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小学生のぼくは日記を書くことにした

文戸玲

三浦くんの家に招待される


 あれから中川くんは一層ぼくのことを敵視するようになった。教室を歩くときには必ずぼくの机にぶつかるし,下駄箱の靴は必ず場所が変えられてある。そのうえ,クラスの男子に「コウシは佐藤のことが好きなんだ。だから最近一緒にいるんだ」なんてでたらめを言いまわしている。
 ぼくとしてはめんどうなことはやめてほうっておいてほしいのだけれども,机にぶつかっておきながら骨盤の方をさすっていたり,隠した靴は必ず周りを見ればわかる位置においていたり,好きな子に声をかけられなかったりするところとかなかなかかわいところもあるのだ。
 今もまた中川くんは右手と右足を交互に出しているような歩き方で肩を張って歩き,ぼくの机にぶつかっては横目でこちらをちらっと見て教室を出ていった。金魚のフンを連れて,フンでもしに行くのだろうか。ひげダンスの人のように歩きながら。

「大丈夫?」

三浦くんと佐藤さんがぼくの席にやってきた。

「ほんと感じ悪いよね。わざとぶつかってきちゃって」
「きっとコウシくんと仲良くなりたいけど,上手く言葉に出せないんだね」

二人は口々に僕を慰めてくれた。まったく気にしていないぼくとしてはそのようなフォローは必要ないのだけれど,余裕をみせるために「中川くんはかわいいところがあるんだ」と言った。何だか大人げないかなとも思ったけど,その辺の振る舞いがぼくの至らないところだ。
 「そういえば」と三浦くんが口を開き,

「この前のことをお母さんに話したんだ。ぜひうちに遊びに来てほしいって。友達といえる人なんていままでいなかったし,家で学校の友達のことを話すことなんてなかったから嬉しかったんだと思う。コウシくんと佐藤さんに会いたいって。良かったら二人ともうちに来ない?」

と照れ臭そうに言った。ぼくと佐藤さんは喜んで三浦くんの家に遊びに行くことにした。

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