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魔導と迷宮~最強の冒険者は少女を育てるようです~

ノベルバユーザー465165

42話

 シンシアとノインは疲労のあまりへたり込んでいるがその視線は砂ぼこりで陰影しか見えない竜の方へと向けられている。シンシアは黒剣を杖のようにして体を支えていたが先ほどの魔法に耐えられなかったのか剣の中腹部分が砕け散り地に伏せる。一瞬剣の欠片に悲し気な視線を向けるが、シンシアの目線はすぐに竜に向けられた。少しずつ土煙がはれ、竜の姿が顕わになった。


「見事であった。強き少女たちよ」


 そう言った竜の体は顔や体の鱗が剥がれ落ち、肉が抉られていた。その半身は赤く染まり死んでいてもおかしくないほどの傷を負っていた。勝利を確信して二人は笑みを浮かべる。


「<治癒光/ヒーリングライト>」


 竜が何らかの魔法を発動させると薄緑色の光が全身を包む。すると、痛々しいほどの傷の数々が見る見るうちに再生していく。肉が隆起し、その上からは頑丈そうな鱗が再び覆う。そして、完全に元の状態に戻った。与えたダメージが一瞬でなくなった現実にシンシアは体を投げ出したまま絶句した。


「そう、暗い顔をするな光の少女よ。お前たちは約定通り我に傷を負わせた。よってお前たちの勝ちだ」


 そう言うと竜は翼を羽ばたかせ宙へと浮き始める。


「今回は強き少女たちに免じて引くがまた同じことが起これば容赦なくこの国を破壊する。努々忘れるなかれ」


 竜は帝都中に声を響かせ、聖霧山の方へ飛び去っていく。帝都の人々はその姿を見送り心に刻む。


 ノインは地面に転がっているシンシアに近づいていく。


「元々竜を殺しきるのは無理だった。だからそんな悔しそうな顔しなくてもいいと思う。寧ろ一矢報いただけでも上出来」


「そうだね。上出来だと思う。でも、先生ならあれくらい簡単にやれるんだと思うとちょっとね……」


「シンシアはにいに追いつきたいの?」


「うん。自分でも無謀だとは思うけどやっぱり先生の隣に立って助けられるような存在になりたい。先生は私の憧れだから」


 その晴れやかな笑顔をノインは眩しく感じ目を細める。そしてニヤリと寝ているシンシアに笑いかけ、手を差し伸べる。


「なら私たちはライバル。私もそこを目指してるから」


 シンシアは一瞬きょとんとした顔をしたがすぐに挑戦的な笑みを浮かべる。


「私負けないから」


「そう。頑張るといい」


 シンシアはノインの手を取りゆっくりと立ち上がる。そして、ノインはシンシアに肩を貸しながらセレンがいる方へと歩いていく。


「そういえばシンシア。シンシアって呼びにくいからシアって呼んでいい?」


 シンシアはにこりと笑いながら頷いた。






 そして、その様子をアインは崩れた城の近くから空間を捻じ曲げ眺めていた。


「まさかここまで成長するとはな。想定外だがうれしい誤算だ。これでノインとも競い合えるようになるだろう。さて、あいつらが着くまでに話を終えないとな」


 アインは仮面をつけ、人間大の黒い穴を開けセレンがいる場所にまで転移する。突然の登場に周りの冒険者達がざわつき始めるがその要望がある人物を連想させ緊張が走っているようだ。


「セレンさん、少しいいですか?」


 怪我人の治療をしているセレンに話しかける。


「このままでよければ」


「もちろん大丈夫です。お時間は取らせませんので。彼は以前伺った家の方に運んでおきました。事の詳細は彼から伺ってください。もし何か御用がある場合はまだ数日は帝国にいるのでギルドの方で問い合わせてください。それでは」


 ブラッドはそれだけ言うと再び黒い穴を出現させ、歩き出す。それを聞きセレンは少し体を震わせるが大きく息を吐き心を落ち着かせる。


「ありがとうございました」


 セレンはブラッドの背中に向けて礼を言った。ブラッドの足は一瞬止まるがすぐに歩き出し、その体は跡形もなく消えた。そして、ブラッドは再び城の方へ戻ってきた。ブラッドは最後の礼の言葉を思い出し、彼女らのこれからに冥福を祈った。



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