


 ノインはシンシアの瞳を真っ直ぐと見つめる。その吸い込まれるような不思議な空気間に少女は思わずごくりとのどを鳴らす。


「シアには才能がある。それは私もにいも保証してる。だからシアらしく無茶に、無謀に、衝動的に行動して感情に従えばいい。そうやって私と競い合い強くなることが結果的ににいのためにもなる。つまり何が言いたいかと言うと………」


「ノイン、もういいよ。十分伝わったから」


 シンシアは手のひらをノインの目の前にかざし静止させる。その瞳には今までにないほどの強い輝きが宿っており彼女の言葉を体現していた。シンシアは再びブラッドの方を向き、二人を視界に捉えると軽やかに口を開く。


「先生、ノインありがとう。おかげで心のもやもやはなくなりました。それと先生私の目標はあなたの隣に……いえもうそれだけでは満足できません。私の目標はあなたを超えることです。そのためにこれからも私を強くしてください。よろしくお願いします」


 シンシアは眩しい笑顔でブラッドたちに宣言する。その言葉に二人の口角は自然と上がっていた。


「面白い。やれるものならやってみろ」


「ん。私が一番にやり遂げる」


 その言葉を皮切りに口論のようなスキンシップのような会話が二人の少女の間に流れる。ブラッドはその姿に思わず目を細める。


(弟子の成長というやつは存外うれしいものだな。それにノインがあんなに感情を露にすることは今まで見たことがない。これも同年代の競争相手がいることでの相乗効果というやつだろうか。まあ、どんなものだったとしてもノインを俺に同行させたユニ様の判断は正しかったということか)


 脳裏に浮かぶ自分たちのボスの超人ぶりを改めて認識する。


(まあ、あの人のことだから享楽的な目的のためかもしれないが……)


 ブラッドは一人ごちる。ブラッドが思考の海に浸り、二人の少女が雑談しているうちにいつのまにか王都に戻ってきていた。三人はそれぞれ時間の経つ速さを感じながら馬車から降りる。すると御者をしていたエミリーが近づいてくる。


「シンシアさん、ノインさん。ギルドからお届け物があります。こちらをどうぞ」


 差し出されたのは二つの長方形の箱だった。なんだろうとシンシアたちは思いながら恐る恐る箱を開ける。するとそこには鮮やかな緑色をした冒険者証が入っていた。


「お二人はこの度の竜迎撃の功績を称えられ翠玉等級までランクアップすることになりました。おめでとうございます」


 エミリーはパチパチと手を叩く。少しの間シンシアは呆然としていたが遅れて喜びが込み上げてきたのかノインの方を向き手を上げるように合図した。ノインも意図を察したのか片手をあげ、シンシアのあげられた手のひら目掛けて勢いよく振りぬく。二人の手のひらがぶつかり気持ちの良い音が鳴った。
 

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