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小学生のぼくは日記を書くことにした

文戸玲

手にした本


「遅かったなあ。さすがの姉ちゃんもコウシに本を紹介するのは手間取ったか」

 中川くんは興味深そうにぼくの手にある本を見つめている。見る? と中川くんに差し出すと,悔いるように目次を見た。ぱらぱらとめくると,うげーとのどを震わせた。

「よくこんな難しそうなの読めるな。何が書いてあるのかさっぱりだ」
「中川くんもすぐに読めるようになれるよ」
「すぐってどれくらいだ?」
「一年間に百冊、それを数年続けたごろじゃないかな」

 ひぇーと今度は高い声を出して「おれもコウシみたいに賢くなりてえよ」と言った。
 ぼくはよく賢いと言われる。でも,女の人がどんなことを考えていて,どんなことに敏感なのかは分からない。どれだけ本を読んでもそれはきっと分からない。
 中川くんは今読んでいる本を読み終わったらまた本を紹介してもらう約束をなつみさんとした。三浦くんは本を買おうとしていたけど,「それ,うちにあるじゃない」となつみさんに言われて結局何も買わなかった。ぼくはと言うと,賢くなりたいのと佐藤さんに謝り方が分からないと相談したところ少し迷って「人を動かす」というタイトルの本を差し出された。それは難しい顔をした外国の人が表紙に映っていたが,あらゆる偉い人がこの本を読んで多くのことを学んだというからぼくもこの本を読んでこれからの人生に生かしたいと思って買った。すぐに効果が出うるかは分からないけど,佐藤さんの気持ちを動かしたいと思ったのは事実だ。


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