魔導と迷宮~最強の冒険者は少女を育てるようです~
23話
日が天高く昇り、陽光が降り注ぐ中シンシアたちは帝都近くの<エルボルの森>に来ていた。彼女たちが受けた依頼はこの森で目撃されている<黒鬼/ブラックオーガ>の討伐だからだ。三人は緑が生い茂る森の中を進んでいく。
「二人は何でこの依頼を選んだの?」
セレンは単純な疑問を二人にぶつける。
「私は今まで戦ってきたのは獣型の魔物ばかりでしたので人型の魔物とも戦てみたいと思ったからです」
「特に理由はない。しいてあげるならあの中で一番ましだったから」
二人の答えを聞きセレンは面白そうにこくこくと頷いた。
「なるほどね。シンシアの理由は最もね。冒険者として上を目指すなら様々なタイプの魔物との戦闘を行うのは大事だわ」
シンシアはセレンに褒められ照れ臭そうに頭を掻く。
「それに比べてノインはシンシアの真面目な意見とは対照的な理由ね。余程戦闘に自信があると見えるわね」
セレンが挑発的な視線をノインに送る。だが、ノインはそれを意に介していないように淡々と告げる。
「別にそうゆうつもりはなかった。ただ黒鬼くらいは簡単に狩れるから特に思うところはなかっただけ」
「そう。じゃあ期待しておくわ。でも油断はだめよ。黒鬼は岩を軽く粉砕する筋力に鋼鉄にも匹敵する装甲を持つ上に巨体に見合わない敏捷性もあるから」
「ん、分かってる。一撃も貰うつもりはない。それに攻撃力なら私もシンシアも申し分ない。なんせ翼竜の鱗も両断できるくらいだから」
セレンはその言葉に驚いたような表情を浮かべた。
「翼竜!それは凄い。確かにそれならば黒鬼程度には負けないでしょうね」
「翼竜ってそんなに強いんですか?確かに強かったですけど上級冒険者のセレンさんが驚くほどなんでしょうか?」
シンシアは不思議そうな表情を浮かべている。セレンは少し考えるように顎に手を当てる。
「そうね。確かに上級冒険者なら翼竜は狩れるわ。でも、それは一対一ならの話なの。普通翼竜は群れで行動するからまず一対一で戦えることはないわ。だから、翼竜を狩れるってことはかなり大人数で戦い相手の数的有利を無くすか、少人数で圧倒できる力量があるかのどちらかなの。あなたたちは二人で行動してるところを見るとおそらく後者。だから私は驚いたのよ」
「なるほど。そうだったんですね。でもノインはともかく私は後者の枠には入れるような実力はないです。翼竜を狩れたのは戦いに邪魔が入らないように先生が間引いていましたから」
「先生?やはりあなたたちには教えを受けている師匠がいるのね。どんな人なのかしら」
「王国の迷宮攻略者<虚空>が私たちの師匠」
セレンは驚き半分期待半分といったような表情を浮かべた。ごくりと唾を飲み込む仕草からは若干の緊張が伺える。
「あの最年少攻略者の<虚空>が師匠とはね。正直驚いたわ。彼はパーティーさえ組まない孤高の冒険者と言われているから」
シンシアはそれを聞き体をぴくりと震わせた。自分がブラッドに教えを受けている状況が自分の予想以上に幸運だと再認識され、それを噛み締めたのだろう。ノインはそんなシンシアを尻目にセレンを真っ直ぐ見つめている。
「さっきの反応はそれだけじゃないはず。にい、<虚空>に何かあるの?」
「……ええ。出来れば会いたいと思っているわ。まあ、彼にというよりも攻略者に会いたいというのが本当のところだけど」
ノインはその発言に首をかしげる。ノインが彼女の発言の意図を考えている中シンシアは一つの提案を口にした。
「それなら先生に紹介しましょうか?私たちがお世話になってますからおそらく無下にはされないと思いますよ」
「ありがとう。どうしても会う必要ができたらお願いするわ」
そう言ってセレンはにこりと笑う。その会話を横で聞いていたノインは一つの疑問を口にした。
「誰でもいいから攻略者に会いたいなら帝国の攻略者に会えばいいと思うけどそれはダメなの?」
首をこてんと傾ける少女の仕草にわずかに頬が緩む。だが、答えを口にしようとするセレンはひどく悲し気な表情をしていた。
「……ええ、彼はダメなの。私が会いたいのは彼以外の攻略者」
「それはどういう……」
シンシアがその発言の理由を尋ねようとした時劈くような咆哮が大気を震わせた。
「話は終わり。ここからは警戒を緩めないで行くわよ」
二人は無言で頷く。三人は声がした方に速度を上げて向かう。シンシアはかなりの速さで走っているのにほとんど足音がしない二人の動作を見て人知れず感嘆していた。自分が足を引っ張らないようにしようと必死で二人の動きを真似ながらついていく。黒鬼の声が聞こえてから一分もしないうちに目標を発見する。そこには三人の人間が一匹の黒鬼と対峙していた。黒鬼の拳の一撃を全身を鎧で固めた大男が左手に持つ大盾で防ごうとしている。だが、大男は盾で受けたにも関わらず勢いよく吹き飛ばされ樹木に体を打ち付けられる。その様子を見て仲間の剣士風の男と斥候風の女は声にならないような悲鳴を上げる。黒鬼はその勢いのまま女の方に拳を振るう。
「はあっ!」
気合のこもった声を発しセレンは背負っていた槍を振るう。彼女の鋭い一撃は黒くごつごつした黒鬼の二の腕付近のあたり見事に軌道をそらす。体勢をわずかに崩した黒鬼にチャンスと言わんばかりにすぐさま神速の突きが放たれる。だが、黒鬼は素早く後ろに跳び槍の一撃は空を切る。自分の攻撃を邪魔されたからか黒鬼は醜い顔を歪め、先ほどよりも大きい怒声を響かせた。
「二人は何でこの依頼を選んだの?」
セレンは単純な疑問を二人にぶつける。
「私は今まで戦ってきたのは獣型の魔物ばかりでしたので人型の魔物とも戦てみたいと思ったからです」
「特に理由はない。しいてあげるならあの中で一番ましだったから」
二人の答えを聞きセレンは面白そうにこくこくと頷いた。
「なるほどね。シンシアの理由は最もね。冒険者として上を目指すなら様々なタイプの魔物との戦闘を行うのは大事だわ」
シンシアはセレンに褒められ照れ臭そうに頭を掻く。
「それに比べてノインはシンシアの真面目な意見とは対照的な理由ね。余程戦闘に自信があると見えるわね」
セレンが挑発的な視線をノインに送る。だが、ノインはそれを意に介していないように淡々と告げる。
「別にそうゆうつもりはなかった。ただ黒鬼くらいは簡単に狩れるから特に思うところはなかっただけ」
「そう。じゃあ期待しておくわ。でも油断はだめよ。黒鬼は岩を軽く粉砕する筋力に鋼鉄にも匹敵する装甲を持つ上に巨体に見合わない敏捷性もあるから」
「ん、分かってる。一撃も貰うつもりはない。それに攻撃力なら私もシンシアも申し分ない。なんせ翼竜の鱗も両断できるくらいだから」
セレンはその言葉に驚いたような表情を浮かべた。
「翼竜!それは凄い。確かにそれならば黒鬼程度には負けないでしょうね」
「翼竜ってそんなに強いんですか?確かに強かったですけど上級冒険者のセレンさんが驚くほどなんでしょうか?」
シンシアは不思議そうな表情を浮かべている。セレンは少し考えるように顎に手を当てる。
「そうね。確かに上級冒険者なら翼竜は狩れるわ。でも、それは一対一ならの話なの。普通翼竜は群れで行動するからまず一対一で戦えることはないわ。だから、翼竜を狩れるってことはかなり大人数で戦い相手の数的有利を無くすか、少人数で圧倒できる力量があるかのどちらかなの。あなたたちは二人で行動してるところを見るとおそらく後者。だから私は驚いたのよ」
「なるほど。そうだったんですね。でもノインはともかく私は後者の枠には入れるような実力はないです。翼竜を狩れたのは戦いに邪魔が入らないように先生が間引いていましたから」
「先生?やはりあなたたちには教えを受けている師匠がいるのね。どんな人なのかしら」
「王国の迷宮攻略者<虚空>が私たちの師匠」
セレンは驚き半分期待半分といったような表情を浮かべた。ごくりと唾を飲み込む仕草からは若干の緊張が伺える。
「あの最年少攻略者の<虚空>が師匠とはね。正直驚いたわ。彼はパーティーさえ組まない孤高の冒険者と言われているから」
シンシアはそれを聞き体をぴくりと震わせた。自分がブラッドに教えを受けている状況が自分の予想以上に幸運だと再認識され、それを噛み締めたのだろう。ノインはそんなシンシアを尻目にセレンを真っ直ぐ見つめている。
「さっきの反応はそれだけじゃないはず。にい、<虚空>に何かあるの?」
「……ええ。出来れば会いたいと思っているわ。まあ、彼にというよりも攻略者に会いたいというのが本当のところだけど」
ノインはその発言に首をかしげる。ノインが彼女の発言の意図を考えている中シンシアは一つの提案を口にした。
「それなら先生に紹介しましょうか?私たちがお世話になってますからおそらく無下にはされないと思いますよ」
「ありがとう。どうしても会う必要ができたらお願いするわ」
そう言ってセレンはにこりと笑う。その会話を横で聞いていたノインは一つの疑問を口にした。
「誰でもいいから攻略者に会いたいなら帝国の攻略者に会えばいいと思うけどそれはダメなの?」
首をこてんと傾ける少女の仕草にわずかに頬が緩む。だが、答えを口にしようとするセレンはひどく悲し気な表情をしていた。
「……ええ、彼はダメなの。私が会いたいのは彼以外の攻略者」
「それはどういう……」
シンシアがその発言の理由を尋ねようとした時劈くような咆哮が大気を震わせた。
「話は終わり。ここからは警戒を緩めないで行くわよ」
二人は無言で頷く。三人は声がした方に速度を上げて向かう。シンシアはかなりの速さで走っているのにほとんど足音がしない二人の動作を見て人知れず感嘆していた。自分が足を引っ張らないようにしようと必死で二人の動きを真似ながらついていく。黒鬼の声が聞こえてから一分もしないうちに目標を発見する。そこには三人の人間が一匹の黒鬼と対峙していた。黒鬼の拳の一撃を全身を鎧で固めた大男が左手に持つ大盾で防ごうとしている。だが、大男は盾で受けたにも関わらず勢いよく吹き飛ばされ樹木に体を打ち付けられる。その様子を見て仲間の剣士風の男と斥候風の女は声にならないような悲鳴を上げる。黒鬼はその勢いのまま女の方に拳を振るう。
「はあっ!」
気合のこもった声を発しセレンは背負っていた槍を振るう。彼女の鋭い一撃は黒くごつごつした黒鬼の二の腕付近のあたり見事に軌道をそらす。体勢をわずかに崩した黒鬼にチャンスと言わんばかりにすぐさま神速の突きが放たれる。だが、黒鬼は素早く後ろに跳び槍の一撃は空を切る。自分の攻撃を邪魔されたからか黒鬼は醜い顔を歪め、先ほどよりも大きい怒声を響かせた。
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