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魔導と迷宮~最強の冒険者は少女を育てるようです~

ノベルバユーザー465165

11話

二人が戦いを繰り広げている頃ブラッドは王都にある王城の一室に足を運んでいた。迷宮都市から王都までは少々距離があるがハイル第一王子に空間転移するための目印となる魔石を設置させてもらっているのだ。それも王子の部屋に隣接する隠し部屋にである。だから、魔力を余程消耗していない限りいつでも一瞬で訪れることができる。ブラッドは目の前にある隠し扉をコンコンと叩き返事を待つ。


「どうぞ」


 透き通るような声が鼓膜に響く。ブラッドは埃だらけの岩壁のような扉を回転させる。そこには先ほどのような薄汚れた場所はなく、部屋の中にあるすべての物の頭に高級が付きそうな物ばかり並んでいた。


「珍しいね。君が僕に会いに来るなんて。この時期に来たってことはアイヴァー伯爵領のこととは関係ないんだろう?」


 ハイルは手元にある書類への記入を一時中断し椅子を回転させブラッドの方を向く。


「ああ、今はそのことに踏み込むつもりはない。聞きたいのは帝国の帝位争いのことだ」


「そのこと?別に聞きに来るほどかい?君たちが出張って来るならもう解決したも同然でしょ。何を聞くことがあるのさ」


「聞きたいことは一つだけだ。何故先んじて何も手を打たなかった。お前なら俺たちが動く前からある程度知っていたんだろ?」


 ハイルはふーっと息を吐き、椅子に深く座り直す。


「確かに先帝が倒れる前から予兆は察知していたさ。だけど同時にこの件は君たちカームベルが処理すると思っていたからね。今の帝国の第一皇子が国土拡大のために戦争を仕掛けようとしている危険な男なのは周知の事実だからね。だから、僕が何かする必要はなかったのさ。これで満足かい?」


 ブラッドの仮面で隠れた瞳の奥には疑念の光が浮かんでいたが聞きたいことは聞けたので肯定的な返事を返す。


「……ああ、満足だ。悪かったな、忙しい時に押しかけてしまって」


「君と僕の仲じゃないか。これからも遠慮せずに来てくれて構わないよ」


 ブラッドは黒い穴を開けその中に吸い込まれながら軽く手を上げ了承を示した。完全に穴が塞がり部屋に静寂が訪れる。


「あの反応は完全に疑ってたよね。まあ、いっか。この件は僕にとってどうでもいい案件だからね。それよりも仕事仕事」


 ハイルは再び椅子を回転させ書類と格闘し始めた。






 次にブラッドが向かったのは帝国の第二皇子と第一皇女がいる黒蟻の拠点だった。その時には日もすっかり暮れ、街が街頭で照らされ始めていた。流石にここには転移のマーキングはないため一度迷宮都市の人気のない郊外にあるいつものあばら家に転移し、仮面や外套を脱ぎブラッドからアインの服装に着替えたため時間がかかってしまった。ブラッドは怪しい光を放つ歓楽街を早足で歩き、再び黒蟻所有の大きな遊郭へと足を踏み入れた。すると前回訪れた時に見た女が視界に入る。女の方もこちらに気づいたようで子気味の良い足音を立てながら近づいてくる。


「ようこそいらっしゃいました。それでどのようなご用件でしょうか?」


「皇子と皇女と話をしたいのだが可能か?」


「少々お待ちください」


 エンファは店の奥に入っていく。ブラッドはこの後話す内容を整理しながら待っている。数分後、女が返ってきた。


「トラン様は現在ネロ様と会談中であるので不可能ですがコルネット様なら今すぐにでもお会いになれますがどのようになさいますか?」


「皇子の方に会えないのは残念だが仕方ない。皇女だけでも会わせてくれ」


「かしこまりました」


 そう言うとエンファはくるりと身をひるがえし店の奥に入っていく。暗についてこいと言うことだろう。アインは艶やかなドレスを靡かせる女性の数歩後ろを歩いていく。部屋に着くまで沈黙を続けるのももったいないと思い、アインは少し気になったことがあったのでそれを口にする。


「君は俺がここに来たことをすぐに気づいたようだが特異魔法の力か?」


「はい、そのとおりでございます。能力の詳細は話せませんが探知に優れた力を私が持っています」


「やはりそうだったか。どおりで最初に来た時は顔も知らないはずなのに迷わず話しかけてこれるはずだな」


「確かにその通りなのですがそれができたのはアイン様だからです。私の力でアイン様を判別したのは事実ですが私の力では事前情報なしに人名まではわかりません。それなのにアイン様と断定できたのはその身に宿す膨大な魔力を感じたからです。常人をはるかに超えるその魔力を。黒蟻の最精鋭と比べものにもならない力があるとすれば攻略者の方々しかおりませんから」


「なるほど、だがそこまで話してしまって良かったのか?」


「問題はございません。私はアイン様を信用しておりますから」


「それは光栄だな」


 アインはおどけたような口調でそう答えた。実際彼女が信頼しているのはカームベルという組織であり自分自身でないことは分かっているからだ。まあ、当然のことであるので特に何の感情も浮かんでこない。そうこうするうちに目的の部屋までたどり着いたようだ。エンファが扉を叩くと部屋の中から入室を許可する声が聞こえてきた。


「それでは私は失礼させていただきます。ご用向きがありましたらテーブルの上に置いてあるベルを鳴らしてくださいませ」


 それだけ言うと彼女は一礼し、元来た道を帰っていく。アインはその姿を見送り扉を開け中に入ろうとする。 







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