小学生のぼくは日記を書くことにした

文戸玲

成長とは自らを省みることだ


 佐藤さんにぼくが学んだことを話した。何に怒っているのかについても聞いてみようとしたけど,それには及ばなかった。「どうして怒っているの?」と聞こうとしている途中で頬をぶたれたからだ。女の子に手を挙げることと同様に,女の子にやられることを恥ずかしいとする人もいるが,漫画みたいなシチュエーションを経験出来てぼくは悪い気はしなかった。ただ,中川くんはぼくの方を見てにやにやと笑っていたのだけれど,ぼくと彼とは本質的に違うのだから気にしないことにした。
 ぼくが頬を張らせた要因を直接見ていた三浦くんは不思議そうにぼくに尋ねた。

「コウシくん。どうしてあんなことを言ったんだい?」

三浦くんがあんまりにも目をきれいに丸くして聞くので不思議に思ってぼくは聞き返した。

「どうしてって。ぼくは特に変なことを言ったつもりはないけれど,何かおかしかったかい?」
「おかしいとまで言うつもりはないけれど,女の子に面と向かってそんなことを言うのは少々デリカシーにかけると思う」
「ジンカクシャにそこまで言わしめたのだから,ぼくは相当デリカシーに欠ける発言をしたのだろう。三浦くんはぼくのことを嫌いになったかい?」
「いや,ぼくはコウシくんにも天然なところがあって愛くるしく感じたぐらいだよ」
「それは良かった」

それからぼくは三浦くんにぼくのどんな発言が,佐藤さんを邪知暴虐の王たらしめるものとなったのかを分析してもらうことにした。結論から言うと,一言一句余すことなくすべての発言が佐藤さんの堪忍袋の緒を切らすことになっていたと知った時にはさすがのポーカーフェイスのぼくも度肝を抜かさざるを得なかった。

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