小学生のぼくは日記を書くことにした
佐藤さんに嫌われる
結局その日は三浦くんのお母さんに会えずに帰ることとなった。「お仕事が長引いて帰るのが遅くなる」という連絡をなつみさんから聞いて,ご飯を食べ終わっていたぼくたちは帰ることにしたのだ。三浦くんとなつみさんが見送るために玄関まで来てくれた。なつみさんは靴を履いているぼくと佐藤さんのために身をかがめて,また来てね。と微笑んだ。振り返ってなつみさんの方を見た。年上のお姉さんを見て,「かわいい」だとか「きれい」だとか感じたことはない。なつみさんがニコッと笑うと鼻頭と目じりに細い皺が寄る。それを見るとぼくはドキッとする。素敵な人だなとぼくは思う。
ちょうど魔法のふくらみがぼくの目の高さにあり,頭がくらくらした。磁石は近づくほど強く反応するのだそれに抗うのは自然に摂理に反することであり,自然の摂理に反すると体調を崩すのがこの世の原理なのかもしれない。
「また明日ね」
そう言ってぼくたちは別れた。
三浦くんの家を出てしばらく歩くと,佐藤さんは急に立ち止まった。「どうしたの?」と聞くと,ぶすっとした顔でこちらを睨んでいる。ぼくは佐藤さんを怒らせるような事を何かしただろうか。三浦くんの家でのことを思い返してみても,楽しいそうに話しておいしそうに食べていた佐藤さんの顔しか思い浮かばない。つくづく分からないと頭の上にはてなマークを浮かべていると,
「ずっと見てたでしょ」
とほっぺたを分かりやすく膨らませて言った。「ずっとって,何を?」と聞くと
「おっぱい!!!」
とごみを漁っていたカラスが飛び立つほど大きな声で言った。ぼくは周りを見たが,幸運なことに誰も近くにはいなかった。おっぱいと大きな声で急に叫ぶ女の子とそれを真面目な顔で聞く男の子はそうはいない。このおかしな状況を不思議そうに見ている人はいなかった。カラスだけが不思議そうにこちらの様子を伺っている。「この変態! もう知らない」と佐藤さんは言ってずんずんと歩いて帰っていった。どうやらぼくは佐藤さんを怒らせてしまったようだ。佐藤さんのおっぱいを見ていたわけではないよ。と弁解したくもなったが,そんなことは佐藤さんも分かっているだろうと思って追いかけるのはやめた。じゃあ何にそんなに怒っていたのか。それはよく分からない。ぼくは賢いけれど,女の子のことは勉強しても分からないと思った。カラスがぼくを小ばかにするように鳴いて陽が沈む方向へと飛んでいった。
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