小学生のぼくは日記を書くことにした
姉ちゃんはなつみさん
「あら,また珍しいメンバーね」
丸堂書店の自動ドアをくぐると,いらっしゃいませ,という言葉とともに振り向いた三浦くんのお姉さんがいた。なつみさんは丸堂書店で働いていたのだ。三浦くんの「何かあっても安心」という言葉にはそういう意味があったのか,と合点がいった。
「少年、この前買った本はどうだった?」
「それがさ,めちゃめちゃおもしろいんだ。昨日なんて,履を磨いたんだぜ」
「そういえば,そんな課題から始まっていたわね。で,どう? 何か変化はあった?」
「何かが変わったっていうのは分からないけど,でも友達は出来た」
それはよかったじゃない,となつみさんは微笑んだ。中川くんは誇らしそうに胸を張っている。
「で,次の本を探しに来たの?」
「今の本を読み終わったらまた聞きに来るよ。今日はおれのダチが本を紹介して欲しいって言うんだ。だから姉ちゃんを紹介しようと思ってな。姉ちゃんなら間違いないから」
な,と言って中川くんはぼくを見た。微妙に違う気もしたが,おおむね話の筋はずれていないためうなずいた。なつみさんは片方の手で腕を組み,もう片方の手で顎を支えながら「うーん」と考えた。そして,「よし」と何か思いついたようにしてしゃがみ込み,ぼくと視線を合わせた。少し視線を下げると,お姉さんの魔法にかかりそうだった。その魔法は,書店員の制服のエプロンの形を変形させるほどの魔力を備えていた。お姉さんの魔法はどんなものにも邪魔されない。
含み笑いを見せたなつみさんは,「コウシくん,こっちにおいで」と呟いてすとすとと歩いて行った。中川くんと三浦くんは嬉しそうに手を振った。
「おれたちはこの辺をぶらぶらするよ。どんな本を紹介されるかいきなり知るとおもしろくないからな。決まったら声をかけてくれよな」
そう言うと二人で行ってしまった。学校を出る前には血の気を失っていた三浦くんの表情が,今はイチゴのように生き生きとしていた。
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