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魔導と迷宮~最強の冒険者は少女を育てるようです~

ノベルバユーザー465165

31話

 アインたちが転移した先は聖霧山と言われる場所の山頂だった。常に霧が立ち込め、目の前の光景すらも見ることが難しい場所だ。だが、山頂だけは例外で何かの力が働いているせいか不自然に霧がかかっていない空間が出来上がっている。しかし、二人はそんなことを気にもしていないようでお互いが一定の距離を取るように歩き出す。


「このくらいでいいか?」


「ああ、十分だ。寧ろ俺はここに転移した瞬間に戦いが始まるものだと覚悟していたがな」


 ウェントスは背中に背負っていた大きな弓を左手に持ち、矢筒状の魔動機に手を突っ込み矢を取り出す。


「そんなことはしないさ。俺はお前を正々堂々真正面から倒す気でいるのだから。それに少し聞きたいこともあったしな」


 アインの自信過剰に感じられる言葉を聞き、ウェントスは怒るどころか楽しそうに笑う。


「そうかそうか。俺を正面から破るか……。久しく聞かなかった言葉だ。いいぞ、今は機嫌がいい。何でも答えてやる」


 快活な表情を浮かべるウェントスに釣られるようにアインも薄く笑みを浮かべた。


「お前が持ってるその矢筒、魔導機だろ?どんな機能を持っているんだ?」


 ウェントスは意外そうな顔をした。それはそうだろう。ある程度形状からあの魔導機の能力は予測できることだ。それに今から戦う相手の戦力とも成り得る情報を馬鹿正直に聞いているのだから。だが、ウェントスは何でもないかのようにすぐに答える。


「なんだ、そんなことか。これは魔力を籠めると籠めた魔力の量に応じて質の高い矢を生成するというだけの魔導機だ。確かに俺以外の奴が迷宮から持ち帰ったという話は聞いたことがないからそこそこ貴重な品化もしれんが興味を示すほどのものか?何なら俺に勝てばこれをやるぞ」


「俺はある魔導機を探しているんだ。だから一応見たことがない魔導機について質問したってだけだ。別に欲しいわけじゃない」


「そうか。これでお前が更にやる気を出してくれればと思ったんだが」


「心配しなくてもやる気は出すさ。お前を倒せる程度には出すさ」


 ウェントスは三日月上に口を歪め弓を構える。


「ならその大口に見合う実力を示して見せろ!」


 ウェントスは番えた矢をアインに向けて放つ。高速で迫ってくる矢をアインは剣を鞭のように伸ばし、迎撃する。だが、矢は普通ではありえない軌道を描き、それを躱す。アインは舌打ちしながら黒い空間から二本目の剣を取り出し、それを振るう。アインとウェントスのちょうど間で伸びた剣は矢を切り落とすかに見えたが剣が矢に触れた瞬間、矢が爆発した。その衝撃に思わず体制が崩れるがアインは後ろに跳びながら剣を元に戻し次の攻撃に備える。


(事前にコルネット皇女に聞いていなければ危なかったな。これが風の魔法による矢の軌道操作と爆破の魔法の組み合わせか。やはり厄介だな)


 そんなアインの内心をよそに間髪入れずに今度は三本の矢が放たれる。それぞれが風の魔法によって巧みに操作されアインを囲むように襲い掛かってくる。だが、先ほどの矢の軌道を見て学習したアインは器用に三本とも接近される前に撃ち落す。それぞれが爆発を巻き起こす中アインの鞭のような斬撃が数十メートルは離れているウェントスを襲う。しかし、ウェントスは避けるそぶりも見せず次の矢を矢筒から取り出している。その行動を不審に思いながらも構わずに剣を振りぬくがその刃はウェントスに届くことなく勢いを失い、弾き飛ばされる。


(今度は<風の障壁>か。凄まじい強度だ。これでは半端な攻撃は通らないな)


 アインの思考を掻き消すようにまたも矢が放たれる。今度はさらに増え五本のになっていた。アインは先ほどと同様に三本の矢は撃ち落せた。だが、残りの二本はアインを死に至らしめんと肉薄する。アインは剣を元の長さに戻すと接近してきた矢を普通に迎撃しようとしている。ウェントスは攻撃が命中することを確信しにやりと笑う。しかし、アインを襲う矢の姿は切り払われるとともにウェントスの視界から姿を消した。ウェントスは何が起こったのかわからず思わず目を見開く。


「<虚無の斬撃>、俺はこれをそう名付けている。剣の周りに歪んだ空間を作り出し、触れたものを分解し破壊する。物体であろうと魔法であろうとそのすべてを無に帰す。だからそう名付けた。中々いい名前だと思わないか?」


「確かにいい名前だ。それにいい業だ。その剣の前ではいかなる防御も意味をなさない。俺の天敵のような魔法だ。だが、今見せたのは失敗だったな。一度見ればある程度対策は立てられる。それに今見せた戦法だけが俺の全てと思うなよ」


「そんなことは承知の上だ。だが、俺がその上を行けばいいこと。単純なことだ」


「そうか。その口上が真実であることを信じているぞ。俺はまだこの久しぶりの楽しき闘争を終わらせたくないからな」


「俺もウェントス、あなたと同じ気持ちだ。だが、残念ながら俺はあなたに俺の言葉を証明しなければならない。だから、あなたの欲求は満たされない」


 アインは挑発めいた笑みを浮かべながら語る。それを受けウェントスは獰猛な笑みを浮かべ弓を構える。



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