小学生のぼくは日記を書くことにした
会いたくない人
学校が終わると,ぼくたちは三人で一緒に帰った。もうクラスの皆はぼくたちが一緒にいても好奇の目で見ることはなくなっていた。
誰が何を話すでもなくぼくたちは歩いた。あぜ道が続く開けた場所で,あかとんぼを見ながら秋が深まってきたなあ,などと考えていたら,中川くんが口を開いた。
「コウシ、佐藤は何て言っていたんだ? あいつがあんなに取り乱して怒るなんて珍しいだろ。ていうか,おれ初めて見た
それには三浦くんも同意した。
「確かに。佐藤さんが人のために怒るのは見たことがあるけど。中川くんが誰かをいじめた時とか」
「悪かったって。おれも反省しているんだ。これからはもっと人の気持ちを考えようとしているんだからさ。許しくれよ~」
中川くんは手のひらを顔の前で合わせて三浦くんと話をしている。「これから次第だね」と三浦くんは楽しそうに話した。
それでさ,と中川くんはまたこちらを向く。
「何を言われたんだ?」
うんうん,と三浦くんもうなずいている。佐藤さんが何に怒っているのか気になっているようだ。
「それは非常に答えにくい問題というか,ぼくにもいまいち分からないんだ」
中川くんはうんざりしたような様子を見せた。
「もうさ,この際分からないことがなんだって良いんだ。何を言われたのかを教えてくれよ」
口に出すのは恥ずかしかったが,話すことにした。
「佐藤さんが言うには,ぼくの視線が気に入らなかったと言うことなんだ。具体的には・・・・・・その・・・・・・」
「なんだよ。コウシはむっつりスケベだもんなあ」
「ど,どうしてそんな風に思うんだい?」
まさか中川くんに核心を突かれるとは思っていなかったため,舌が回らなかった。こういうことにかけてはどうやら勘が働くらしい。この手のことなら,中川くんの方が得意なのかも知れない。
「その,こんなことを言うのも何だか変なんだけど,三浦くんのお姉さんを見る目がいやらしかったみたいなんだ。それが,佐藤さんにどんな不都合なことだったのかは疑問なんだけれど」
「三浦の姉ちゃん,おっきいもんなあ。天は二物を与えずっていうけど,あれは嘘だよな」
よくもまあ三浦くんの前でそんなことが言えるなと思う。案の定,三浦くんは顔を真っ赤にしてうつむいていた。まあそんな無神経なところが中川くんの良いところでもあるのかも知れない。
「それで,ぼくはどうしたら良いのだろう?」
ぼくが中川くんを頼るのはこれが最初で最後かも知れない。それぐらいぼくは分からなかったのだ。
「何の話をしているのよ」
中川くんから返事を聞く前に,後ろから声がした。ぎょっとして振り向くと,そこには今一番会うのを先延ばしにしたい人が立っていた。
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