小学生のぼくは日記を書くことにした

文戸玲

ぼくは大人の女性が好きらしい


「最近すごく仲良くしているのね」

 少し間を置いてぼくは答えた。

「中川くんのことかい? 最近とても気が合ってね。変わったと思わない?」
「変わったわね。何をしたの?」
「何をって言われても困るけど。彼の中には向上心というものが人一倍強かったんだ。それが今までは悪い形で出ていただけなのかもね。実際一緒にいると分かるけど,悪い人じゃないよ。向上心のないものはばかだ,と言った人がいたけど,中川くんはその点本当に賢いと思う」
「コウシくんは賢い人が好きって言っていたものね」

 そんなことを言ったことあったかな,とこれまでを振り返ってみたけど,思い浮かばなかった。でも、知識を持っていたり達観した考え方をしている人と一緒に過ごして吸収したいと思っているから間違ってはいないのだけど。

「賢い人も好きなのかも知れないけど,大人の女性も好きよね」

 佐藤さんはそっぽを向いて,ぶっきらぼうに言った。ぼくには佐藤さんがそういうことを言う心当たりがあった。どのように答えようか迷った後、ぼくは少しだけずるい答え方をした。大人は全てのことをストレートに言うわけではない。できるだけ崖から遠いところを渡るのがスマートな生き方なのだ。もちろん,佐藤さんには通用しなかったのだけれど。


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