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魔導と迷宮~最強の冒険者は少女を育てるようです~

ノベルバユーザー465165

24話

 地鳴りのような雄叫びを黒鬼が響かせる。血走った眼をセレンを方へと向けているが迂闊には飛び込んでは来ない。セレンの実力が黒鬼の警戒レベルを引き上げたのだろう。


「シンシア、ノイン、私はこの子を非難させるからあれの相手をしてくれる?」


 セレンは黒鬼から目を離すことなく静かに語りかける。


「ん、問題ない」


「了解しました」


 セレンは後ろに下がり、シンシアたちが代わりに黒鬼に対峙する。黒鬼はその動きを見て近くの木を殴りつけた。大量の木の葉を振らせながら木がへし折れる。それを軽々と持ち上げると槍でも投げるように真っ直ぐシンシアたちに投擲してくる。


 (セレンさんたちが後ろにいるから避けられない。ここは無理にでも魔法で破壊しないと)


 シンシアが魔法を発動しようとするがそれをノインが手で制する。


「<影幕/シャドウカーテン>」


 ノインの足元から影が前方数メートルの位置まで伸び、中空へとせりあがる。それはまるで突如目の前に漆黒の壁ができたようだった。投げられた木が黒い壁にぶつかるがびくともせず折れた木は勢いを無くし壁の前に転がる。黒鬼は苛立ったように荒い息を吐き出している。


「私が突っ込むから目を潰して」


「了解」


 ノインは言葉通りに勢いよく黒鬼の懐に飛び込んでいく。黒鬼は黒く染まった野太い腕を振り上げる。だが、その瞬間眩い光が降り注ぐ。


「<閃光/フラッシュ>」


 あまりの光量に黒鬼は思わず腕を顔を覆い、目を瞑る。その隙を見逃さず双剣の一振りがごつごつとした首に襲い掛かる。ノインは勝利を確信したのか思わず笑みを浮かべる。だが、その表情とは裏腹に少女の剣戟は首の半分ほどの位置で止まる。ノインの瞳が大きく見開かれる。黒鬼は襲撃者を振り払おうと目を瞑ったまま乱暴に腕を振り回す。ノインは軽く舌打ちしながら分厚い胸板を足場にして後ろに跳ぶ。


「ごめん、見誤った。あいつは普通の黒鬼よりも強いみたい。前戦った黒鬼よりもはるかに硬い」


 黒鬼は半ばまで刺さった剣を抜き投げ捨てる。すると先ほど切った首が徐々に再生していく。


「……再生能力も桁違いになってる。これは意外に厄介かも」


「どうする?離れた場所から魔法で削る?」


「でもそれをやるためにはあれを一撃で吹き飛ばせるくらいの威力が必要。だけど現状私たちではその方法はとれない。だから可能な方法で倒す」


「何か作戦があるの?」


「ある。でも確実性はない。それでもやる?」


「やるよ。こんな奴相手に足踏みするわけにはいかない。それに私はノインを信じてるから」


「そう」


 シンシアが笑顔でそう言うとノインは素っ気なく答える。ノインの顔がわずかに朱に染まっているのをシンシアは目ざとく見つけていたがそっと心の中にしまった。だが、その弛緩した空気を裂くような唸り声が響き渡る。


「時間もあまりないようだから手短に伝える。私があれの攻撃を凌ぐからシンシアはさっき私がやったみたいに首の切断を狙って」


「了解」


 その返事が合図であったかのように二人は真っ直ぐに黒鬼へと接近する。黒鬼は荒々しく息を吐きながら太い腕を振り上げる。


「<影針/シャドウニードル>」


 ノインの影が伸び。その黒く細い針は黒鬼の両手両足の関節に突き刺さる。突き刺さった影はさらに細かく分裂し完全に動きを固定する。あまりの痛みに醜い顔がさらに酷くゆがむ。


「はあ!」


 シンシアは気合の乗った声と共に鋭い一撃を加える。だが、先ほどと同様に首を半分ほど切り裂くに止まった。黒鬼は関節を固定されたまま無理やりに倒れこみながら蹴りを放とうとする。


「シンシア、よくやった」


 ノインは影を通して黒鬼の背後に回り込む。シンシアが傷つけた場所のちょうど反対側から残ったもう一振りの双剣で止めの一撃を放つ。その攻撃はシンシアが切断した部分まで到達し見事に黒鬼の首を両断する。その剣戟の勢いのまま大きな頭は地に転がり、蹴りを放つことなく糸が切れた人形のように崩れ落ちた。


「作戦上手くいったね」


 シンシアは輝くような笑みを浮かべ、右手を軽く上げる。


「ん、良い連携だった」


 ノインも口角を少し上げながら右手を上げる。二人はその上げた手をお互いに打ち合う。


 その姿をセレンは少し離れた木陰の隙間から非難させた三人組と共に見ていた。負傷した重戦士風の男もセレンの治癒魔法である程度動けるまでには回復していた。


「おいおい。なんだあいつらは。でたらめに強いじゃねーか」


「銅等級、いやもしかしたら銀等級の力はあるかも」


「……そうかもしれんな。事実、翠玉等級の我らを退けた化け物を無傷で下したのだから」


「セレンさん、あいつら一体誰なんですか」


「あの子たちは王国の攻略者、<虚空>の弟子だそうよ」


「あ、あの最年少攻略者の……」


「それなら……」


 三人組は驚愕しながら口々に意見を交わす。三人の目線が二人の実力に注がれる中セレンは事切れた黒鬼の死体に向けられている。


(黒鬼があんなに強いはずがない。こいつが特別な変異個体だったのか、それともあるいは……)


 セレンは色々と思考を巡らせるがふるふると頭を振り思考を打ち切る。


(今考えることじゃないわね。どうせ情報不足で私では判断が付かない。それよりも今は彼女たちを祝福しないとね。先輩冒険者として)


 セレンは晴れやかな笑顔を浮かべ二人に近づいていった。



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