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魔導と迷宮~最強の冒険者は少女を育てるようです~

ノベルバユーザー465165

12話

アインは扉を開け、中に入る。そこはテーブルとソファーと最低限の雑貨しかない簡素な部屋だった。テーブルの上にはエンファが言った通りハンドベルが置いてある。他にもティーカップとティーポットも置かれていた。アインは既にソファーに腰かけているコルネット皇女の対面に座る。


「突然の訪問に応じてくださりありがとうございます」


「気にしないでください。私たちはあなたたちの力がなければ命さえも危うい状態なのですから。可能な限りご協力させていただきますよ」


 コルネットは美しい笑みを浮かべる。流石は王国と肩を並べる帝国の皇女、この状況でも一切気品が損なわれていない。


「そう思ってくださっているなら幸いです。それで私がここを訪れたのはこの前聞きそびれたことを聞くためです」


「聞きそびれた……ですか。敢えて聞かなかったの間違いでは?」


 少女はいたずらっ子のような表情をしていた。アインはやれやれといったように肩をすくめる。


「そうともいいますね。今回のことは完全に私個人の知的好奇心を満たす為のものでカームベルとは何も関係ありません。ですから、あくまで対策を練る場であったあの時に話すべきではありませんでしたから」


「そうですか。それで聞きたいこととはなんですか?」


「<天壊>についてです」


 それを聞くとコルネットはぴくりと体を震わせ、瞳孔を大きく開く。


「どうかしましたか?」


「いえ、少し当てが外れたものですから。それで<天壊>についてでしたか。あまり詳しくはないですがよろしいですか?」


「ええ、些細な情報でも構いませんよ」


「それでは僭越ながら語らせていただきます。彼の名はウェントス・エーカーといい攻略者名は<天壊>です。彼は十五歳で冒険者になり、三十五歳の時迷宮を攻略しました。およそ二年前ですね。また、同時期にセレンという女性と結婚しています。それで戦闘スタイルですがレガリアの<星の弓/アステール>と風の魔法を使った弓術です。彼は矢の周りの気流を変化させ、矢の軌道を自在に操ります。しかも風の利用した探知術を併用し目で見えない場所に対しても正確な攻撃を行えます。しかも、迷宮攻略後は爆破の魔法を得たため武器で矢を迎撃しようとすると矢に込められた爆破の魔力で大ダメージを受けてしまいます。私が知っているのはこのくらいですが役に立つでしょうか?」


「もちろんです。寧ろかなり詳細な情報も知っていて驚きました。彼とは何か親交があったわけではないのでしょう?」


「ええ、残念ながら迷宮攻略のセレモニーの時に一度顔を合わせた程度です。ですが、我が国に在籍する攻略者の最低限の情報くらいは頭に入れておきませんと。私にはこれくらいしかできることはありませんから」


 そう言うとコルネットは儚げな笑みを浮かべる。その光景は彼女の美しい容姿と相まってとても絵になる。


「そんなことはありませんよ。少なくとも私にとっては役に立つ情報でした」


 そう言うとアインは徐に立ち上がる。


「私は聞きたいことも聞けたのでこれでお暇しようと思います」


「そうですか。まだお話しをしたかったのですが忙しい身のアイン様を拘束するわけにはまいりません。ですが、一つだけお願いを聞いてもらってもよろしいでしょうか?」


「いいですよ。可能な限りその願いを叶えましょう」


 アインは自信をにじませる表情をする。その様子を見てコルネットはくすりと笑い口を開く。


「もう一度私とお話をする機会を設けてほしいのです。もちろんこの依頼が完了した後に」


 その発言を聞きアインは不敵な笑みを浮かべ、答える。


「カームベルの名に懸けて必ずその約束を果たすと誓いましょう」


 言い終えるとアインはテーブルの上のベルを鳴らし、振り返らずに部屋の外に出ていく。するとアインがこの部屋に来た時と同じ方向からエンファが歩いてきていた。


「お話は終わったようですね。それで私に何か御用でしょうか?」


「伝言を頼みたい。拠点を訪問したのにもかかわらず顔を出さなかったことを許してほしいとネロさんとトラン皇子に伝えてほしい」


 エンファは頭を深々と下げ、敬意と了承を示した。


「かしこまりました。伝えておきます。お帰りはどういたしますか?」


「魔法で飛ぶから気にしなくていい。それじゃあまた来たときはよろしく頼む」


 アインは黒い大穴を開けそれに吸い込まれるように入っていく。エンファはその様子を穴が消えてからもまじまじと見つめていた。



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