小学生のぼくは日記を書くことにした

文戸玲

三浦くんとピンチに出会う

 「三浦くん,どうしたらジンカクシャになれるんだい?」

ぼくは三浦くんに聞いた。ぼくは十分に三浦くんのことを観察した。そして,参考にするべきところもたくさん見つけたが,ぼくは三浦くんの心持ちというものが一番大切で学ぶべきではないのかと考えたのだ。良い行動だけを真似したり,人に認めらえられたいから善い行いをするというのは,中川くんとあまり変わったことではなく褒められたものではないと思ったのだ。
 三浦くんはぼくの顔を見て,それから前を向いて歩き始めた。セミが鳴かなくなってからずいぶんと涼しくなった通学路は,よく赤とんぼとシオカラトンボが飛んでいる。赤とんぼが二匹くっついて重そうに,少し不自由そうに飛んでいるのを見ると,ぼくは大変幸せな気持ちになる。そうやって地球はまわっているのだということをぼくは知っているからだ。ちょうど,対になった赤とんぼが目の前でふらふらと飛んでいた。ぼくと三浦くんはそれを眺め,視界から消えてどこかへ飛んでいくまで同じ場所に立っていた。

「ぼくにはその質問に答えられそうにないよ。コウシくん,ぼくにジンカクシャって何なのか教えてくれないかい?」
「ジンカクシャっていうのは,三浦くんのことだよ。」
「つまり,どうしたらぼくになれるかっていうこと? それなら,ぼくはコウシくんなれる方法をぜひ聞かせてほしいと思う。どうか教えてほしい。コウシくんはとっても頭が良くて,よくいろいろなことに気付いているからね。どうしたらぼくはコウシくんのようになれるんだい?」
「なるほど,それは非常に答えにくい質問だね。」

 三浦くんはぼくほどに言葉を知らないのかもしれないが,ぼくよりもずいぶん立派なものだと思った。もう分かれ道だというところで,後ろから「おい。」と声をかけられた。

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